ISBN 4-8159-1579-2
書名 慢性肝炎・肝硬変・肝癌−新しい展開と診療の実際−
編著名

藤原研司(埼玉医科大学第3内科 教授)

目次
  • 第1章 慢性肝疾患治療の進歩−Overview−

  • 第2章 ウイルス性慢性肝疾患の病態
      I.肝炎ウイルスマーカーの推移
       1)A型肝炎/2)B型肝炎/3)C型肝炎/4)その他の肝炎/5)急性肝炎の型別診断/6)慢性肝疾患の型別診断
     II.血液検査による進展度の評価
       1)慢性肝炎から肝硬変への進展過程/2)血液検査による進展度の判定/3)肝線維化のマーカー
     III.画像診断による進展度の評価
       1)ウイルス性慢性肝疾患進展度の超音波診断/2)アルコール性慢性肝疾患進展度の超音波診断/3)その他のびまん性肝疾患の超音波診断/4)他の画像診断による慢性肝疾患進展度の評価
     IV.腹腔鏡,肝生検所見
       1)慢性肝炎(chronic hepatitis)の組織所見/2)肝硬変(liver cirrhosis)の組織所見/3)慢性肝炎の腹腔鏡所見/4)肝硬変の腹腔鏡所見

  • 第3章 ウイルス性慢性肝疾患に対する薬物療法
     I.抗ウイルス療法−インターフェロン療法を中心に−
      1.対応と成績/2.副作用と対策
     II.免疫調整薬
       1)ウイルス性慢性肝炎に対する免疫製剤投与の考え方/2)e抗原陽性B型慢性肝炎に対する免疫調整製剤の治療効果/3)セロシオン(プロパゲルマニウム)/4)C型慢性肝炎に対する免疫調整剤
     III.肝庇護薬
       1)肝炎コントロールの意味/2)強力ネオミノファーゲンシー(SNMC)/3)SNMC療法の実際/4)ウルソデオキシコール酸製剤(ウルソ)/5)ウルソ療法の実際/6)今後考えられる肝庇護薬
     IV.漢方製剤
       1)小柴胡湯の作用機序/2)慢性肝炎・肝硬変に対する小柴胡湯の効果/3)インターフェロンβとの併用療法/4)小柴胡湯の副作用

  • 第4章 肝炎ウイルスの感染対策
     I.院内感染予防
       1)一般的注意事項(HBV,HCV共通)/2)特異的な予防(HBV)/3)滅菌・消毒法(HBV,HCV共通)
     II.医療事故
       1)過去における医療従事者の感染事故の実態/2)過去におけるHBVの汚染事故原因の実態/3)医療従事者におけるHCV抗体陽性率/4)医療機関内におけるHBV感染予防の実際/5)医療期間内のC型肝炎予防対策の概要/6)院内感染事故の労災によるC型急性肝炎のIFN治療/7)労災時のIFNに関する通達−インターフェロン製剤の投与にかかわる取り扱いについて−

  • 第5章 ウイルス性慢性肝疾患の合併症対策
     I.腹水,感染症
       1)腹水/2)感染症
     II.肝性脳症
       1)肝性脳症の診断と病態/2)低蛋白食と分岐鎖アミノ酸/3)難消化性二糖類/4)ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬−フルマゼニル/5)難吸収性抗生物質/6)分岐鎖アミノ酸輸液製剤/7)Interventional radiology(IVR)による治療/8)今後の課題
     III.門脈圧亢進症
      1.薬物療法/2.内視鏡的治療/3.外科的治療/4.Interventional Radiology
     IV.腎障害
       1)肝炎と腎障害/2)血液解析患者におけるC型肝炎ウイルス
     ・.糖尿病
       1)診 断/2)治 療/3)インターフェロンと糖尿病

  • 第6章 肝細胞の診断と治療
     I.肝細胞癌の疫学
       1)Descriptive epidemiology/2)Analytical epidemiology
     II.肝細胞癌の診断−ハイリスクグループにおける早期発見
      1.肝細胞癌の血清学的診断/2.画像診断
     III.肝細胞癌の治療
      1.内科的治療/2.外科的治療/3.再発予防対策
     IV.転移の診断と治療
       1)肝細胞癌の転移頻度/2)転移による症状/3)転移の診断/4)転移巣の治療

  • 第7章 患者指導の実際
     I.生活指導
       1)安静は慢性肝障害患者に必要か/2)精神的ストレスは肝臓に影響を与えるか/3)高蛋白・高カロリー食は必要か/4)飲酒量はどの程度が適切か/5)禁酒はウイルス性肝炎に影響するか/6)慢性肝障害患者への投薬は注意すべきか
     II.栄養管理
       1)慢性肝炎・肝硬変患者の栄養状態/2)慢性肝炎・肝硬変患者の栄養処方/3)慢性肝炎・肝硬変患者の栄養管理の実際

  • 第8章 非ウイルス性慢性肝疾患の病態と治療
     I.脂肪肝
       1)脂肪肝の発症機構/2)脂肪肝の臨床/3)脂肪肝の臨床診断/4)脂肪肝と脂肪性肝硬変/5)治療指針
     II.アルコール性肝障害
       1)患者さんへの接し方:基本的スタンス/2)病因・病態生理/3)臨 床  III.原発性胆汁性肝硬変    1)概 念/2)病 因/3)疫 学/4)臨床像/5)肝組織像/6)診 断/7)治療法/8)経過と予後
     IV.自己免疫性肝炎
       1)自己免疫性肝炎の病態/2)AIHの診断/3)AIHの治療

  • トピックス
     I.G型肝炎ウイルス
       1)G型肝炎ウイルス遺伝子の構造と機能/2)G型肝炎ウイルスに対する抗体反応/3)持続感染と遺伝子の変異/4)肝障害との関連
     II.TTV
       1)原点:N22/2)追い打ち:TA278/3)代打:Missing link/4)逆転?:第三世代PCR/5)合点:SANBAN/6)原点回帰?
     III.肝移植
       1)肝移植の適応疾患/2)肝移植の実施時期/3)ドナーの肝容積からみた生体部分肝移植の適応/4)ドナーの術式の選択/5)レシピエントの手術/6)免疫抑制療法
本体価格 定価(本体12,000円+税)
仕様 B5版 390頁 図147 カラー写真10 表78

序 文
 わが国では高齢化に伴い医療が果たすべき役割は大きく変貌している.医療技術の進歩は医療経済に拍車をかけ,社会全体の不況にも拘わらず平成10年度の医療費は29兆円にも達している.また,脳死臓器移植や遺伝子治療,性転換手術なども施行可能となったことから国民の医療に対する関心は高まり,医師に対する要求も日増しに増えている.医療の在り方からすれば当然の成り行きであり,既にインフォームドコンセントは日常診療に定着し,病名告知やカルテ開示も推進されつつある.さらに,かかりつけ医機能の充実を目的として新たな認定(専門)医制度が審議されている.在宅医療に向けて各種医療従事者との連携の必要性も高まり,医師はこれら新たな医療構造の変化に対応し,最新の知識や技術を習得することが益々必要となってくる.
  肝臓病はわが国における死因の上位を占めている.働き盛りの中高年層に限ればさらに上位となる極めて重要な疾患である.主要死因となる肝硬変や肝癌は,成因の80%以上が肝炎ウイルスがもたらす慢性肝炎からの進展である.したがって,それらへの対策は肝臓病の立場ばかりでなく,医療全体にとっての重要課題である.
  最近の肝臓病学における進歩には目覚ましいものがある.既知のAからE型肝炎ウイルスに加え,G型肝炎ウイルスやTTウイルスが提唱され,それらの臨床的意義も検討されつつある.慢性肝炎に対する画期的なインターフェロン療法の限界も明らかとなり,新たな方策として様々な試みが進められている.また,肝硬変の致命的な合併症である脳症や食道静脈瘤に対する各種治療法が開発され,延命効果が得られている一方で肝癌による死亡者が増加しているが,これに対する新たな治療法も次々と登場し,長期生存者も見られるようになっている.
  本書は,第一線の医師が日常診療のなかで必要となる肝臓病の治療の実際を最新レベルで集大成することを目的に企画した.座右の書として活用されるものと確信する.

慢性肝炎・肝硬変・肝癌−新しい展開と診療の実際−


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