セラピストのためのリハビリテーション医療


-すぐに役立つ実践書-

セラピストのためのリハビリテーション医療 -すぐに役立つ実践書-
著 者
編集:田中宏太佳(中部労災病院リハビリテーション科部長)  
   
編集:半田 一登(九州労災病院リハビリテーション科技師長)
   
編集:深川 明世(東京労災病院リハビリテーション科技師長)
  
発行年
2005年12月
分 類
リハビリテーション医学
仕 様
B5判 442頁 図356 表140
定 価
6,930円(本体6,600円+税5%)
ISBN
4-8159-1740-X
特 色
本書は,リハビリテーション医療の現場に配属された若いセラピストに対して,実用的な知識や実践的な技術情報をすぐに提供できるテキストとして企画されたものである.
執筆は全て臨床現場の第一線で活躍中の,全国の労災病院に勤務されている理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床心理士,医療ソーシャルワーカーの方々の手によるものであり,多忙な業務の合間を縫って自らの経験を生かしながら執筆された本書は,まさに「セラピストによるセラピストのための」具体的で臨床に即応出来る「生きた」テキストとなっている.

■ 序 文

 21世紀の日本はますます人口の高齢化が促進され,それに伴って重度で重複した問題をもった障害者が増加しております。このことから医療保険や介護保険におけるリハビリテーションサービスの重要性がより認識されてきています。
 また,厚生労働省が開催した「高齢者リハビリテーション研究会」の報告「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」において,1,最も重点的に行われるべき急性期のリハビリテーション医療が十分に行われていない,2,長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーション医療が行われている場合がある,3,医療から介護への連続するシステムが機能していない,4,リハビリテーションとケアとの境界が明確に区別されておらず,リハビリテーションとケアとが混同して提供されているものがある,5,在宅におけるリハビリテーションが十分でない,ことが指摘されています。これらのことから,1,急性期病院における早期のリハビリテーションのさらなる充実,2,診療所レベルにおけるリハビリテーションの普及,3,平成12年度から導入された回復期リハビリテーション病棟のシステムを量的にも質的にも促進,4,介護保険における通所リハビリテーションをはじめとしたリハビリテーション的なアプローチを普及,5,訪問リハビリテーションなどの促進,など行政による政策的な誘導が今後も行われることが予想されるとともに,リハビリテーションに関連する職種がますます多くの場面で活躍することが期待されています。
 現在までリハビリテーション医学に関する多くの教科書が出版されてきました。しかし臨床の場ですぐに役に立つものは決して多くはないと思っていました。われわれは現場に配属された若いセラピストにもすぐに実用的な知識や実践的な技術情報を提供できる教科書の出版を企画し,この本の大多数の項目の執筆を全国の労災病院に勤務する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・医療ソーシャルワーカーにお願いしました。
 労災病院は,昭和24年に九州労災病院・東京労災病院・珪肺労災病院の開設,以降,全国に設立され早期にリハビリテーション医療を導入し,日本の先駆的役割を担ってきました。平成16年からは独立行政法人労働者健康福祉機構により運営されるようになり,労災疾病に関する予防から治療・リハビリテーション・職場復帰に至る一貫した高度で専門的な医療および職場における健康確保のための活動である勤労者医療を強力に推進しています。これら労災病院が培ってきたリハビリテーションのノウハウを活かし,本の前半では脳卒中・脊髄損傷・整形外科疾患・外科疾患・内科疾患に対してのリハビリテーションの実際を記載し,後半では主要な疾患における障害者の職業復帰,腰痛症やメンタルヘルスなどの作業関連疾患の予防と治療,生活習慣病とリハビリテーション,障害者の職業復帰や社会復帰を促進するための補装具や自助具の工夫の章を設け実践的な内容を報告しております。
 労災病院のリハビリテーション関連職員は,全国労災病院リハビリテーション技師会を組織して年に1度全国研修会を開催し研究発表を行い,また日本職業災害医学会学術大会などでそれぞれの施設における実践や診療における工夫を積極的に報告してきました。この本にはそれらの発表をきっかけに執筆者が発展させてきたテーマも含まれているために,教科書的な内容だけでなく,臨床現場で工夫したことやデータを示すことにより興味深くわかりやすい内容になったと思います。読者諸氏の今後のリハビリテーション治療の一助になればと願っています。

■ 主要目次

I.急性期における疾患別リハビリテーションの実際

1.脳卒中のリハビリテーション
【機能評価】
  1.脳卒中片麻痺患者の理学療法における運動機能評価
   1)本邦における評価の問題点
   2)脳卒中の評価
  2.脳卒中患者の呼吸機能と全身持久力
   1)脳卒中患者の呼吸機能・全身持久力
   2)呼吸機能の評価
  3.脳卒中患者の高次脳機能評価
   1)高次脳機能障害の評価の準備
   2)失行
   3)失認
   4)前頭葉機能障害
   5)記憶障害
  4.失語症の予後予測について−評価および得点経過(SLTA)からの分析
   1)7段階評価とSLTA
   2)症例から
   3)回復経過と予後予測
   4)まとめ
  5.誤嚥性肺炎の基礎と臨床−評価と治療プログラム
   1)誤嚥性肺疾患の評価
   2)誤嚥性肺炎のリハビリテーション

  【リハビリテーション】
  1.脳卒中片麻痺患者に対する足部変形矯正術と理学療法
   1)適応/2)手術法/3)術後の理学療法
  2.脳卒中患者に対する拮抗パターン促通法
   1)治療テクニック
  3.脳卒中患者の患側足底面への感覚入力により患側下肢の支持が改善
     した患者を経験して
   1)患者/2)まとめ
  4.ICUにおける脳卒中患者に対する早期理学療法の実際
   1)ICUにおける患者の周辺機器/2)患者情報/3)具体的な理学療法
   4)レベル分類によるPTアプローチ/5)他部門との連携
  5.脳卒中急性期における作業療法の実際
   1)作業療法を始める前に/2)意識障害がある場合/
   3)頭部挙上が許可されていない場合
   4)ユニバーサルストレッチャーでの作業療法/5)JSS-MとJSS-H
  6.脳血管障害における急性期作業療法の取り組みと今後の課題
   1)リハビリテーション科としての対策と実施/
   2)脳血管障害患者の急性期作業療法の実際
   3)一般病院での急性期作業療法を構築するための今後の課題と対策
  7.嚥下障害のリハビリテーション
   1)摂食・嚥下障害とは/2)嚥下障害の評価 /3)リハビリテーション
  4)リハビリテーションのマネジメント
  8.脳卒中患者の嚥下機能評価と栄養摂取方法
   1)嚥下障害の評価/2)栄養摂取方法の決定/3)摂食・嚥下状況の経過/
   4)問題点・その他
  9.急性期病院における言語聴覚療法
   1)急性期病院におけるST部門の変化/2)リハビリテーションの流れ
   3)急性期における言語聴覚療法のポイント/
   4)急性期から回復期・地域へ

 2.脊髄損傷のリハビリテーション
  【機能評価】
   1.脊髄損傷の運動・感覚機能評価 (PTの視点から)
   1)運動・感覚機能評価の目的/2)臨床における評価の手順/
   3)評価の実際
  2.脊髄損傷の運動・感覚機能評価 (OTの視点から)
   1)作業と脊髄損傷の評価について/
   2)脊髄損傷の運動・感覚機能評価
  3.脊髄損傷の呼吸機能障害−呼吸機能障害の評価
   1)脊髄損傷者の呼吸機能/2)臨床検査について/
   3)臨床上理学療法士が行う呼吸機 能評価

  【リハビリテーション】
  1.脊髄損傷者の早期理学療法
   1)完全麻痺の胸・腰髄損傷/2)完全麻痺頸髄損傷/3)不全麻痺頸髄損傷
  2.頸髄・脊髄損傷の呼吸機能障害−ICUからの呼吸機能障害に対する理学療法
   1)関節可動域の維持・改善/2)筋力の維
     持・増強/3)呼吸理学療法/4)呼吸理学
     療法の実際/5)リラクゼーション
  3.急性期における外傷性頸髄損傷の麻痺回復とリハゴール
   1)受傷後の損傷脊髄の状態/2)麻痺の回復
  4.脊髄損傷者治療のための車いす装着型簡易式抵抗器
   1)抵抗器の概要/2)材料/3)作成および装着方法/4) 諸注意
  5.高位頸椎損傷ならびに気管切開対象者と
    STとのかかわり−コミュニケーション手段の確保
   1)対象とする疾患/2)コミュニケーション手段の確保ならびに援助/
   3)カニューレ

 3.整形外科疾患のリハビリテーション
   1.腱板断裂術後の作業療法
   1)腱板断裂を理解するために/2)腱板断
     裂術後の作業療法/3)腱板断裂術後の予後について
  2.上肢外傷後の理学療法
   1)上肢骨折後の理学療法の捉え方/2)疾患別理学療法の実際
  3.人工膝関節全置換術後の在宅に向けてのADL指導
   1)クリニカルパスにおけるADL指導/2)評価・指導のポイント
  4.大腿骨頸部・転子部骨折者における
    骨接合術後短期歩行到達度予測の検討
   1)対象および方法/2)大腿骨頸部・転子部
     骨折の術後リハについて/3)結果/4)まとめ
  5.THAに対する評価と実践的アプローチ
   1)THAの評価/2)THAの理学療法/3)集団指導について
  6.腰仙部神経根障害術後の患者に対するリハビリテーション
   1)腰仙部神経根障害の代表的な疾患/2)術前の評価/
   3)術後のリハビリテーション /4)腰仙部神経根障害の患者に対する
     チームアプローチとしてのリハビリテーション
  7.膝関節におけるバイオメカニクスとリハビリテーション
   1)膝関節の機能解剖とバイオメカニクス/ 
   2)代表的な膝関節疾患のリハビリテーション

 4.外科疾患に関するリハビリテーション
  1.開胸・開腹術前後の呼吸理学療法
   1)呼吸理学療法の目的/2)評価のポイント/
   3)術前の対象者および家族への説明/
   4)呼吸理学療法の実際
  2.食道癌手術前後の呼吸理学療法
   1)食道癌の特徴と近年の治療/2)術前

 5.内科疾患に関するリハビリテーション
  1.じん肺患者に対する呼吸リハビリテーション
   1)じん肺症/2)評価/3)吸訓練/
   4)呼吸体操/5) 運動療法/6)排痰法
   7)じん肺患者のADL/8)在宅で行う呼吸リハビリテーション
  2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)の「在宅で継続できるリハビリテーション」
   1)COPDとは/2)呼吸リハビリテーションにおける評価/
   3)呼吸リハビリテーションの実際
  3.嚥下訓練食および代償的栄養法
   1)これまでの嚥下食/2)保険診療点数上の課題/
   3)嚥下訓練食を導入するには/
   4)訓練食導入にあたって/5)チーム医療
     の一員として/6)経管栄養法7)効率のよい摂取方法


II.障害者の職業復帰

  1.脳卒中患者の職業復帰−現状とその対策
   1)脳卒中患者の職業復帰上の問題点/
   2)職業復帰に必要な基本的条件/
   3)医療リハビリテーションの役割/
   4)症例紹介

  2.脳血管障害者・頭部外傷者の就労
    と作業療法のかかわり
   1)就労とは/2)作業療法のかかわり/
   3)症例紹介

  3.記憶障害者への生活と復職の支援
    −記憶支援機を用いて
   1)音声出力記憶補助機の開発と適応/
   2)ICレコーダーによる生活支援/3)ICレコー
     ダーによる復職支援

  4.コミュニケーション障害者の職業復帰
   1)復職とは/2)コミュニケーション障害
   者の復職の現状/3)高次脳機能障害者のコ
   ミュニケーション障害/4)社会的復職支援システム

  5.頸髄症術後患者の復職に対するアプローチ
   1)復職に関する研究について/2)復職に
     関する評価のポイントとリハビリテーションアプローチ

  6.脊髄損傷者の就労状況
    1)退院時就労状況/2)退院後就労状況/
    3)脊髄損傷者の就労についての特徴

  7.就労頸髄損傷者(運動完全麻痺)の排便管理について
    1)目的/2)対象/3)調査結果/4)考察・5)まとめ

  8.職業復帰した整形外科疾患患者の実態調査
    1)対象者とアンケート/2)アンケート結果より

  9.カナダの職業リハビリテーション
     −筋骨格系疾病を対象とした総合的職業リハビリテーション施設の紹介
   1)施設の概要/2)リハビリテーション援助内容

  10.職業者雇用と就労支援
   1)復職/2)職業リハビリテーション関連機関/
   3)事例からみる就労支援

  11.小規模事業場における腰痛の疫学
      調査と腰痛予防へのアプローチ  
   1)職業性腰痛とは/2)疫学的研究/
   3)小規模事業場に対する国としての取り組み/
   4)小規模事業場の現状は/5)腰痛予防へのアプローチ

  12.腰痛症に対する心理的アプローチ

   1)痛みの心理学的な理解/2)心理評価の実際/
   3)心理的な対応

  13.上肢切断に対する職業復帰に関するアプローチ
   1)上肢切断者の現状とリハビリテーション

  14.振動障害の障害実態と社会復帰

   1)振動障害の障害実態について/2)振動
     障害者の社会復帰について


III.作業関連疾患の予防と治療

 1.腰痛症
  1.看護職員の腰痛予防
   1)看護業務のボディメカニクスの面からみた問題点/
   2)腰痛予防の対策に関する検討
  2.施設介護職の腰痛予防
   1)介護職の腰痛発症要因/2)介護作業における運動負荷/
   3)個人的要因からみた予防対策
  3.在宅介護職員の腰痛有訴状況について
   1)在宅介護職員における腰痛の実態/
   2)まとめ
  4.看護・介護職の腰痛予防対策
   1)介護職員の腰痛実態調査/2)介護者の健康管理
  5.運転手の腰痛予防
   1)運転手における腰痛の発生原因とその対策/
   2)運転環境の整備について/3)日頃の勤務時間中に行う自己管理について/
   4)勤務時間外に行う運動療法/5)定期的な医療機関での診察と治療
  6.腰痛の女性の職場復帰に関するリハビリテーション
    −ハイヒールを 履いての持続歩行が腰部に与えるストレスについて
   1)女性オフィスワーカーに対するアンケート調査/
   2)靴の種類によって生じる体幹筋,
     股関節伸展筋の筋力の変化/
   3)ハイヒールでの持続歩行が体幹や下肢に及ぼす影響/
   4)腰痛の女性の職場復帰に際しての靴の指導
  7.企業の腰痛予防に対する取り組み
   1)企業での腰痛予防管理/2)企業における腰痛予防の実際の取り組み/
   3)セラピストの取り組むべき課題 

 2.介護職員の肩関節痛状況について
   1)介護職員の肩関節痛状況/2)肩関節痛に対する予防と理学療法/
   3)まとめ

 3.頸肩腕症候群に対するリハビリテーション
   1) 頸肩腕症候群の臨床症状/2) 治療の実際

 4.勤労者のメンタルヘルスの現状と対策
   1)勤労者のメンタルヘルスの現状/2)中高年の自殺とメンタルヘルス対策/
   3)ヒューマンサービスにかかわる人々のバーンアウト

 5.介護職員の介護ストレスとその対処法
   1)ストレスとは/2)対処技能について/
   3)調査


IV.生活習慣病とリハビリテーション

  1.糖尿病患者の教育入院における理学療法
   1)運動療法の前に/2)運動処方の実際/3)指導の実際/
   4)運動を継続させるために

  2.病院における「生活習慣病予防」の試み−現状と今後の課題
   1)生活習慣病とは/2)生活習慣病予防のための運動療法/
   3)病院での現状と課題


V.補装具・自助具

  1.移乗機器の選択のポイント
   1)誰が操作するのか/2)どこで使うのか

  2.脊髄損傷者に対する簡易式トランスファーボードの試作
   1)従来のトランスファーボードの問題点/
   2)トランスファーボードの製作/3)実際のトランスファー動作

  3.現場で即対応できる移乗板(トランスファーボード)の試作
   1)製作時に必要な材料/2)作業手順/
   3)製作した移乗板

  4.移動式トランスファー手すりの使用経験
   1)機器の概要/2)試用経験/3)まとめ

  5.頸髄損傷者用パソコン操作器具
   1)市販の量産マウスを使った工夫/2)市販の専用機器…/
   3)その他のアイデア/4)キーボードによらない文字入力

  6.遊びを支援するコンピュータ入力ディバイス
   1)電子絵本とジョイスティック型入力ディバイス/
   2)迷路ゲームとバランスボード型入力ディバイス

  7.パソコンボランティア「心のかけ橋」の取り組みと問題点
   1)ソフトの概要/2)活動内容/3)現在の問題点と今後の取り組みについて

  8.下肢切断者に対する職業復帰に関するアプローチ
   1)下肢切断者の評価/2)義足について/
   3)義足の訓練について/4)切断者の自動車の運転について/
   5)切断後の職業復帰について

  9.どうする義手訓練−両側前腕義手および片側前腕電動義手訓練の実際
   1)患者紹介

  10.日常生活に役立つアームスリングの作製
   1)アームスリングの特徴/2)アームスリング着脱の目安/
   3)アームスリングの作製/4) アームスリングの自己装着法

  11.弛緩性麻痺タイプに対するウエストポーチ型簡易肩装具の試作
    −脳卒中後遺症者の肩関節亜脱臼予防を目的に
   1)目的/2)製作方法/3)結果

  12.簡単にできる,あらゆる手指機能 障害に装着可能なユニバーサルカ
    フを装備した坐薬挿入器の提案−
    手指機能を喪失した20代の頸髄損傷者を通して
   1)坐薬挿入器の種類(タイプ)/2)方法(製作で工夫した点)/
   3)結果(実際製作した坐薬挿入器)

  13.中重度失語症者との自由会話支援 システム−語彙データファイル,
     電子百科辞典,およびインターネ ットを利用して
   1)方法

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