中毒症のすべて


いざという時に役立つ,的確な治療のために

中毒症のすべて いざという時に役立つ,的確な治療のために
著 者
編集:黒川  顕(日本医科大学武蔵小杉病院院長)
発行年
2006年1月
分 類
救急医学
仕 様
B5版 410頁 87図(写真33) 表125
定 価
7,350円(本体7,000円+税5%)
ISBN
4-8159-1741-8
特 色
いざという時,「何だかわからない.中毒かもしれない」という場面において「こんなときどうする?」とうい視点からスタートし,実際診療の流れに即して解説してゆく中毒症治療の実践書.中毒症状の重症度分類一覧,各項目は一定のフォーマットで解説など臨床の現場ですぐに役立つようユニークな構成と工夫を凝らし一目理解を目指した.

■ 序 文

 現代社会の多様化に伴い、急性中毒を起こす可能性を持つ中毒起因物質も、時代とともに増加し変化をみせている。中毒に関する書物は多いが、その内容構成は同じようなものが多く、また数限りない中毒のすべてを一冊の書籍に網羅することはまず不可能である。
 そこで本書は、いざという時に役立ち、わかりやすくまとめた実践書を目指した。『中毒症のすべて』という書籍名に恥じぬよう、従来の成書とは少し異なる観点から工夫を凝らし、ユニークで且つわかりやすい内容構成となるよう心掛けたつもりである。
 多くの中毒患者の場合には、来院直後に中毒であることが一目瞭然であり、その起因物質が何であるかすぐに判明することが多いが、中には何だかよくわからなくて、もしかしたら中毒かも知れないという患者が搬送されて来ることがある。
 本書ではまず、そうした「何だかわからない、中毒かも知れない」という場面において「こんなときどうする?」という視点、すなわち中毒を疑うきっかけになる所見にはどのようなものがあり、どのような検査をして、どのように鑑別診断をしていくのか、という視点からスタートさせた。
 次いで、中毒起因物質を確定するにはどうしたらよいかについて、何が検体となり、それをどう保存していくか、自分の施設でどこまで検査出来るようにすべきか、自分の施設で行えない検査はどうしたらよいのか、という実際の診療の流れに即した順番で記述した。
 そして、治療であるが、日本中毒学会の学術委員会が中毒標準治療についてまとめ、これを学会で発表し、準機関誌(現在は機関誌)「中毒治療」に掲載したので、主としてこれを参考にさせて頂き、消化管除染、血液浄化法、強制利尿、拮抗薬、CO中毒と高気圧酸素治療法の概要につき解説を加えた。
 さらに、中毒各論では、医薬品、有毒ガス、消毒薬、農業用品、自然毒、家庭用品、工業用品、生活改善薬、麻薬などを中心に、なるべく多くの物質を取りあげたが、読者の利便を考慮し、
 1)中毒作用機序
 2)症状
 3)診断
 4)治療
 5)合併症
 6)予後
といった一定のフォーマットに従い、必要に応じて適宜図解や表、メモ等を駆使しながら、簡潔でわかりやすい記述に努めた。
 また、本書の冒頭には読者の一目参照が可能となるよう、中毒症状の重症度分類一覧を掲げた。
 なお、本書の刊行に際して、本書の主旨に快く御賛同を頂き、日常の御多忙な業務の合間を縫って御執筆を頂いた、すべての先生方に心から厚く御礼を申し上げたい。
 本書が臨床の現場で大いに役立ち、中毒症治療の実践書として幅広く活用されることを心より願うものである。

■ 主要目次

I こんなときどうする?



1 何だかわからない、中毒かも知れない
  1 心肺危機をきたす中毒(直ちに致死的となる中毒)
    1. 中毒による死亡症例の原因物質
    2. 心肺機能停止
    3. 意識障害
    4. 血圧低下

  2 重症不整脈と中毒
    1. 循環器系疾患と中毒

  3 肝・腎障害と中毒
    1. 肝障害と中毒
    2. 腎障害と中毒

  4 意識障害をきたす中毒
    1. 意識障害について
    2. 臨床症状
    3. 診断
    4. 治療
    5. 合併症
    6. 予後

  5 横紋筋融解症と中毒
    1. 横紋筋融解症について
    2. 診断
    3. 原因
    4. 治療

  6 偶発性低体温症と中毒
    1. 偶発性低体温症について
    2. 臨床症状
    3. 診断と鑑別診断
    4. 救急処置 


II 中毒起因物質の確認


  1. どんなときに分析を行うか、何を分析するか
  2. 検体の取り扱い方
  3. 自施設でどこまで検査すべきか
  4. 分析結果の解釈
  5. 他施設に分析を依頼するには?


III  中毒の標準治療


  1消化管除染
    1. 催吐薬
    2. 胃洗浄
    3. 活性炭
    4. 緩下薬
    5. 腸洗浄

  2血液浄化法

  3強制利尿

  4拮抗薬

  5 CO 中毒と高気圧酸素治療法
    1. CO中毒の原因と病態
    2. 急性CO中毒の治療指針
    3. 急性CO中毒に対する高気圧酸素治療
    4. 間欠型CO中毒に対する治療

IV  中毒各論


  1 医薬品
  ベンゾジアゼピン
  抗うつ薬
    1. 環系抗うつ薬
    2. 非環系抗うつ薬
    3. モノアミン酸化酵素阻害薬
   メジャートランキライザー
   マイナートランキライザー
   バルビタール酸系
   ブロムワレリル尿素v    アセトアミノフェン
   サリチル酸(アスピリンおよび他のサリチル酸)
   降圧薬
    1. β受容体遮断薬
    2. カルシウムチャネル拮抗薬
   抗てんかん薬
    1. フェノバルビタール
    2. フェニトイン
    3. カルバマゼピン
    4. バルプロ酸
    5. ゾニサミド
   リチウム
   硫酸アトロピン
   イソニアジド
   ジギタリス
   カリウム
   抗菌薬
    1. ペニシリン薬
    2. セフェム薬
    3. アミノグリコシド薬
    4. キノロン薬
    5. マクロライド薬
  消化器官作用薬
    1. H↓2↓受容体拮抗薬
    2. ベンズアミド誘導体
    3. 止瀉剤
    4. その他の消化器官作用薬

  2 有毒ガス
  一酸化炭素
  塩素(ガス)
  硫化水素
  イソシアネート
  マスタード
  有機溶剤
    1. 有機溶剤中毒の診断
    2. 中枢神経系への影響
    3. 皮膚障害
    4. 呼吸器系への影響
    5. 心臓に対する影響
    6. 肝臓障害
    7. 腎臓障害
    8. 血液に対する影響
   サリン

  3 消毒薬
  クレゾール
  ヒビテン○R
  イソジン○R
  マキロン○R

  4 農業用品
  有機リン
  パラコート・ジクワット
  グリホサート
  グルホシネート
  殺鼠剤
    1.タリウム
    2.クマリン
    3.黄リン
    4.リン化亜鉛
    5.有機フッ素剤
  カーバメイト剤
  ヨック○R粒剤
  クサノンA○R

  5 自然毒
  バイケイソウ
  キノコ
    1.アマニタトキシン群
    2.スギヒラタケ
    3.シャグマアミガサタケ
  銀杏
  ハチ
  クモ
    1.カバキコマチグモ
    2.セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ
    3.タランチュラ
  カビ毒
    1.アフラトキシン
    2.オクラトキシンA
    3.パツリン
    4. フモニシン
    5.トリコテセン類

  6 家庭用品
  タバコ
  インククリーナー
  乾燥剤など
  催涙スプレー
  ナメクジ駆除ベイト剤
  洗剤
  化粧品
    1.マニキュア除光液
    2.染毛剤
    3.パーマネント・ウェーブ剤
  乾電池

  7 工業用品
  エタノール
  メタノール
  シアンとシアン化合物
  重金属類
    1. 水銀とその化合物
    2.カドミウム化合物
    3.銅化合物
    4.亜鉛化合物
    5.アンチモン化合物
    6.ビスマス化合物
    7.クロム化合物
    8.マンガン化合物
    9.ベリリウム化合物
    10.バリウム化合物
    11.ニッケル化合物
    12.コバルト化合物
    13.セレン化合物
    14.パナジウム化合物
    15.有機スズ化合物
    16.鉛化合物
    17.鉄化合物
    18.アルミニウム化合物
    19.マグネシウム化合物
    20.タリウム化合物
   フッ化水素
   エチレングリコール
   シンナー
   ヒ素
   酸
   アルカリ
   重クロム酸カリウム
   アニリン
   ホルマリン

  8 生活改善薬
   ED 治療薬(バイアグラ○R)
   経口避妊薬
   ニコチンガム・ニコチンパッチ

  9 麻薬/覚醒剤/脱法ドラッグ
   メタンフェタミン
   モルヒネ
   コカイン
   マジックマッシュルーム
   MDMA(エクスタシー)

   10 その他
  火災
  バイオテロ

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