睡眠医学を学ぶために

専門医の伝える実践睡眠医学

睡眠医学を学ぶために 専門医の伝える実践睡眠医学


著 者
編著:立花 直子(関西電力病院睡眠関連疾患センター
   
         センター長)
   
編著:NPO法人 大阪スリープヘルスネットワーク
発行年
2006年11月
分 類
神経内科・プライマリ・ケア
仕 様
A5判
定 価
定価 5,250円(本体 5,000円+税5%)
ISBN
4-8159-1766-3
特 色
 近年ようやくストレス社会で注目を集めるようになってきたとはいえ,睡眠医学の歴史は浅く,メディアでの報道とは裏腹に<睡眠>に対する様々な誤解や偏った情報だけが先んじている現状である.一方初学者は基準となる日本語の良い教科書がないために非常な苦労を強いられており,「この分野の楽しさを感じつつ正確な知識を身につけることのできる」教科書の必要性が痛感されている.  このような状況の中で,本書はこれまで各々違った領域で睡眠の研究や睡眠関連疾患の診療に携わってきた著者らによって書かれ,異なる分野の成果を体系化した睡眠医学の日本語による教科書である.プライマリケアと神経科学の二つの側面を併せ持ち,新しい発見がそのまま日常の診療につながるという睡眠医学の魅力が語られている.  睡眠疾患に対する著者らの豊富な経験・ノウハウと,睡眠科学の最新の研究成果を融合させた本書は,睡眠医学を志す医師や看護師,臨床検査技師の方々にとって,睡眠医学の正確な知識の習得と技術水準の向上の道標となるだけでなく,日本の睡眠医学確立の礎となるはずである.
序 文
 2003年2月26日、山陽新幹線ひかり126号の運転士が運転中に眠ってしまい、岡山駅でオーバーランするという事故が起きた。この事故によって、眠気は場合によって人命にかかわる危険性を持つというそれまで見過ごされてきた事実が衆目を集め、睡眠とそれに関連した病気が数々のマスメディアで報道され、インターネットでもさまざまな情報が得られるようになった。 しかし、日本では、肝心の医療分野における睡眠医学 (Sleep Medicine) の概念が十分に浸透していなかったため、時にメディアによってセンセーショナルに取り上げられる情報が独り歩きしてしまい、科学的な視点からは首をかしげるような記述が目立つようになったことも事実である。 例を挙げると、スペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げ直後の爆発事故や、アラスカ沖のタンカー座礁事故の原因を睡眠時無呼吸症候群とする記載が後をたたないが、実際には、事故調査委員会によって従事者たちの長時間労働と睡眠不足、あるいは交替勤務による睡眠不足が原因であると結論づけられている。 本書の著者の多くは、こういった形で睡眠が注目される以前より、各々違った領域から睡眠の研究や睡眠関連疾患の診療に携わってきた者たちである。睡眠が注目されることは、自分たちの取り組みが認知されるきっかけであり、喜ばしいことであったが、数々の誤解や偏った情報を是正するには人数が少なすぎ、事態に押し流されそうにならないよう踏みとどまるのがやっとであった。そのような状況の下、これら睡眠医学に情熱を持つ有志が中心となり、2004年7月にNPO法人 大阪スリープヘルスネットワークを発足させた(http://www.oshnet-jp.org)。
 私たちはこのNPO活動の一環として、睡眠医学の重要なinfrastructureである睡眠ポリグラフ検査のノウハウをハンズオンで教える『PSG睡眠塾』を開催してきた。2年間にわたって6回睡眠塾を行って私たちが達した結論は、「日本語の良い教科書がないために初学者は非常な苦労を強いられている」ということであった。睡眠医学を志す医師、看護師、臨床検査技師が、この分野の楽しさを感じつつ正確な知識を身につけることのできる日本語の教科書が必要だと、睡眠塾にかかわった者すべてが痛感したのである。「睡眠医学を学ぶために−専門医の伝える実践睡眠医学−」は、こういった流れの中で半ば自然に、そして必然性をもって生まれた。 睡眠医学の歴史は浅く、米国においてやっとその存在意義が確立してきたかどうかといったところである。プライマリケアの側面と神経科学としての側面とを合わせもち、未知のことが多い故に新しい発見がそのまま日常の診療につながる様が見えるという意味で、複雑ではあるが、やりがいのある分野である。この本が睡眠医学を志す人の道標になり、日本の睡眠医学の確立発展にいささかでも寄与できれば、望外の幸せである。
  2006年9月
 関西電力病院睡眠関連疾患センター センター長
 NPO法人 大阪スリープヘルスネットワーク理事長
 立花直子

■ 主要目次

第I章 睡眠医学を学ぶにあたって
 1.睡眠医学の課題と展望 2.睡眠関連疾患国際分類(International Classification of Sleep Disorders) 3.睡眠医学を学ぶための方法論

第II章 睡眠医学の基礎知識
 1.睡眠関連疾患診療のために必要な睡眠生理・薬理の基礎知識 2.睡眠衛生とは何か? 3.良い睡眠をとるための光環境整備 4.アルコール・睡眠薬・カフェインは睡眠にどう影響するか

第III章 主訴ごとにみた診療の進め方
 1.睡眠歴の取り方と質問紙の利用方法 2.不眠で困っている患者の診療 3.過眠・過度の眠気を訴える患者の診療 4.昼夜逆転(睡眠・覚醒リズムの乱れ)を訴える患者の診察 5.睡眠中の異常運動・行動を訴える患者の診療 6.いびき・無呼吸を指摘されて受診する患者の診療

第IV章 睡眠を調べるための検査
 1.睡眠検査のゴールドスタンダードとしてのPSG 2.PSGのスコアリングを行ううえでの留意点 3.睡眠変数の意味とその解釈 4.MSLT/MWT 5.循環呼吸モニター(cardiorespiratory monitoring)

第V章 知っておきたい睡眠関連疾患
 1.閉塞性睡眠時無呼吸・低呼吸症候群 どの観点から取り組むか 2.閉塞性睡眠時無呼吸・低呼吸症候群 治療選択の方法論 3.ナルコレプシーとその近縁疾患 4.REM睡眠行動異常症 5.RLS/PLMSとPLMD 6.うつ病・神経症による不眠 7.睡眠・覚醒リズム障害(概日リズム睡眠障害) 8.小児科領域の睡眠の問題 9.小児科領域の睡眠呼吸異常

APPENDIX
 睡眠診療で利用しやすい質問紙 日常の睡眠感や睡眠の質を評価する質問紙 睡眠・覚醒リズム,朝型夜型の傾向を調べる質問紙

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