プレホスピタルMOOK4 多数傷病者対応


編 集
監修:石原  晋(公立邑智病院 院長)
   益子 邦洋(日本医科大学 教授)
編集:大友 康裕(東京医科歯科大学救急災害医学 教授)
発行年
2007年9月
分 類
救命・救急医学
仕 様
A4判・286頁
定 価
定価 5,985円(本体 5,700円+税5%)
ISBN
978-4-8159-1791-3
特 色
 プレホスピタルMOOKシリーズ第四弾では,多数傷病者災害現場において,消防隊・救急隊には災害医療で実施するべき医療について,一方医師・看護師には消防やそのほかの機関の災害現場活動について理解を深めてもらうことを目的に,多数傷病者現場活動の現状と成功させるキーポイントを解説する.
 「多数傷病者対応」:消防・医療・警察・そのほか事故災害現場において活動する諸機関の責務・役割の解説と,それら機関がいかに連携し有機的な活動をどう確立するかを解説.
 「各機関の災害対応組織」:日本におけるDMAT,緊急消防援助隊,警察広域緊急援助隊,国際緊急援助隊を解説.
 「閉鎖空間の医療」:Confined space medicine(閉鎖空間の医療)の特殊性,活動,トレーニングを解説.
 「事例紹介」:各都市のDMAT,2002年のサッカーワールドカップ韓国/日本大会,JR福知山線脱線事故,JR羽越本線脱線事故など過去の事例を深く検証し課題と展望を明らかにする.
 それぞれの項目を多数傷病者対応計画に携り,あるいは現場の第一線で活躍している方々が執筆. 全国の多くの救急隊員やメディカルコントロールの関係者待望の書.

序   文

 一昨年のJR福知山線列車事故では、尼崎市消防局を中心に兵庫県・大阪府下の消防機関からの出動および緊急消防援助隊の派遣が実施され、さらに周辺地域の医療機関から派遣された20に及ぶ医療チームと連携して現場活動を実施した結果、多くの命を救うことができたとされる。一方、多数傷病者が発生する事故災害に対して現場対応の体制整備の必要性を改めて認識させる事案でもあった。
・消防・医療・警察・その他事故災害現場において活動する諸機関の責務が何であり、いかに有機的に役割分担するか
・諸機関の連携をいかに確立するか
・初期の救出救助活動はいかにあるべきか
・トリアージ・現場治療・搬送の傷病者の流れをいかに早期に効率よく確立するか
等々、多数傷病者現場活動が成功するためのキーポイントをいくつか挙げることができ、これらの対応如何で、現場活動の成否が決まる。
 消防機関が、医療機関と連携を密にした事故災害現場活動を行い、限られた人員、資器材および医療資源を有効に活用し、有機的な現場活動を行うことが必要とされていることは論を俟たない。しかしこれまで災害事故現場での消防機関と医療機関の連携に関する議論の場が少なかった。また、既に消防隊・救急隊と医療チームの連携訓練を実施している消防本部においても、活動要領や指揮系統に関する責任の所在などに多くの課題を残している。
 大規模事故災害、広域地震災害などの際に、災害現場・被災地域内で迅速に救命治療を行えるための専門的な訓練を受けた、機動性を有する災害派遣医療チームV(災害派遣医療チーム;Disaster Medical Assistance Team;DMAT)の養成も順調に進んでいる。平成19年6月現在、東京都では510名の隊員が研修を済ませ、また厚生労働省DMAT隊員養成研修会修了者は、300チーム(約1,550名)に上っている。さらに大阪府でもDMAT研修会が開始されている。災害現場医療の専門的訓練を修了したDMATが全国の病院に整備されつつあり、多数傷病者災害現場での活躍が期待されているところである。
 本書では各項目の執筆を、各機関で多数傷病者対応計画および現場の第一線で活躍されている方々にお願いした。執筆者各位には、多忙な日常業務の合間に執筆の労をお執り頂いたことに対して、心から感謝申し上げたい。
 本企画では、消防隊・救急隊には、災害現場で実施するべき医療について、医師・看護師には消防やその他の機関の災害現場活動について、それぞれ理解を深めて頂くことを目的としている。これにより災害現場医療活動が有機的に実施され、1人でも多くの人命が救われる一助となれば幸いである。

平成19年8月吉日
大友康裕


■ 主要目次

I.多数傷病者対応

1.多数傷病者事故における災害現場医療対応の原則
  1.多数傷病者事故現場対応の原則
  2.災害現場医療
2.消防の災害現場多数傷病者対応
 ●1・多数傷病者対応の活動
 ●2・災害現場管理
 ●3・救出救助活動
 ●4・被災者の管理
 ●5・近隣消防本部との相互応援協定など
 New Arrival
 ・災害時における消防と医療の連携に関する検討会・報告書(中間とりまとめ)の概要について
3.各機関の連携
 ●1・災害現場における警察の役割と他機関との連携
 ●2・災害現場における医療チームの役割と他機関との連携
 ●3・災害現場における自衛隊の役割と他機関との連携
4.災害現場医療(診療指針)
 ●1・トリアージ(一次トリアージ、二次トリアージ)
 ●2・災害現場での治療
 ●3・搬送トリアージとパッケージング


II.各機関の災害対応組織

1.日本DMAT活動要領
  1.経緯
  2.DMATとは
  3.運用の基本方針
  4.通常時の準備
  5.初動
  6.各本部の役割
  7.DMATの活動
  8.費用の支弁
  9.今後の展望
2.緊急消防援助隊の概要
  1.緊急消防援助隊発足の経緯
  2.各部隊の概要
  3.緊急消防援助隊の出動
  4.法制化後の主な出動事例
 5.医療機関との連携
3.警察広域緊急援助隊
  1.設置経緯
  2.態勢強化
  3.編成・任務等
  4.装備資機材
  5.広域派遣にかかわる措置
  6.広域派遣実績
  7.実践的訓練などの推進
4.国際緊急援助隊
  1.国際緊急援助隊とは
  2.諸機関の連携をいかに確立するか


III.Confined space medicine(閉鎖空間の医療)

1.Confined space medicine(CSM)の特殊性
  1.米国FEMA US & Rシステム
  2.Confined Space Medicine
  3.CSMでみられる病態
  4.クラッシュ症候群Crush syndrome
  5.現場での活動
  6.閉鎖空間での医療活動のポイント
2.CSM活動
  1.進入準備
  2.進入
  3.要救助者に対する医療処置
  4.処置完了〜救出
  5.救出完了〜搬送・活動終了
3.米国のCSMトレーニングコース
  1.医療班訓練コースの概要
  2.講義内容
 3.実働訓練のテーマと内容


IV.事例紹介

1.MIMMS
  1.MIMMSとは
  2.MIMMSの概要
  3.MIMMSの教育コース
2.米国、NDMSとDMAT
  1.米国の政権と行政機関
  2.近年の米国の危機管理の変遷の概略
  3.2001年以前の概要
  4.2001年以降の変遷
  5.日本版DMATと米国NDMSやDMATとの関係
3.米国における都市捜索救助システム
  1.連邦危機管理庁
  2.緊急支援機能
  3.国家都市捜索救助システム
  4.都市捜索救助部隊
  5.US & R医療チームの概要
  6.トレーニングプログラムの概要
4.東京DMAT
  1.設立経緯
  2.目的
  3.出動・派遣体制
  4.現場への搬送および現場の指揮命令系統
  5.東京DMATのICS/IMS(Incident Command System/Incident Management System)
  6.研修・訓練
  7.東京DMATの活動
  8.今後の検討課題
  9.まとめ
5.埼玉DMAT
  1.埼玉DMAT発足に至る経緯
  2.自治体DMATとしての埼玉DMATの要点・課題
6.FIFAワールドカップ大会
  1.2002年FIFAワールドカップ韓国/日本大会における救急・集団災害医療体制の構築について
  2.集団災害医療体制の実際

7.JR福知山線列車事故
 ●1・消防の立場から
 ●2・医療機関の立場から
8.JR羽越本線列車事故
  1.事故の概要
  2.消防機関の初動
  3.医療機関の対応
  4.検証

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