よくわかる 失語症セラピーと認知リハビリテーション

著 者
編集:鹿島 晴雄(慶應義塾大学 教授)
   大東 祥孝(京都大学 教授)
   種村  純(川崎医療福祉大学 教授)
発行年
2008年7月
分 類
￿  脳神経外科学・神経内科学
仕 様
B5判・634頁・231図・136表
定 価
(本体 10,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1808-8
特 色
 本書は前著「よくわかる失語症と高次脳機能障害」に最新の内容を加え,新しく失語症への治療介入に関する用語として「失語症セラピー」および「認知リハビリテーション」を用い,国内外での発展著しい“神経心理的症状のリハビリテーション”についても最新の知見を隈なく示したことが最大の特徴である.
 本領域での指導的立場にあり,第一線で活躍する編集者と執筆陣が一堂に会した大著であり,本邦の今日の先端の水準を指示し,凝集させて解説している.
 基礎概念から各論,神経心理学的アプローチ,社会的支援まで,最新の関連知識を網羅した「包括的教科書」ともいうべき類をみない待望の書であり,関連領域の方々のバイブルとして是非ご活用頂きたい必携書である.


●序  文●

 本書は失語症と高次脳機能障害のリハビリテーションに関する基礎概念、症候、分野別のリハビリテーション各論、社会的支援に関して、わが国における今日の水準を示す包括的教科書である。さらに、社会的行動障害と発達障害に関する神経心理学的観点からのアプローチを加えている。前著「よくわかる失語症と高次脳機能障害」(2003)の治療編ということで企画が始まった。この間神経心理的症状のリハビリテーションについては国内外で発展が著しく、リハビリテーションの前提には正しい評価が必要不可欠であり、本書の各章には自ずから症候学の発展も反映されることになった。したがって本書は前著の改訂版としての意義を十分に果たしている。
 この領域を表す用語として今回、「失語症セラピー」および「認知リハビリテーション」を用いた。失語症に対する治療介入に関する用語であるが、わが国では訓練と呼ばれることが多い。英語圏ではtreatmentあるいはtherapyが用いられるが、薬物や外科手術を用いない言語治療にはtherapyが適切であると考えられる。また失語症以外の神経心理学的症状に対する治療介入にはneuropsychological rehabilitationという用語も用いられ、雑誌名にもなっている。また行動障害に対する治療介入に関してはneurorehabilitationも用いられるが、本邦では「認知リハビリテーション」が用いられることが多いと考えている。
 「基礎概念」には症候学の最近の進歩、機能回復のメカニズム、障害の分析に関する理論、治療介入に関する諸観点、研究法が含まれている。「失語症セラピー」では治療の原則、言語機能、重症度の別に治療法、その他のトピックスとして急性期、グループ訓練、AAC、社会参加が取りあげられている。「認知リハビリテーション」では各症状別、認知症、外傷性脳損傷、社会的行動障害の各症状について取りあげられている。そして「発達障害に対する神経心理学的アプローチ」、最後に「社会的支援」が取りあげられている。以上のように関連知識を網羅した企画であったが、各分野について指導的役割を果たしている著者に論述して頂くことができた。力作をお寄せくださった執筆者の方々に心より感謝したい。本書により神経心理的症状のリハビリテーションについて最新の知識が普及し、本分野の発展に寄与することを願っている。

平成20年7月吉日
鹿島晴雄、大東祥孝、種村 純

■ 主要目次

I 失語症セラピー・認知リハビリテーションの基礎概念

1 失語症症候学の発展 
2 失行・失認の症候学―最近の進歩
3 注意・記憶・遂行機能の症候学―最近の進歩
4 社会行動障害の症候学
5 高次脳機能回復の生理学的メカニズム
6 原因疾患別の障害のメカニズムとそのリハビリテーション
7 認知神経心理学
8 発達性言語障害の認知神経心理学
9 心理言語学
10 コミュニケーション行動の理論
11 心理療法・行動療法
12 作業行動理論
13 神経心理学的リハビリテーションにおける音楽療法
14 参加の視点
15 セラピー研究の方法論:量的研究、単一症例研究、質的研究


II 失語症セラピー各論

1 失語症のリハビリテーション:各ステージに応じた対応
2 障害内容別の失語症訓練方針
3 急性期の対応
4 失語症のグループ訓練
5 拡大・代替コミュニケーション(AAC) 
6 失語症者の社会参加


III 認知リハビリテーション各論

1 失計算
2 物体・画像・色彩の失認
3 相貌失認と地誌的障害
4 同時失認 
5 半側空間無視・無視症候群 
6 半側空間無視と関連症状に対する多角的アプローチ
7 聴覚失認 
8 触覚失認とその周辺
9 身体失認
10 病態失認
11 肢節失行
12 構成・着衣の失行
13 前頭葉性動作障害
14 離断症候群
15 「注意」障害
16 エピソード記憶障害
17 意味記憶障害
18 手続き記憶障害
19 遂行機能障害
20 認知症
21 外傷性脳損傷
22 意識障害
23 意欲・発動性の障害
24 攻撃性
25 抑うつ・不安


IV 発達障害に対する神経心理学的アプローチ

1 発達性dyslexia、発達性読み書き障害
2 特異的言語障害(SLI) 
3 小児失語
4 小児聴覚失認
5 小児における視覚失認
6 発達性計算障害
7 知的障害
8 注意欠陥/多動性障害(ADHD)と発達性協調運動障害(DCD)
9 広汎性発達障害―高機能自閉症とアスペルガー障害を中心に


V 社会的支援

1 失語症と高次脳機能障害に対する社会支援体制
2 高次脳機能障害者のソーシャルワーク
3 就労支援
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