見て診て学ぶ やさしい 神経内科ビジュアルテキスト


著 者
著:金澤 章(順天堂大学医学部脳神経内科 非常勤講師)
発行年
2009年2月
分 類
￿  脳神経科学・神経内科学
仕 様
B5判・290頁・207図・写真98・126表
定 価
(本体 7,600円+税)
ISBN
978-4-8159-1828-6
特 色 
 神経内科の基礎用語の解説から説き起こし,これから神経内科を学ぶ医学生,内科研修医諸氏をおもな対象に,内容は医師国家試験も見据えて解説.「取っつきにくい」「難解だ」と思われがちな神経内科を,初心者にも理解しやすく簡潔・明快にまとめ,とにかくまず見ることにより「興味深い」「もっと勉強したい」に変えるビジュアル教科書である.
 第1章:神経学的診,第2章:解剖,第3章:鑑別診断のための検査,第4章:各論まで,300を超える挿図や写真によってタイトルのごとく神経内科を「見て診て学ぶ」ことができる.また,「麻痺」や「錘体路障害」など基礎用語から解説しているので,神経内科を専門としない先生や,神経疾患診療に携わる看護師,運動・作業療法士,言語聴覚士,社会福祉士,介護福祉士の方々にも参考となる.
 神経内科の本当の奥深さと興味深さを知るために,またさらに探求する糧として本書を座右の書としてお薦めする.


●序   文●

 医学部で教育担当講師をしばらくやらせて頂いたことがありますが、病棟実習の初日に学生に神経内科に対するイメージを尋ねてみると、消化器や呼吸器に比べて神経内科の勉強は「とっつきにくい」と言われたことがありました。また現在、社会福祉士や介護福祉士を目指す学生にも医学一般を教えていますが、やはり神経内科は「難解だ」というイメージをもたれがちです。これらの要因の1つには、脳神経系の解剖の複雑さがあるようです。次に診察手技にハンマーをはじめいろいろの診察道具を使用し、時間がかかる点もその理由の1つでしょう。また神経疾患はアルツハイマー病や、パーキンソン病をはじめ病名に横文字が多く、これも馴染めない要因かも知れません。しかし実際にベッドサイドや施設で、患者さんや利用者さんとお話や診察をさせて頂くと、とっつきにくい、あるいは難解というイメージから、興味深い、もっと勉強したいという気持ちに変わる人も多く認めます。患者さんには失礼ですが「百聞は一見にしかず」ということなのだと思います。本書の題名である「見て診て学ぶ」と「ビジュアル」は、まず見ることにより「とっつきにくい」「難解だ」と思われがちな神経内科の理解を深めて頂こうという願いを込めたものです。
 
 まず第1章では、神経学的診断について記述しました。正しい診断の第一歩は、十分な病歴の聴取と系統的な診察です。第2章では、神経疾患を理解するために必要な解剖を最小限にまとめました。第3章では、神経疾患の鑑別診断に必要な検査について記述しました。そして第4章がいわゆる各論で、代表的な神経疾患について解説しました。EBM(Evidence-Based Medicine)が叫ばれて10年ほど経ちますが、日本神経学会でも代表的ないくつかの疾患に対して独自に、あるいは関連学会と共同で、EBMに基づく治療ガイドラインを発表しました。著者もパーキンソン病治療のオリジナルのガイドライン作成にかかわらせて頂きました。本書でも治療に関してはガイドラインを大いに参考にさせて頂きました。但し、ガイドラインは時代とともに改訂されるものであり、現にいくつかのものは改訂作業が進んでいます。したがって読者はガイドラインを丸暗記するのではなく、その考え方を理解することが肝要だと思います。またいくつかの疾患では「ホットな話題」というコーナーを設け、最近の疾患概念や治療を簡単に紹介しました。
 
 本書の対象は神経内科をこれから学ぶ医学部学生、内科研修医を念頭において記述しました。医学部の学生の最大の関心事の1つである医師国家試験も意識しました。神経内科専門医を目指す方には、本書の記述だけでは不十分です。逆に本書に記述してあることはすべて知っているという、確認のためにご覧頂ければ幸いです。本文では、例えば「麻痺」や「錐体路障害」など基礎用語から解説を行っていますので、神経内科を専門としない先生方や神経疾患と接する機会のある、看護師、運動・作業療法士、言語聴覚士、そして社会福祉士や介護福祉士の皆様にも参考になれば幸いです。
 
 本書では、今まで私が担当させて頂いた多くの患者さんの写真を使用させて頂きました。ここで改めて御礼申し上げます。また順天堂大学医学部の森 秀生臨床教授(越谷病院、脳神経内科)、舟邉さやか先生(脳神経内科大学院)、屋田 修先任准教授(東京江東高齢者医療センター、脳神経外科)、北斗病院(帯広市、鎌田 一会長)のリハビリテーション部の小岩 幹科長に貴重な写真を提供して頂きました。各先生方ならびに協力頂いた患者さんに、心より御礼申し上げます。また本書では絵により、いくつかの疾患の特徴をお伝え致しました。その多くは金澤鈴子氏によるものであり、ここに深謝致します。

 平成21年2月吉日
 金 澤 章

■ 主要目次

Chapter I 神経内科疾患の診察のポイント
1.病歴の詳細な聴取が診断の第一歩
2.漏れのない系統的な診察が大切
 1.意識の状態 
 2.知能,認知機能(高次機能)
 3.12対の脳神経機能 
 4.運動系機能 
 5.感覚系機能 
 6.運動失調の鑑別 
 7.自律神経系機能 
 8.髄膜刺激症状

Chapter II 解   剖 
1.大脳皮質と伝導路
2.大脳基底核
3.小脳および脳幹部との連絡
4.大脳辺縁系
5.視床,視床下部,脳下垂体
6.脳幹部:中脳,橋,延髄
7.脊髄
8.末梢神経
9.神経伝達物質

Chapter III 検   査
1 髄液検査
 1.脳脊髄液(CSF)の役割
 2.脳脊髄液の構造
 3.腰椎穿棘の方法
 4.髄液の性状
2 脳波(EEG)
 1.脳波判読のポイント
 2.突発性脳波異常の有無
 3.脳波の賦活法
 4.脳波の異常
3 筋電図検査
 1.針筋電図 
 2.神経伝導速度:末梢神経機能(運動,感覚)のチェック
 3.表面筋電図
 4.反復誘発筋電図(Harvey-Masland法)
 5.反射機能検査
 6.誘発電位(Evoked potential)
4 筋生検
 1.筋生検の目的
 2.生検部位
 3.筋生検の方法:筋肉の採取方法
 4.生検筋の染色方法
 5.神経原性筋疾患
 6.筋原性筋疾患
5 神経放射線学的検査法
 1.MRI(Magnetic resonance imaging)

Chapter IV 各   論 

1 脳血管障害(脳卒中)
 1.総論
  1.脳梗塞
  2.脳出血
  3.くも膜下出血
 2.各論  
  1.各脳梗塞の症状 
  2.脳梗塞(脳血栓症,脳塞栓症)の急性期の治療 
  3.脳梗塞再発予防
  4.特殊な脳梗塞
  5.脳出血
  6.くも膜下出血
  7.脳血管奇形
  8.血管炎に基づく脳血管障害

2 変性疾患 
 1.認知機能障害
  1.皮質性認知症と皮質下性認知症
 2.大脳基底核の障害
  1.パーキンソン病 
  2.パーキンソン症候群 
  3.Huntington舞踏病 
 3.脊髄小脳変性症(SCD)
  1.孤発性の脊髄小脳変性症 
  2.脊髄小脳変性症の分子遺伝的な分類 
  3.脊髄小脳変性症の治療 
  4.原因の明らかな小脳皮質萎縮症
 4.運動ニューロン疾患(MND)
  1.筋萎縮性側索硬化症 
  2.脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)
  3.Kennedy-Alter-Sung症候群:球脊髄性筋萎縮症
 ●付録 ボツリヌス注射療法と適応となる3疾患について 

3 脱髄性疾患
 1.狭義の脱髄疾患
  1.多発性硬化症(MS)
  2.Devic病
 2.急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
  1.治療と予後 
 3.髄鞘形成不全(白質ジストロフィー)
  1.副腎白質ジストロフィー 
  2.異染性白質ジストロフィー 
  3.グロボイド細胞白質ジストロフィー 
  4.Refsum病

4 感染症
 1.髄膜炎・脳炎
  1.髄膜炎
  2.脳炎・脳膿瘍
 2.スピロヘータ感染症
  1.神経梅毒
 3.レトロウイルス感染症
  1.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染による神経系合併症)
  2.HTLV-1-associated myelopathy(HAM)
 4.スローウイルス感染症
  1.SSPEの脳波の特徴 
  2.SSPEの治療
 5.プリオン病
  1.Creutzfeldt-Jakob病(CJD)
  2.Gerstmann-Stra¨ussler-Scheinker症候群(GSS)
  3.その他のヒトのプリオン病
  4.その他の感染症 

5 脊髄疾患,脊椎疾患
 1.変形性脊椎症,椎間板ヘルニア
  1.変形性頸椎症(CS),頸椎椎間板ヘルニア
  2.腰部椎間板ヘルニア
 2.後縦靱帯骨化粧(OPLL)
 3.脊髄空洞症(延髄空洞症)
  1.原因 
  2.主症状 
  3.治療
 4.脊髄腫瘍

6 末梢神経障害:ニューロパチー
 1.末梢神経障害(ニューロパチー)とは
 2.診察の手順
  1.症状をチェック
  2.他覚所見 
  3.検査
 3.末梢神経障害(ニューロパチー)の分類
  1.病理学的分類
  2.症状の分布
  3.経過
  4.症状
  5.原因
 4.主な末梢神経疾患
  1.Guillain-Barre´症候群 
  2.慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)
  3.Fisher症候群
  4.Lewis-Sumner症候群
  5.遺伝性ニューロパチー(HMSN)
  6.家族性アミロイドポリニューロパチー
  7.顔面神経麻痺 
  8.絞扼性末梢神経障害 
  9.薬物による末梢神経障害

7 筋疾患
 1.炎症性筋疾患(筋炎)
  1.多発筋炎(PM)
  2.皮膚筋炎(DM)
  3.封入体筋炎(IBM)
 2.ミオトニー(筋緊張症)
  1.筋緊張性ジストロフィー
 3.ミトコンドリア病:CPEO(Kearns-Sayre症候群),MELAS,MERRF
  1.診断の手順
  2.臨床病型
 4.筋ジストロフィー
 5.周期性四肢麻痺

8 神経筋接合部の疾患
 1.概念
 2.重症筋無力症(MG)
  1.主な症状 
  2.診断の手順 
  3.合併症 
  4.治療
  5.MGのクリーゼ 
  6.MG患者の禁忌薬
 3.無力症様症候群(Lambert-Eaton症候群)

9 機能性疾患
 1.頭痛
  1.緊張型頭痛 
  2.片頭痛 
  3.群発頭痛
 2.めまい
 3.てんかん
  1.部分発作
  2.全般発作 
  3.局所関連性てんかん(部分てんかん)
  4.全般てんかん 
  5.てんかんの治療 
  6.難治てんかんの治療 
  7.痙攣重積状態の治療 

10 内科疾患に伴う神経障害
 1.糖尿病に伴う神経障害
 2.甲状腺疾患に伴う神経障害 
  1.甲状腺機能亢進症
  2.甲状腺機能低下症
 3.副甲状腺疾患に伴う神経障害
  1.副甲状腺機能亢進症 
  2.副甲状腺機能低下症
 4.肝性脳症
  1.検査 
  2.治療
 5.呼吸器疾患に伴う神経障害:肺性脳症
 6.腎疾患に伴う神経障害
 7.膠原病,炎症性疾患に伴う神経障害
  1.関節リウマチ(RA)
  2.全身性エリテマトーデス(SLE)
  3.結節性多発動脈炎(PN)
  4.アレルギー性肉芽腫性血管炎 
  5.ベーチェット病 
  6.サルコイドーシス 
  7.Wegener肉芽腫症
 8.血液疾患に伴う神経障害
 9.悪性腫瘍に伴う神経障害
 10.ビタミン欠乏症に伴う神経障害
 11.リピドーシス

11 中毒性疾患
 1.エタノール(アルコール)中毒
 2.一酸化炭素(CO)中毒
 3.公害,薬害 

12 脳腫瘍と母斑症
 1.脳腫瘍
  1.脳腫瘍の画像所見
 2.神経皮膚症候群
  1.神経線維腫症:常染色体優性遺伝 
  2.Sturge-Weber病 
  3.Tuberoussclerosis(結節性硬化症)
  4.Von Hippel-Lindau病 
  5.Ataxia telangiectasia(毛細血管拡張性運動失調症):Louis-Bar症候群

13 特発性正常圧水頭症(iNPH)
 1.iNPHの概念
 2.iNPHの歩行障害の特徴
 3.iNPHの診断と治療

14 頭部外傷
 1.頭部外傷による脳損傷
  1.局所性の脳損傷 
  2.びまん性の脳損傷 
 2.慢性硬膜下出血

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