基礎から学ぶ 医師事務作業補助者研修テキスト


著 者
著:中村 雅彦(波田総合病院 病院)
発行年
2009年4月
分 類
￿  ￿￿￿￿￿￿医学一般 病院管理学
仕 様
B5判・166頁・49図・24表
定 価
(長期品切中 改訂第4版があります.)
ISBN
978-4-8159-1835-4
特 色 
 平成20年度の診療報酬の改定により,「医師事務作業補助者」の採用が診療報酬の対象として認められることとなった.勤務医師の業務負担の軽減を図り,医師本来の診療に専念できる環境をつくるためにも,また病院経営面でのさらなる効率化を目指すためにも,医師のよきパートナーとして医療を支える専門職としての「医師事務作業補助者」の育成が求められている.
 著者の病院は全国でもいち早く医療の情報化に取り組んできた実績があり,その経験を基に,1コマを1時間として,医療事務の役割と仕組みから,医学一般の知識,個人情報保護やリスクマネジメントまで合計32コマの研修カリキュラムとなるように作成されている.本書の利用によって「1週間程度での短期集中講義」や,義務づけられている6ヵ月の臨床研修と並行しての「週1回の定期的な講義」を計画する際などに活用できる.
 本書は研修テキストとしてお役立ていただく一方,医師事務作業補助者への仕事の依頼範囲や教育方法に不安をもたれている勤務医師にとっては,それらについての基本的な知識を得る一助となるものである.
 病院,医師,医師事務作業補助者の三者が効率よく力を発揮できるよう本書のご活用をおすすめする.

●本書の利用にあたって●

 平成20年度の診療報酬の改定に伴い、「勤務医師の業務負担軽減を図り、診療に専念できる環境をつくること」を目的に、医師事務作業補助者の採用が、診療報酬の対象として認められた。医師事務作業補助者の配置にあたっては、最低6ヵ月間の臨床研修(医師事務作業補助者としての業務を行いながらの職場内研修を含む)を実施することが義務づけられており、期間中に32時間程度の医療に関する講義を受けることが必要とされている。
 当院は一般病床数215床、職員数300余名、常勤医師数27名(うち研修医5名)の小規模病院であるが、全国でもいち早く医療の情報化に取り組み、平成3年からオーダリングシステムを導入、平成9年には放射線参照画像のweb配信を開始し、平成16年から本格的な電子カルテシステムを導入している。PC端末の台数はほぼ職員数と同数で、医師には各1台のノート型PCが貸与され、院内全域で無線LANを可能にするなどインフラの整備にも努めてきた。平成16年の電子カルテ導入の半年後に行った「満足度調査」では、医師も含めて60%の職員が導入に「満足している」との回答であった一方、「業務量が増えたと感じる」職員は、看護師・医療技術職で30%前後にとどまったのに対し、医師では90%と高率だった。入力作業を中心に、明らかに医師の業務の負担増が窺えた。インフォームド・コンセントに必要な検査・処置・手術などに関する説明書類は、以前に比べ格段に増えており、各種診断書や指示書の記載に多くの時間が費やされている。対策として当院では、3年前から入力作業を代行する医療事務員を5名採用し、診療科・医師別にリアルタイムでの入力、指示箋を介しての入力、音声入力などを検討してきた。
 今回、厚労省が「医師事務作業補助体制加算」を導入したことは、勤務医不足の対策の一環として評価される。経営面からみると、診療報酬だけでは医師事務作業補助者の人件費はまかなえない。導入による医師の時間外手当ての削減や、患者数の増加により、結果として病院の収入増につながるとの思惑や、病院として業務改善に積極的な姿勢を示すことで、医師のモチベーション向上につなげたいとの期待もある。また加算額は少ないものの、前回採用された「電子化加算」とともに、入力業務が煩雑だとされる電子カルテの普及に弾みを付ける効果も期待される。
 本書では、1コマを1時間として、合計32コマの研修カリキュラムを作成した。「1週間程度での短期集中講義」や、「6ヵ月の臨床研修と並行しての週1回の定期的な講義」を計画する際などに活用して頂きたい。また、今まで秘書的な事務員と仕事をしたことのない勤務医師にとっては、医師事務作業補助者の教育や依頼する業務の内容などに関して、不安や戸惑いを覚える医師も多いのではないかと感じている。本書がその一助になれば幸いである。今後、医師事務作業補助者が医師のよきパートナーとして、医療を支える自立した専門職となることを期待したい。
 平成21年4月
 中村雅彦

■ 主要目次

研修項目 目的・内容

1 医療事務職:チーム医療を支える一員としての事務職の役割を理解する。 
2 医師事務作業補助者:医師事務作業補助者の業務・研修について理解する。 
3 医療保険制度:保険診療(療養担当規則を含む)、自由診療、混合診療、労災保険、
  自賠責保険について理解する。 
4 介護保険制度:介護保険制度の仕組みを理解する。 
5、6 医療関連法規:医師法、医療法、薬事法の概要を理解する。
7 医療情報化の歴史:わが国の医療情報化の歴史を知り、医療IT先進国の現状について
  理解する。
8、9 診療録(カルテ):カルテの価値を理解し、開示に値するカルテについて学ぶ。
    クリティカルパス、DPCについて理解する。
10、11 電子カルテ:電子カルテ利用の3条件、さらにペーパーレス・フィルムレスに
    ついて学ぶ。
12、13 カルテの記載業務:カルテ記載時の留意点、POMRによる記載方法を学ぶ。 
14、15 オーダ入力業務:オーダの種類、入力権限について理解し、転記ミスを防ぐ。 
16、17 書類作成業務:「診断書」「指示書」など院内で使われている書類の種類を知り、
    記載する事項を理解する。 
18 医学一般(1) バイタルサイン、循環器系 
19 医学一般(2) 脳神経系 
20 医学一般(3) 消化器、内分泌系 
21 医学一般(4) 筋骨格系 
22 医学一般(5) 皮膚、眼科、耳鼻咽喉科系 
23 医学一般(6) 泌尿、生殖器系 
24 部門システム(薬剤科):「処方」「注射」オーダの代行入力時の注意点を確認する。薬
  剤師の業務の概要を理解する。
25 部門システム(放射線科):HIS-RIS-PACS関連、DICOM規格について理解する。 
26 部門システム(検査科):検査科の主な業務と、検査オーダの流れを理解する。
27 部門システム(リハビリテーション科):リハビリテ−ションに関する書類の確認と、PT、
  OT、STの実際について理解する。 
28 部門システム(栄養科):栄養管理に関する書類の作成と、NSTの活動を理解する。 
29 個人情報保護:患者情報の取り扱いに関する留意点(個人情報保護法)と、守秘義務につい
  て理解する。
30 情報セキュリティ対策:「人的」「技術的」「物理的」セキュリティ対策の3つを理解する。 
31、32 医療安全
(1)リスクマネジメント:リスクマネジメント、コンフリクトマネジメント、医療メディエー
   ターについて理解する。 
(2)院内感染対策:職業感染について理解し、スタンダードプレコーションが実施できる。 

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