よくわかる うつ病のすべて
−早期発見から治療まで− 改訂第2版


著 者
編集
 鹿島 晴雄(慶應義塾大学医学部精神神経科学 教授)
 宮岡  等(北里大学医学部精神科 教授)
発行年
2009年6月
分 類
精神医学
仕 様
B5判・344頁・51図・87表
定 価
(本体 6,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1838-5
特 色 
 本書の初版(2003年)では,うつ病の診断から治療,精神病理から生物学的基盤まで多くの側面を取り上げ,社会とのかかわり,さまざまな病型,年代ごとの特徴まで網羅し,うつ病に関するあらゆる問題を無理なく理解できる好著として好評を博した.
  昨今うつ病が広く知られ理解が深まる反面,精神科診療のなかで複数の診断基準・治療ガイドラインをめぐり新たな混乱がみられる.このような状況を踏まえて,改訂第2版である本書では,最新の知見に基づいて新たな項目を設け,さらに各項目にも最新の知識を加えて,うつ病診療での確かな指針となるようさらなる充実をはかった.
  うつ病患者に多く接する一般医師から専門医師,うつ病を取り巻くすべての方々へ積極的な理解と治療参加への糧として,うつ病診療の座右の書として本書をお薦めする.

●序   文●

改訂第2版 序文

 「うつ病は心の風邪。薬を服んで十分な休養をとって治そう」という言葉そのままにうつ病を理解している一般の方が少なくない。うつ病が精神疾患として偏見をもって受け止められた時代は終わりを告げ,「状況次第で誰でも罹りうる病気」と思われ始めたかのようである。一方,職域では「同じような状態なのに,精神科医によって,診断書の病名がうつ病だったり,適応障害だったりするのはどうしてか」とよく質問されるし,一般向けの啓発書にまで「○○うつ病」などといううつ病の亜型を示すかのような用語が登場する。うつ病が広く知られ,理解が深まるとともに,今度は新たな混乱が生まれつつある。精神科診療の中でも,伝統的診断基準と操作的診断基準が必ずしも適切とは言えない形で併用され,複数の治療ガイドラインが混在する状況をみると,精神医学の中でも多くの議論を残したまま,さらに新しい課題が生まれつつあるように思う。
  本書はうつ病に関するあらゆる問題を無理なく理解できる本を目指して2003年に出版された。初版では診断から治療,精神病理から生物学的基盤まで多くの側面が取りあげられ,さらに社会とのかかわり,さまざまな病型,年代ごとの特徴まで論じられた。各執筆者の努力によって,本書は読み通せばうつ病の全貌を理解できるものになったと思う。今回,新たな項目を追加し,さらに各項目にも最新の知識を加えて,第2版を出版することになった。うつ病臨床に携わる方にとって,第1版以上に参考になると確信している。うつ病について,診断や治療に次々に新しい議論が生まれる現状をみると,今後も本書の定期的な改訂は不可欠であろう。
  読者の中には本書の中でも,うつ病の捉え方が執筆者ごとに微妙に異なるように思われる方があるかも知れない。しかしそれはうつ病の専門家の間でも意見の食い違いやすい部分であり,読者にも積極的に議論に加わってほしいと思う。
  ご執筆頂いた方々に心から御礼を申し上げる。
  平成21年5月吉日
  編者 鹿島晴雄,宮岡 等


■ 主要目次

 目 次

1 概念・分類
T うつ病概念の歴史的経緯
U うつ病とは何か
V うつ病の主な臨床病型分類

2 病因:生物学
T モノアミン仮説
U 受容体仮説
V 視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系障害仮説および海馬周辺の神経損傷仮説
W 神経細胞新生・神経可塑性仮説
X うつ病の遺伝因子
Y うつ病の生物学的マーカー

3 病因:病前性格と状況
T クレッチマーの循環気質
U 下田・平澤の執着気質(または執着性格)
V テレンバッハのメランコリー親和型
W 笠原のメランコリー論

4 疫 学
T 気分障害の分布
U 年齢
V 施設入所および一般診療科外来患者との関連
W うつ病の危険因子

5 症候学
T 態度
U 感情の障害
V 意欲(意志・欲動)の障害
W 思考障害
X 妄想
Y 知覚・認知障害
Z 身体症状
[ うつ病と統合失調症のうつ状態

6 抗うつ薬療法
T わが国で使用されている抗うつ薬とその分類
U 抗うつ薬の効果と使い方
V 抗うつ薬による副作用

7 抗うつ薬以外の薬物療法
T リチウム(リーマス【上付きR】)
U カルバマゼピン(テグレトール【上付きR】)
V バルプロ酸(デパケン【上付きR】)
W 甲状腺ホルモン(チラーヂン【上付きR】)
X メチルフェニデート(リタリン【上付きR】)
Y ベンゾジアゼピン(例:ジアゼパム)
Z 抗精神病薬
[ セントジョーンズワート

8 電気痙攣療法と経頭蓋磁気刺激療法
T ECTとTMSの比較

9 精神療法―特に認知行動療法,対人関係療法,家族や職場のサポートなど―
T うつ病患者への一般的な接し方
U 精神療法の概要とエビデンス
V 認知行動療法(CBT)
W 対人関係療法(IPT)
X 職場・家族へのサポート

10 ストレスとうつ―ストレス対処法―
T ストレスとは何か
U ストレス状態と身体の反応
V 精神的ストレスの強さ
W ストレスにどのように対処するか

11 大うつ病性障害
T 歴史・概念・分類
U 疫学
V 症状
W 診断
X 鑑別診断
Y コモビディティ(comorbidity)
Z 治療
[ 経過・予後

12 双極I型障害
T 双極T型障害とは
U 症状
V 症例提示
W 診断
X 病因
Y 治療

13 双極II型障害
T 概念
U 歴史
V 診断
W 臨床的特徴
X 薬物療法
Y 心理社会的治療
Z 症例提示

14 気分変調性障害 
T 気分変調性障害とは
U 症状
V 症例提示
W 診断
X 経過・予後
Y 治療
Z まとめ

15 気分循環症(気分循環性障害) 
T 用語の概念
U 気分障害の一元論と二元論
V 診断基準・症状
W 臨床像の特徴
X 疫学
Y 双極性障害との関係
Z 鑑別診断
[ 症例
\ 治療

16 季節性感情障害
T 症状
U 診断
V 疫学
W 病因
X 治療
Y 予後

17 非定型うつ病
T 診断基準:DSM-W-TRとADDS
U 5症状の分析(気分反応性,過食,過眠,鉛様の麻痺状態,拒絶への過敏性)
V 他疾患との鑑別
W 治療
X 特殊な型のうつ病postpsychotic depression(精神病後抑うつ)と非定型うつ病との近似性
Y まとめ

18 混合状態
T 混合状態とはどういう状態か
U 診断
V 混合状態は珍しい状態像か?
W 混合状態に合併する種々の問題
X 治療と予後
Y 専門医への紹介

19 ラピッド・サイクラー
T ラピッド・サイクラーの定義
U 臨床的特徴
V 成因
W 治療
X 予防

20 適応障害とうつ病
T 労災請求事例に下された診断名
U 適応障害とうつ病の診断基準
V 適応障害とうつ病の鑑別

21 Comorbidityとうつ病
T 米国精神医学会DSM-W-TR(DSM)診断基準の課題
U Comorbidity(並存症,共存症,重複罹患)の概念
V うつ病とComorbidity

22 身体疾患とうつ状態
T 脳に直接的に障害をきたす疾患によるもの(狭義の器質性気分障害)
U 脳に間接的に障害をきたす身体疾患によるもの(症状性気分障害)
V 身体疾患における心因性うつ状態(抑うつ気分を伴う適応障害)
W 身体疾患に伴ううつ状態の治療

23 アルコールとうつ状態 
T アルコール依存症の非均質性
U アルコール症の臨床類型について
V アルコール依存症とうつ病性障害
W 不快感と飲酒動機
X 具体的な症例

24 薬物とうつ状態 
T 薬剤誘発性うつ状態
U インターフェロン
V グルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)
W 消化器用剤(ヒスタミンH2受容体遮断薬)
X 抗結核薬
Y カルシウム拮抗薬
Z β受容体拮抗薬
[ 薬剤性精神障害の治療上の留意点

25 小児・思春期のうつ状態
T 気分障害としての子どものうつ
U 子どものうつの治療

26 老年期のうつ状態
T 疫学
U 病因
V 診断
W 予後
X 治療

27 産褥・性周期・更年期とうつ状態
T 妊娠中および産褥期にみられるうつ状態
U 性周期にみられるうつ病
V 更年期のうつ病

28 難治性うつ病
T 定義
U 頻度
V 特徴
W 難治性うつ病に対する対応と治療

29 うつ病と自殺
T うつ病の病期と自殺
U ライフサイクルとうつ病の自殺
V うつ病の自殺の危険因子
W 自殺の精神力動
X 治療と予防

30 一般医のためのうつ病診断の留意点と専門医紹介のタイミング
T 一般科臨床医(一般医)がうつ病を診るために必要な前提
U うつ病診断のポイント
V 一般身体疾患とうつ病をめぐる接点
W 一般医の限界と精神科医への紹介のポイント


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