頭頸部手術カラーアトラス

頭頸部手術カラーアトラス
著 者
癌研有明病院頭頸科 編
発行年
2009年6月
分 類
耳鼻咽喉科学・頭頸部外科
仕 様
A4判 242頁 67図 写真543点 3表
定 価
(本体 17,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1840-8
特 色
 頭頸部腫瘍に対する手術手技を日々磨き研鑽を積む手術者を対象に,癌研有明病院頭頸科で蓄積されたさまざまな手術症例を500点以上のカラー写真とともに呈示し,新たな手術への対応力と手術手技のさらなる応用力を高める糧となるよう企図された手術アトラスである.
 頭頸部腫瘍にはさまざまな腫瘍が発生し,対応する手術も多彩であるが,日常臨床での発生頻度は少なく,よい術者になるための絶対条件である多数症例の手術経験は必ずしも容易ではない.
 そこで,本書では基本的手術手技としての「頸部郭清術」を確実にマスターすること,多くの部位での腫瘍手術実例を豊富なカラー写真を中心に提示解説すること,機能形態を含めた「欠損部の再建術技」に重点をおくこと,を中心に癌研有明病院頭頸科で行われている手術の実際を余すところなく提供している.
 頭頸部外科手術において,最も重要な基本手術となかなか経験できない他の手術を修得するために,技量の向上に真摯に取り組む外科医が,常に座右の書としてそばに置いていただきたい手術教科書である.

■ 序 文

 頭頸部にはさまざまな腫瘍が発生し、それに対応する手術も実に多彩なものがあります。よい手術を、自信をもって行えるようになるためには、たくさんの手術を実際に経験してゆくことが最大の近道であることは言うまでもありませんが、頭頸部腫瘍のように発生頻度がそれほど高くないものでは、すべての人が容易にその環境を得ることは困難です。
 これを補うためには、まずそれぞれの環境で習得可能な基本的手術手技を確実にマスターすることが第一と思います。頭頸部では頸部郭清術がこれに該当すると考えますが、これをマスターできれば、まだ経験したことのない手術でも、多くの場合に安全に対応できるだけの基本的な力がついていると考えてよいと思います。実際に新しい手術をおこなう場合には、基本的な技術を獲得したうえで、直接手術を見たり、先人の指導を受けたりするなど、十分な準備が必要ですが、日常臨床では、手術書や文献によって手術を考えなければならない場面も必ず出てきます。日頃から、さまざまな実例を見ておくことは、そのような場合の応用力を高めるうえでも、非常に重要なことと思います。本書の目的も、そのような参考になればというところにあると思っています。
 ここで提示した症例は、必ずしも優れたよい手術というわけではないかも知れません。いろいろな意味で不十分なものも多く、われわれ自身ももっとよい手術をと常に考えていいますが、癌研での日常的な症例を示すことにより批判を含めて参考になるものと信じています。手術では腫瘍切除とともに機能形態を含めた欠損部の再建が重要であり切除以上に難しい要素を含んでいるため、ここでは切除のみでなく再建にも重点をおきました。写真を中心にできるだけわかりやすく紹介することを意図しましたが、これらの写真はアトラスを意図したものではなく日常臨床の記録のために撮影されたものから拾い集めたものであるため、不満足なものも少なからずあることをお詫び致します。本文の執筆は癌研頭頸科の現役とOBで分担しておこないました。みんな、本書を今後さらによいものとしてゆきたいと考えていますが、そのためには、本書を読んで頂いた方のご批判疑問点などをどんどん癌研究会有明病院宛てにフィードバックして頂ければと願っております。
 最後に、癌研頭頸科の現在は、内田正興初代部長と鎌田信悦前部長の御指導ならびに頭頸部腫瘍の治療に情熱を注いでこられた頭頸科OBの諸先達の努力を受け継いで創られてきたものであることを、感謝とともにここに銘記させて頂きます。

 2009年6月吉日
 川端一嘉

■ 主要目次

概 論

1.頭頸部手術の特徴
2.頭頸部手術手技のポイント
3.手術適応について
4.腫瘍切除について
5.再建について
6.機能温存について


1 各疾患別手術手技

1 頸部郭清術
 1.根治的頸部郭清術
 2.保存的頸部郭清術
 3.Anterior approachによる保存的頸部郭清術
 4.Antero-posterior approachによる保存的頸部郭清術
 5.選択的頸部郭清術
 6.領域郭清
  ■a.咽後郭清術
  ■b.気管傍郭清

2 口腔癌の手術
 1.舌癌の手術
 2.舌亜全摘術、全摘術および再建術
 3.その他
  ■a.上歯肉、硬口蓋癌の手術
  ■b.口腔底癌の手術
  ■c.下歯肉癌の手術㈰口内法による下顎辺縁切除
  ■d.下歯肉癌の手術㈪下顎区域切除後の肩甲骨皮弁による再建
  ■e.頬粘膜癌、臼後部癌の手術

3 上咽頭癌の手術
 1.皮膚切開
 2.下顎正中離断・口腔底側方切開・下顎スウィング
 3.頸部処理
 4.上顎洞の開洞、部分切除
 5.硬口蓋の切除、上咽頭の展開
 6.上咽頭腫瘍切除
 7.再建
 8.術後状態

4 中咽頭癌の手術
 1.皮膚切開
 2.上頸部から咽頭後部の処理
 3.下口唇正中切開、cheek flapの作成
 4.原発巣の切除ラインの決定
 5.下顎骨の処理
 6.pull-through法による原発巣切除
 7.遊離皮弁による再建
 8.術後状態

5 喉頭癌の手術
 1.喉頭垂直部分切除
 2.喉頭全摘術

6 下咽頭癌の手術
 1.下咽頭癌に対する喉頭機能温存手術(下咽頭部分切除術)
 2.咽喉食摘術

7 副鼻腔の手術
 1.上顎部分切除術
 2.上顎全摘
 3.再 建

8 甲状腺の手術
 1.甲状腺癌
  ■a.甲状腺全摘術
  ■b.気管合併切除・再建術
  ■c.食道合併切除術
 2.甲状腺良性腫瘍
  ■甲状腺良性結節に対する甲状腺葉切除術
 3.バセドウ病の手術
  ■バセドウ病に対する甲状腺亜全摘術
 4.原発性副甲状腺機能亢進症
  ■副甲状腺腺腫摘出術

9 耳下腺腫瘍の手術
 1.耳下腺浅葉(部分)切除
 2.耳下腺全摘
 3.拡大耳下腺全摘

10 顎下腺腫瘍の手術
 1.皮切と皮弁挙上
 2.顔面神経下顎縁枝の同定と保護
 3.顎下腺の周囲組織からの【剥】離
 4.顔面動脈の同定と処理
 5.舌神経、ワルトン管の同定と処理
 6.舌下神経の同定と保護
 7.閉創

11 気管切開術
 1.手術手順
 2.術後管理

12 前頭蓋底アプローチ
 1.皮膚切開およびgaleal-pericranial flapの作成
 2.開頭
 3.硬膜切開および再建
 4.腫瘍切除
 5.前頭蓋底再建
 6.閉創
 7.術後状態


2 再建のための皮弁採取

 1 DP皮弁
 2 大胸筋皮弁
 3 広背筋皮弁
 4 遊離腹直筋皮弁
 5 前腕皮弁
 6 肩甲骨付き皮弁
 7 遊離空腸採取

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