プレホスピタルMOOK 9 DMAT


著 者
監修
 石原  晋(公立邑智病院 院長)
 益子 邦洋(日本医科大学 教授)
編集
 大友 康裕(東京医科歯科大学大学院救急災害医学 教授)
発行年
2009年8月
分 類
救命・救急医学
仕 様
A4判・342頁・109図・78表
定 価
(本体 5,700円+税)
ISBN
978-4-8159-1847-7
特 色 
 DMAT(Disaster Medical Assistance Team,災害派遣医療チーム)とは,災害発生時,「防ぎ得た災害死」を1人でも少なくするため,「災害現場活動」「重症患者の域内域外搬送」「被災地内医療機関支援」を主とする超急性期の災害医療を展開する医療チームのことである.平成17年7月の中央防災会議において,わが国の防災対策の根幹を成す防災基本計画が修正され,そのなかでDMATの充実・活用推進も謳われた.この修正は,各都道府県の地域防災計画へも反映される.そのDMATの活動で成否を決定するのは,災害対応機関である消防機関といかに円滑な連携が構築できるかにかかっている.
  本書は,災害超急性期災害医療活動を有機的に実施するために,災害超急性期での消防機関(消防隊・救助隊・救急隊)とDMATとの連携がいかにあるべきかを考察する.また,消防本部おける活動要領や指揮系統の課題点などをそれぞれ詳しく解説している.
  災害対応機関である消防とDMATの関係を深く理解し,地域防災対策の充実のために関係されるすべての方々の必携書である.

●序   文●

 DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)は、災害発生時、「防ぎ得た災害死」を1人でも少なくするため、超急性期の災害医療を展開する医療チームである。近隣事故災害では災害現場で、広域災害では被災地内外で活動することを想定している。平成16年8月東京都は全国に先駆けて東京DMATを発足させた。さらに平成17年3月の厚生労働省「日本DMAT隊員養成研修会」開始から3年3ヵ月が経過した。平成21年3月31日時点で、351施設、596チーム(3,585名)の研修が修了(最終確認中)し、全国でDMATを核とした災害医療体制整備が進められ、また新潟県中越沖地震や岩手・宮城内陸地震などの実災害対応も展開されている。
  平成17年7月の中央防災会議(座長;小泉純一郎当時首相)において、わが国の防災対策の根幹を成す防災基本計画が修正され、広域災害における救急・医療体制の整備およびDMATの充実・活用推進が謳われた。この防災基本計画の修正は、地域防災計画に反映される。現在(平成21年4月31日)、DMATの地方自治体における災害時の運用について、地域防災計画で記載されている都道府県は32県、さらにDMAT指定医療機関との協定が結ばれている県は23県であり、今後、順次全都道府県で整理される見込みである。
  DMATの災害超急性期医療活動の内容は、「災害現場活動」「重症患者の域内域外搬送」「被災地内医療機関支援」に大別される。これらは「1人でも多くを救命する」ために重要な活動であるが、どの活動も、災害対応機関である消防の活動と密接に関係する。どの活動場面においても、消防との円滑な連携が活動の成否を決定する。消防機関が、災害現場や被災地内で活動する医療チームと連携を密にした救急救助活動を行い、限られた人員、器材、または医療資源を有効に活用し、有機的な災害対応活動を行うことが必要とされていることは論を俟たないが、今まで災害超急性期での消防機関と医療チームの連携に関する議論の場が少なかった。また、既に消防機関と医療チームの連携を実施している消防本部においても、活動要領や指揮系統に関する責任の所在などに課題を残している。
  本企画では、消防隊・救助隊・救急隊とDMATとの連携がいかにあるべきか、それぞれ理解を深めて頂くことを目的としている。これにより災害超急性期災害医療活動が有機的に実施され、1人でも多くの人命が救われる一助となれば幸いである。
  平成21年8月吉日
  大友康裕


■ 主要目次

目 次

T DMAT(災害派遣医療チーム)とは

1.DMATとは
2.DMATの運用

U わが国のDMAT運用

1 近隣事故災害対応
  1.近隣災害におけるDMATの役割
  2.活動体制の構築
  3.計 画
  4.準 備
  5.現場活動の実際
  6.時系列からみた実災害への対応
  7.職種別の活動
  8.複数隊出動時の活動
  9.救援者のストレスとその対応
  10.訓 練
  11.検証、更新・改訂、長期的な活動計画

2 遠隔地災害対応
  1.平時からの派遣の準備
  2.DMAT待機
  3.広域災害緊急医療情報システム(EMIS)を用いた一斉メール通報による連絡体制
  4.移動交通手段
  5.DMAT活動の概要
  6.統括DMAT登録者とその役割
  7.指揮命令体制
  8.DMAT活動の支援システム
  9.日本DMATの特徴

3 広域医療搬送
  1.わが国の広域医療搬送計画策定までの経緯
  2.政府の広域医療搬送計画について
  3.広域医療搬送の解説

4 DMAT本部機能
  1.DMATの指揮
  2.DMAT本部の機能

5 広域災害救急医療情報システム(EMIS)
  1.災害時における医療情報共有の必要性:1995年阪神・淡路大震災では
  2.EMISの導入とそのコンセプト
  3.医療機関における情報のツール
  4.EMIS災害モードの機能:EMIS上にどんな情報が流れるのか?
  5.EMIS災害モードの情報から関連機関はどう動くのか?
  6.EMISのDMAT管理モードについて

6 日本DMAT隊員養成研修
  1.研修の目的
  2.研修の特徴
  3.隊員養成研修会ができるまで
  4.研修内容(平成20年12月現在)
  5.課 題

V DMATと消防の連携

1 出動要請
  1.出動要請基準
  2.出動要請経路・方法
  3.移動手段

2 救助救出
  1.救助救出活動における医療チームの役割
  2.医療チームの活動ポイント

3 近隣事故現場指揮本部
  1.近隣事故現場指揮本部の役割、活動内容、組織図について
  2.近隣事故現場で指揮をとる消防とDMATの教訓
  3.統括DMAT研修からみた「事故現場指揮」の要点

4 広域災害における域内搬送
  1.中越沖地震の概要
  2.救急車の運用
  3.ヘリコプター
  4.医療と消防の情報共有手段、受け入れ連絡

5 広域医療搬送における域外(搬送)拠点空港での日本DMAT活動
  1.域外拠点空港の目的と役割
  2.域外拠点空港のDMAT業務と留意事項
  3.実際の訓練(広島西飛行場)

6 緊急消防援助隊との連携
  1.緊急消防援助隊の概要
  2.緊急消防援助隊とDMATとの連携

7 災害時における消防と医療の連携に関する検討会
  1.平成18年度災害時における消防と医療の連携に関する検討会報告書
  2.平成19年度災害時における消防と医療の連携に関する検討会報告書
  3.平成20年度災害時における消防と医療の連携に関する検討会報告書

W DMAT運用上の諸課題

1 DMAT活動におけるドクターヘリの活用
  1.ドクターヘリを利用したDMAT活動の実際
  2.DMAT活動にドクターヘリを活用する利点
  3.DMAT活動にドクターヘリを活用する問題点
  4.DMATとドクターヘリの今後の展開
 
2 DMATの資格、費用支弁、補償
  1.DMATの資格
  2.費用支弁、補償

3 ロジスティックス
  1.通信環境の確保
  2.情報の収集・発信
  3.移動手段の確保
  4.本部機能におけるロジスティックス
  5.被災地外からの後方支援
  6.広域医療搬送における課題

X 各都道府県の取り組み状況

1 地域防災計画とDMAT
2 東京DMAT
3 神奈川DMAT
4 千葉DMAT
5 埼玉DMAT
6 山形DMAT
7 岐阜DMAT
8 大阪DMAT
9 愛知DMAT
10 高知DMAT
11 DMAT東北方面隊
12 DMAT四国方面隊

Y 具体的活動事例

1 新潟県中越沖地震
  1.DMAT活動の概略
  2.考 察

2 八甲田山雪崩災害
  1.災害概要
  2.雪崩災害への対応
  3.現場での医療活動
  4.この災害で得られた医療面での教訓
  5.まとめ

3 岩手・宮城内陸地震
  1.時系列DMAT活動記録
  2.消防との連携
  3.考 察
  4.まとめ

Z 参考資料
1.日本DMAT活動要領(案)
2.災害時における消防と医療の連携に関する提言(案)

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