よくわかる 輸液療法のすべて 改訂第2版


著 者
著 北岡 建樹(望星病院 院長)
発行年
2010年1月
分 類
栄養・食療法・輸液・輸血
仕 様
B5判・330頁・159図・111表
定 価
(本体 8,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1853-8
特 色 
 初版以来,輸液療法の基礎をしっかりと学べ,かつわかりやすいとの評判を受け再版を重ねてきた本書も,医療現場で使用されなくなった輸液製剤,新規の薬剤の登場,さらには医療の進歩により新しい項目や内容を充実させ時代に即すべく今回の改訂となった.
 輸液療法は日常臨床の場でごく一般的な治療法であり,どのような臨床科でも必要となる.しかし,水・電解質の輸液療法や栄養輸液法についての本当の理解を得るとなると容易なことではなく,初心者の医師やナースにとって分かりやすく平易な解説書が常に求められている.
■本書は,初心者が輸液の考え方を本当に理解していただくため平易な解説をこころがけ,臨床現場での輸液の目的と適応がしっかりと身につくことを目指している.
■それぞれの章では要点を問いの形で投げかけ,それを解説するなかで理解を深めていくという,非常にユニークな方法で解説.<メモ>を随所に挿入して興味を持ち,身に付きやすい工夫をこらした.
■「輸液の考え方」の詳しい解説に加え,輸液治療で発生するリスクマネジメントについても触れ,誤りのない治療法に習熟できるよう企図されている.
 輸液の基本をしっかり習得し臨床の現場で役立てるよう臨床各科の初学者やナースに本書をお薦めしたい.

●序   文:改訂第2版にあたって● 

 よくわかる輸液療法のすべては2003年の初版が上梓されて以後,好評のうちに再販を重ねてきた。しかし年月の経過により医療現場で使用されなくなった輸液製剤が記載されていた反面,新規の薬剤の記載が漏れていることが目に付くようになってきた。さらに学問の進歩により新しい項目や内容を追加せざるを得ない状況になってきたことも否めない。このため遅きに失過ぎた感はあるが,改訂を試みることになったわけである。
 輸液療法は臨床医学の中では基本的な部門であり,特に初心者においては必要不可欠な知識なり情報といえる。この結果,輸液,電解質,酸塩基平衡などを解説する書籍の数は多く,臨床系の雑誌にもしばしば特集号が企画されてきている。輸液の基礎から,体液の生理学,水電解質や酸塩基平衡,腎臓の生理学などは臨床家として是非とも習得しておかねければならない項目であるが,これはなかなか容易なことではない。基本的な事項には大きく変わった部分はないが,理論的な部分が多く,理解を困難とする部分が少なくないからである。電解質とか酸塩基平衡という名前を聞くだけで,気持ちが萎え,とっつきが悪いと考える人が多いのが実状であろう。さらに近年の分子生物学の進歩により詳細な電解質輸送機構が解明されてきており,複雑な病態生理学の知識の内容を加える必要性が出てきた。時代に即応した書籍とするために止むを得ないことである。しかし,このような知識は学問的には大切な事柄であるとしても,さらに内容が複雑化することになってしまう。
 このようなことからいかにわかりやすく,知識を教授できるかが重要になってくるわけである。医学部におけるこの分野の授業時間が限られているため,極短時間で消化させようとするとどうしても不消化となり,理解不十分なままで卒業してしまう。しかし臨床の現場では,輸液療法はごく日常的な治療法であり,どこの科であろうと点滴をする必要性があり,血液検査での電解質異常を認めることが多々あるわけである。したがって,必要に迫られて勉強をすることになるが,なかなか適当な書籍がなく,多くは先輩医師のやり方を見よう見まねで習得して,事を済ませてしまうのが実状である。
 輸液や電解質に関する書籍は書店に行けば,相当数あるはずである。どの書籍の内容も大きく異なることはないが,その表現の仕方,いかにわかりやすく述べ,理解してもらうかを眼目にすることが初心者に対しての最優先事項である。類書の多い中で,本書は初版以来,わかりやすいとの評判を得ることができ,筆者としては望外の喜びである。初版と同様に,今回の改訂版にも変わらずのご愛顧を切に望みたいものである。

 平成22年1月
 北岡 建樹

■ 主要目次

CHAPTER 1 輸液の歴史と概念
 Q1 輸液とはどのような治療か
 Q2 輸液治療はどのように進歩してきたのか
 Q3 輸液治療は難しいのか,注意することは
 Q4 輸液治療はどのようなときに行われるのか

CHAPTER 2 体液生理学の基礎
 Q1 体液というのはどのような液体か
 Q2 体液はどのように区分されるのか
 Q3 体液の量はどの程度あるのか
 Q4 細胞外液と細胞内液の違いというのは
 Q5 電解質というのは
 Q6 電解質の役割は
 Q7 濃度を表現する単位には
 Q8 輸液に必要な単位,mE Qがなぜ使用されるのか
 Q9 アニオンギャップというのはどのような概念か
 Q10 アニオンギャップの臨床的な意義というのは
 Q11 浸透圧とは
 Q12 オスモラールギャップというのは
 Q13 スターリングの法則というのは
 Q14 膠質浸透圧とは
 Q15 血漿浸透圧というのはどのように調節されるのか
 Q16 tonicity(張度)というのは
 Q17 高浸透圧血症と低浸透圧血症の原因は
 Q18 腎機能の評価
 Q19 FENa(ナトリウム排泄率)というのは
 Q20 尿からどのような情報が得られるか
ほか

1 体液のホメオスターシス
 Q1 水分の調節はどのようになされるのか
 Q2 水分のバランスはどのように維持されるのか
 Q3 電解質のバランスはどのように調節されるのか
 Q4 浸透圧調節系とは
 Q5 容量調節系とは

CHAPTER 3 輸液治療の実際
 Q1 何を目的に輸液するのか
 Q2 輸液にはどのような種類があるのか
 Q3 輸液の手技,血管へのアプローチ
 Q4 輸液に必要な器具,使用法に習熟する
 Q5 投与経路はどこから?
 Q6 輸液時に必要な検査と注意事項
 Q7 輸液治療の計画とその手順は

CHAPTER 4 水・電解質の維持輸液療法
1 水・電解質輸液製剤の特徴
 Q1 輸液製剤はどのように分布するのか
 Q2 生理食塩液というのはどこが生理的なのか
 Q3 なぜ5%糖液なのか
 Q4 輸液製剤にはどのような種類があるか
 Q5 電解質輸液製剤の種類にはどのようなものがあるか
 Q6 細胞外液類似液はどのような輸液製剤のことか
 Q7 乳酸リンゲル液(ハルトマン液)というのは
 Q8 低張性複合電解質液というのはどのような製剤か
 Q9 輸液製剤の組成というのは
 Q10 単純電解質輸液製剤にはどのような種類があるか
2 水・電解質輸液製剤の使用の考え方
 Q1 水・電解質の維持輸液療法の考え方は
 Q2 日本人の平均的な食事というのは
 Q3 水分のバランス調節はどのように行われるのか
 Q4 維持量というのは
 Q5 維持輸液療法における投与量とは
 Q6 具体的な水・電解質維持輸液法は

CHAPTER 5 栄養維持のための輸液療法
1 栄養学の基礎
 Q1 三大栄養素とは
 Q2 TCAサイクルというのは
 Q3 低栄養状態とは
 Q4 ケトン体というのは
 Q5 乳酸の代謝
 Q6 食事摂取と輸液治療の関係は
2 栄養輸液製剤の特徴
 Q1 栄養輸液製剤というのは
 Q2 糖質輸液製剤の種類と特徴
 Q3 5%糖液の投与は熱量補給の意味があるのか
 Q4 糖質の種類には違いがあるのか
 Q5 糖質輸液製剤の種類にはどのような特徴があるのか
 Q6 脂肪製剤というのは
 Q7 脂肪製剤の投与について
 Q8 アミノ酸製剤
 Q9 アミノ酸製剤のE/N比,cal/N比というのは
 Q10 アミノ酸の組成はどのように決められるのか
 Q11 分岐鎖アミノ酸というのは
 Q12 フィッシャー比というのは
 Q13 微量元素というのは
 Q14 ビタミン製剤の役割と必要な量は
3 栄養維持輸液法の実際
 Q1 静脈栄養法の適応というのは
 Q2 末梢静脈栄養法というのは
 Q3 末梢静脈栄養輸液法の方法
 Q4 高カロリー栄養輸液製剤というのは
 Q5 高カロリー輸液基本液の使用の注意は
 Q6 高カロリー輸液の副作用

CHAPTER 6 血漿増量輸液療法
 Q1 血漿増量薬の適応と特徴は
 Q2 血漿増量薬に求められる条件というのは
 Q3 市販の血漿増量薬の種類は

CHAPTER 7 体液・電解質異常の診断と治療方針
 Q1 体液・電解質異常の診断の進め方は
1 体液量の異常
[1 体液量の欠乏]
 Q1 水分欠乏と水分過剰の原因は
 Q2 体液量の減少というのは
 Q3 脱水症の原因は
 Q4 臨床的な脱水症の種類と病態
 Q5 脱水症の分類
 Q6 細胞内脱水と血管内脱水というのは
 Q7 脱水症の治療法の基本的な方針
[2 体液量の過剰]
 Q8 体液の過剰とその症候は
 Q9 溢水というのは
 Q10 浮腫の分類は
 Q11 浮腫の成因は
 Q12 浮腫の臨床的な特徴は
 Q13 浮腫の治療方針
2 血清電解質の濃度異常
 Q1 高浸透圧血症と低浸透圧血症の原因
 Q2 低ナトリウム血症は低浸透圧血症といえるのか
3 ナトリウム
 Q1 ナトリウムの調節系というのは
 Q2 高ナトリウム血症はナトリウムの過剰といえるか
 Q3 高ナトリウム血症の原因は
 Q4 高ナトリウム血症の症候は
 Q5 高ナトリウム血症の治療方針とは
 Q6 低ナトリウム血症というのは
 Q7 低ナトリウム血症の原因
 Q8 低ナトリウム血症の治療方針
 Q9 中心性橋髄鞘融解症というのは
4 カリウム
 Q1 カリウムの調節
 Q2 カリウムの摂取量と排泄量のバランス
 Q3 細胞内外へのカリウムの移動
 Q4 高カリウム血症
 Q5 偽性高カリウム血症というのは
 Q6 高カリウム血症の症候は
 Q7 高カリウム血症の鑑別
 Q8 致死的な高カリウム血症の緊急的な治療法
5 低カリウム血症
 Q1 低カリウム血症の原因は
 Q2 低カリウム血症の症候とは
 Q3 低カリウム血症の鑑別
 Q4 低カリウム血症の治療法について
6 クロール
 Q1 血清クロール濃度の異常は
7 カルシウム
 Q1 カルシウムの役割は
 Q2 カルシウムの調節系というのは
 Q3 高カルシウム血症
 Q4 高カルシウム血症の症候
 Q5 高カルシウム血症の鑑別診断
 Q6 高カルシウム血症の治療の基本は
 Q7 低カルシウム血症というのは
 Q8 低カルシウム血症の原因
 Q9 低カルシウム血症の症候は
 Q10 低カルシウム血症の緊急的輸液法
8 リン
 Q1 リンの役割は
 Q2 リンのバランスとは
 Q3 腎臓におけるリンの輸送と調節
 Q4 血液中のリン濃度
 Q5 高リン血症の原因
 Q6 高リン血症の症状は
 Q7 高リン血症の治療法は
 Q8 低リン血症の原因と治療法は
9 マグネシウム
 Q1 マグネシウムの役割は
 Q2 マグネシウムの輸送・調節
 Q3 高マグネシウム血症
 Q4 低マグネシウム血症
 Q5 低マグネシウム血症の症候
 Q6 マグネシウム欠乏とは
10 薬剤による体液・電解質異常
 Q1 薬剤による体液・電解質異常というのは

CHAPTER 8 酸塩基平衡異常の診断と治療方針 
 Q1 酸塩基平衡というのは
 Q2 酸とは,アルカリとは
 Q3 酸塩基平衡の調節というのは
 Q4 酸塩基平衡障害の種類は
1 酸塩基平衡異常の診断
 Q1 アシドーシスというのは
 Q2 代謝性アシドーシスの原因は
 Q3 代謝性アシドーシスの分類
 Q4 代謝性アシドーシスの診断
 Q5 代謝性アシドーシスの治療方針
 Q6 アルカリ化剤の使用法は
 Q7 一般的なアシドーシスの治療方針
 Q8 アルカリ化剤の投与量の求め方
 Q9 代謝性アシドーシスの緊急輸液療法
 Q10 乳酸性アシドーシスの治療の問題点
 Q11 乳酸性アシドーシスにアルカリ化剤の使用が禁忌というのは
 Q12 アルカローシスというのは
 Q13 代謝性アルカローシスの病態
 Q14 代謝性アルカローシスの種類は
 Q15 代謝性アルカローシスの診断
 Q16 代謝性アルカローシスの治療方針
 Q17 緊急的な代謝性アルカローシスの治療
 Q18 呼吸性の酸塩基異常とは
 Q19 呼吸性アシドーシスの治療方針
 Q20 呼吸性アルカローシスの治療方針

CHAPTER 9 水・電解質の欠乏量輸液法 
 Q1 体液・電解質異常の診療には
 Q2 欠乏量輸液療法の考え方とは
 Q3 脱水症の診断の要点
 Q4 ナトリウムおよび水分の欠乏量はどのように推定されるのか
 Q5 カリウム欠乏量はどのように推定されるのか
 Q6 アルカリ欠乏量の求め方
1 脱水症における輸液療法
 Q1 脱水症の輸液療法の進め方
 Q2 欠乏量輸液法の投与量と投与速度とは
 Q3 実際の輸液処方の組み立て方
 Q4 輸液の速度はどのようにして決めるのか
 Q5 輸液治療のモニタリングとは
 Q6 輸液の副作用・合併症というのは

CHAPTER 10 特殊な病態・疾患における輸液療法
1 ショック時の輸液療法
 Q1 ショックに対する処置
 Q2 ショック時における循環動態は
 Q3 低容量性ショックに対する輸液療法とは
 Q4 アナフィラキシーショックに対する輸液療法とは
 Q5 敗血症ショック
 Q6 多臓器不全の輸液
 Q7 多臓器不全の栄養輸液法の特殊性
2 意識障害の輸液療法
 Q1 意識障害とは
 Q2 意識障害時の鑑別診断は
 Q3 急性期意識障害に対する輸液療法
 Q4 意識障害時の維持輸液療法とは
3 脳血管障害の輸液療法
 Q1 脳浮腫に対する輸液療法
 Q2 グリセオール【上付きR】の特徴
 Q3 抗血栓療法の投与
 Q4 脳血管障害の体液・栄養維持輸液とは
4 心不全の輸液療法
 Q1 心不全にみられる体液・電解質異常
 Q2 心不全にみられる病態
 Q3 心不全にみられる体液性因子の特徴
 Q4 Forrester分類とは
 Q5 臨床的な心不全の病型分類
 Q6 急性心不全の診断は
 Q7 急性心不全の輸液治療
 Q8 慢性うっ血性心不全の輸液治療
5 呼吸器疾患の輸液療法
 Q1 呼吸不全にみられる体液・電解質異常
 Q2 喘息時の輸液療法の注意事項は
6 腎疾患の輸液療法
 Q1 ネフローゼ症候群というのは
 Q2 腎不全とは
 Q3 急性腎不全の分類と原因は
 Q4 急性腎機能障害に対する輸液療法の注意
 Q5 急性腎不全における輸液の適応というのは
 Q6 腎前性高窒素血症の輸液の特殊性
 Q7 腎前性高窒素血症と腎性急性腎不全の鑑別診断
 Q8 急性腎不全乏尿期の輸液の特殊性
 Q9 急性腎不全利尿期の輸液の特殊性
 Q10 慢性腎不全とは
 Q11 慢性腎不全のナトリウム・カリウム代謝は
 Q12 慢性腎不全におけるカルシウム・リン・マグネシウム代謝は
 Q13 腎不全にみられる電解質異常
 Q14 腎不全におけるタンパク・アミノ酸代謝
 Q15 透析期腎不全の輸液療法
7 糖尿病に対する輸液療法
 Q1 糖尿病にみられる低ナトリウム血症の原因は
 Q2 糖尿病にみられるカリウム,酸塩基平衡異常には
 Q3 糖尿病患者にみられる意識障害・昏睡には
 Q4 低血糖性昏睡に対する治療法は
 Q5 高血糖高浸透圧症候群とは
 Q6 糖尿病性ケトアシドーシスの病態は
 Q7 糖尿病性ケトアシドーシスの治療方針
 Q8 糖尿病と乳酸性アシドーシス
 Q9 糖尿病患者への輸液療法
8 肝疾患における輸液療法
 Q1 肝障害の重症度の判定は
 Q2 急性肝炎とは
 Q3 急性肝炎の輸液療法の特徴は
 Q4 低タンパク血症時の輸液
 Q5 肝硬変症の体液異常というのは
 Q6 腹水の成因というのは
 Q7 肝硬変症に対する輸液療法
 Q8 肝性昏睡の原因と治療は
 Q9 肝不全というのは
 Q10 急性肝不全の輸液療法
 Q11 急性肝不全の合併症とその対策
9 嘔吐・下痢時の輸液療法
 Q1 嘔吐あるいは胃液の持続的吸引の病態
 Q2 重症下痢の病態
 Q3 嘔吐・下痢に対する輸液治療の方針
 Q4 嘔吐時の輸液製剤の投与量と投与速度
10 副腎皮質不全の輸液
 Q1 急性副腎不全の原因は
 Q2 副腎不全の症候は
 Q3 副腎不全にみられる電解質異常
 Q4 急性副腎皮質不全の治療方針
11 小児の輸液治療の特殊性
 Q1 小児における体液の特殊性
 Q2 脱水症となりやすいのは
 Q3 乳幼児脱水症の治療方針
12 高齢者への輸液療法
 Q1 高齢者の調節機能の特殊性とは
 Q2 高齢者における輸液にあたっての注意事項
 Q3 高齢者の脱水症に対する注意は
13 悪性腫瘍
 Q1 悪性腫瘍にみられる電解質異常
 Q2 悪性腫瘍の患者の輸液療法
 Q3 長期輸液療法の管理について
 Q4 在宅輸液療法とは
14 熱 傷
 Q1 熱傷の重症度はどう評価する
 Q2 熱傷の輸液療法

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