リウマチ病セミナーXX


著 者
監修 七川 歡次(滋賀医科大学名誉教授)
発行年
2009年12月
分 類
膠原病・リウマチ
仕 様
B5判・304頁
定 価
(本体 8,200円+税)
ISBN
978-4-8159-1854-5
特 色 
 リウマチ学のいまを知らせる好著.本セミナーは,1990年以来毎年発行されて,今回で20冊目.
 内容は,リウマチ病の捉え方に大きく影響する新しい知見とそれに基づく新しい考え方.リウマトロジーの醍醐味を教えてくれるリウマチ病研究の歴史.そして,今やリウマチ学の最大のテーマである骨粗鬆症の最新知見.多彩で新しい薬剤のレビュー,大きく進歩する手術技術などを取り上げる.
 常に本領域の水先案内人として,最新の研究成果・治療データを提供してきた.多彩で日進月歩の進展をみせるリウマチ学を一流の研究者たちが思う存分成果を披露している.


●序   文●

 リウマチ病セミナー第20巻を出版することができ,改めて関係各位のご協力に深甚の謝意を表するとともに,この継続性をもたらした大きな原動力のベースになっているものは,リウマチ学の目覚ましい進歩,発展であることを今更ながら痛感している.このことは今回の論文のタイトルを通覧しても感じてもらえるものではないかと思う.
 まず新しい知見に基づく新しい考え方が随所に出てきて,それらがリウマチ病の捉え方に大きく影響している.その見本のようなものが塩沢俊一教授による「インフラマゾームと自己炎症症候群」であり,一読して戴きたい.これと関連して,新しい概念の下でneutrophilic dermatosisが片山一朗教授によって述べられている.同じく森幹士先生に,リウマチ病におけるシグナル伝達を司るWnt pathwayの解説をお願いしたが,今後の骨関節疾患の理解,治療法の開発に欠かせない知見であるので目を通して戴ければと思う.
 リウマチ病の臨床研究の歴史は,あいまいなリウマチの訴えの中から一群のものを分離し,いわゆるclinical entityとして,診断,治療に役立たせようとする試みの失敗と成功の物語に盡きない.今流のエビデンスが作りにくくても,悪戦苦闘するところがリウマトロジーの醍醐味であった.西林保朗先生の「梨状筋症候群 再考」,村田紀和先生の「Fibroblastic Rheumatism」がそのよい例である.「リウマチの新しい肺症状とその治療」(八田和大先生)では,日本人で種々の薬剤に対して肺の副作用の出現率の高いことが述べられ,その原因解明が待たれる.行岡正雄先生の「過労の生体反応と病気」は漠然としたものからどこまで核心に迫ることができるか,興味深く,今後の発展を期待したい.この問題のアプローチとも関連するが,志水正敏先生の「リウマチ病と非線形思考」はリウマチの臨床研究の真髄の一つを伝えているもので,指針を与えてくれるものではないかと思う.
 骨粗鬆症は今やリウマチ学の最大のテーマとなり,骨の量よりも質が問われている.「糖尿病と骨粗鬆症」(稲葉雅章先生),「リウマチ性疾患とホモシステイン」(鏑木淳一先生)のいずれも骨の質をとりあげていて,啓発されるところが大きい.後者では原因不明の骨粗鬆症の患者にホモシステインの測定がすすめられている.
 志水先生の論文でもいわれているように,リウマチ病は慢性疾患の特徴を具えており,その診療に長期の観察と予後の追求が不可欠である.「早期関節リウマチおよび早期分類不能関節炎の予後」について前田晃先生にレビューして戴いた.最近の生物学的抗リウマチ薬を超早期のRAに適用すれば50%程度が骨変化なく完全治癒させ得るといわれるが,われわれの経験では超早期のものなら約50%は自然治癒するという成績を報告しているので腑に落ちない.
 われわれの領域でも技術の進歩が大きく貢献している.菅本一臣教授の「リウマチ手関節の手根配列異常に対する3次元的定量評価」,米田稔先生の「腱板の断裂と修復2008」,信原克哉先生の「野球肩」があり,信原先生の長期の臨床経験とバイオメカニクスの技術を駆使した知見からなる論文は感銘深かった.
 新しい薬剤については今回も多彩で,「生物学的製剤 Up-date」(佐伯行彦先生),特に抗TNFαのほかに抗IL6が出ており「痛風の新しい治療法」(大島至郎先生)の出現,「関節破壊機序と転写因子c-Fos/AP-1阻害薬」(塩沢俊一教授)があり,これらはいずれも国内初の国際的なものであって,われわれの夢を膨ませてくれる.手術としては「人工椎間板」の行方が関心を唆るもので,福田眞輔先生にうまくレビューして戴き,御礼申し上げたい.
 他の多くの論文について書きたいことが一杯あるが紙数が限られていて,残念で,止むなく割愛させて戴くが,豊富に,考え方や知見,技術,治療薬剤の開発など,さらに骨粗鬆症あるいは慢性病との取り組み方,RAの死亡率の追跡などなど各方面から出揃ってきていて,多少こじつけになるが,20年でリウマチ学元年とでも言って祝いたいところである.

2009年12月     
七 川 歡 次
  

■ 主要目次

炎症リウマチ
 Myositisとビールス
 ベーチェット病2008
 Fibroblastic Rheumatism
 早期関節リウマチおよび早期分類不能関節炎の予後について
 RAの死亡率と死亡要因の変遷
 Neutrophilic Dermatosis

骨関節,脊椎,神経
 脊椎神経分布と神経原性炎症
 偽痛風
 histiocytosis再訪
 野球肩
 梨状筋症候群再考

燐・カルシウム代謝
 糖尿病と骨粗鬆症

検 査 法
 リウマチ手関節の手根配列異常に対する3次元的定量評価

生物学的反応
 インフラマゾームと自己炎症症候群
 Wnt pathway
 過労の生体反応と病気
 リウマチ性疾患とホモシステイン
 リウマチ病と非線形思考

治療と副作用
 関節破壊機序と転写因子c-Fos/AP-1阻害薬
 骨再生医療の現状
 生物学的製剤 Up-date
 ヒト化抗IL-6受容体抗体療法(トシリズマブ)治療後にみられる骨関節変化
 痛風の新しい治療法
 関節リウマチにおける慢性腎臓病と治療
 薬剤と肝障害
 リウマチの新しい肺症状とその治療

手   術
 関節リウマチ患者の手関節変化−手術症例についての調査−
 腱板の断裂と修復2008−Double Anchor Footprint Fixation(DAFF)法を用いた鏡視下腱板修復術−       
 腰部脊柱管狭窄症の手術
 人工椎間板再訪

Drug Information

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