腹腔鏡下胃切除術の実際 −安全な普及のために− (DVD付)


著 者
監 修:
谷川 允彦(大阪医科大学一般・消化器外科学教室 教授)
発行年
2010年7月
分 類
消化器外科学
仕 様
B5判・170頁・89図フルカラー(手術イラスト108点・術中写真128点)
定 価
(本体 12,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1865-1
特 色 
 胃癌を対象とした腹腔鏡下手術に研鑽を積む外科医を対象に,大阪医科大学一般・消化器外科で蓄積された豊富な手術症例と高い評価を受けている手術手技をもとに,200点を超える手術イラスト・術中写真をフルカラーで呈示,腹腔鏡下胃癌手術という新機軸の外科学を安全に普及させることを目標とした,実践的かつ具体的に詳解するビジュアル手術教科書である.
 さらに,腹腔鏡下胃癌手術における各術式(幽門側胃切除術,幽門保存胃切除術,胃分節切除術,噴門側胃切除術,胃全摘術,胃局所切除術)の実際の術中映像をDVDに納め,読者に供覧することによってより一層の理解をはかった.
 腹腔鏡下胃癌手術の最も重要な基本手技を確実に習得するために,また技量の向上に真摯に取り組む外科医の糧となるよう,常にそばに置いていただきたい座右の書である.

●巻頭言●

『腹腔鏡下胃切除術の実際−安全な普及のために−』の発刊に向けて

大阪医科大学一般・消化器外科学教室 教授 谷川 允彦

 胃癌の腹腔鏡手術に関する手引書についてはいくつか散見するものの,実臨床に役立つものという観点からは,必ずしも十分とは言えない状況です.関連学会や各地の講演会などで接する外科医の多くから実践的で,かつ臨床現場に役立つ基本手技とその概念を紹介する教科書の必要性を耳にしてきました.また,このような新機軸の外科学が安全に普及するためには,実践的かつ具体的な手引書が重要な役割を果たすことは疑いのないところです.
 大阪医科大学一般・消化器外科学教室では,奥田準二准教授が中心に行ってきた腹腔鏡下大腸手術はその手技・実績ともに内外から高い評価を受けてきましたが,奥田博士が中心的に記述し,発刊した『腹腔鏡下大腸手術の最前線』は高い評価を得て,最近では第二版が順調に発売されている状況にあります.内視鏡外科という新しい外科分野の手術解説書は多くの外科医の興味を引き,教育のうえで果たしている役割は莫大なものということができます.
 2000年6月に本格的に開始した腹腔鏡下胃癌手術は主として早期病変を対象に施行してきており,2009年9月までに601例に達しましたが,その間にさまざまな手技の変遷を経て,現在では定型化された手技のもとで所属リンパ節郭清ならびに再建術式について安定した術後成績が得られるようになっています.
 以上のような当教室の背景より,その期がそろそろ熟してきたかという思いが持てるようになったことから『腹腔鏡下胃切除術の実際−安全な普及のために−』の発刊を行うことに決定しました.すでに,胃外科グループの中で,看護師や患者向けの解説書の作成の動きがあったので,これを叩き台にして,DVDも含んだこれまでにない実践的な腹腔鏡下胃癌手術の解説書を,執筆に名を連ねたグループ各人の協力を得ながら作業を進めてまいりました.
 腹腔鏡下胃癌手術は幽門側胃切除術,幽門保存胃切除術,分節的胃切除術,噴門側胃切除術,胃全摘術,胃局所切除術など多岐にわたりますが,それぞれの経験症例数は2010年春の現状において他の医療施設と比較しても全国五指に入るものであり,手術技能についても関連学会などで高い評価を受けている状況にあります.
 たとえば,胃切除後の再建操作について言及すると,腹腔鏡下幽門側胃切除(LDG)後の再建においては自動縫合器を用いた完全腹腔鏡下RY再建あるいは完全腹腔鏡下BIを導入し,吻合にかかわる合併症が著減しました.この体腔内吻合による再建をルーチンに行っている大学外科施設は未だ少ないこともあり,その臨床成果は注目されています.また,腹腔鏡下リンパ節郭清においては正確な層と膜を意識した<CODE NUMTYPE=UG NUM=5766>離・切離操作が最も重要であり,拡大視野のもとに安全な手術器具を用いて確実なリンパ節郭清を行うことに努めていますが,その手技上の要点を詳細に記載しながら,一方,実際の手技をDVDも駆使して供覧できるように企画しました.
 本書の発刊が腹腔鏡下胃癌手術の安全な普及と患者貢献に少しでも役立つことができれば,それに勝る喜びはありません.
 (平成22年6月記)

■ 主要目次

I.共通手技

1.手術体位
2.消 毒
3.ドレーピング
4.セッティング 1
5.セッティング 2
6.ポート・皮膚切開線のマーキング
7.臍部皮膚切開
8.ブラントポート挿入
9.気 腹
10.サブポート挿入
11.肝臓の吊り上げ
12.胃・腸管切離線のマーキング
13.スコープ先端の洗浄
14.自動縫合器の使用
15.リンパ節の摘出
16.縫合(エンドスライドによる場合)
17.縫合(レーダーノット;Roeder's knot)
18.再気腹,腹腔内洗浄
19.ドレーン挿入
20.閉 創
21.ドレッシング

II.腹腔鏡下胃切除術の基本

1.胃の解剖
2.手術手技の基本(総論)
 2. 1 進 行
 2. 2 切 離
 2. 3 止 血
 2. 4 血管の処理
 2. 5 郭 清
 2. 6 消化管吻合
3.手術適応と手術手技の基本(各論)
 3. 1 適 応
 3. 2 腹腔鏡下幽門側胃切除術(LDG)
 3. 3 腹腔鏡下幽門保存胃切除術(LPPG)
 3. 4 腹腔鏡補助下噴門側胃切除術(LAPG)
 3. 5 腹腔鏡補助下胃全摘術(LATG)

III.腹腔鏡下幽門側胃切除術

1.「I.共通手技」を行い,手術器具の準備や良好な術野を展開する
2.胃結腸間膜切離
3.No.4sbリンパ節郭清
4.胃大弯壁に沿った大網切離
5.No.4dリンパ節郭清
6.No.6リンパ節郭清
7.十二指腸離断
 7. 1 Roux-en-Y(RY)再建の場合
 7. 2 Billroth I(BI)再建(デルタ吻合)の場合
8.No.5リンパ節郭清
 8. 1 術者が患者の右側に立つ場合
 8. 2 術者が患者の足間に立つ場合
9.小網切離と横隔膜右脚に沿う腹膜切離
10.No.8aリンパ節郭清
 10. 1 術者が患者の右側に立つ場合
 10. 2 術者が患者の足間に立つ場合
11.No.9, 11p, 7リンパ節郭清
 11. 1 術者が患者の右側に立つ場合(1)
 11. 1 術者が患者の右側に立つ場合(2)
 11. 2 術者が患者の足間に立つ場合(1)
 11. 2 術者が患者の足間に立つ場合(2)
12.No.1, 3リンパ節郭清
13.胃切離
14.標本摘出
15.消化管再建
 15. 1 Billroth I 再建法
 15. 2 Roux-en-Y(RY)再建法
16.閉腹,ドレーンの挿入

IV.腹腔鏡下幽門保存胃切除術

1.「I.共通手技」を行い,手術器具の準備や良好な術野を展開する
2.胃結腸間膜の左側への切離
3.左胃大網動静脈の切離(No.4sbリンパ節郭清)
4.胃大弯壁に沿った大網切離
5.No.4dリンパ節郭清
6.No.6リンパ節郭清
7.胃の肛門側切離予定線の決定
8.右胃動脈の切離
9.小網の切離と迷走神経肝枝の温存
10.胃の肛門側切離
11.膵上縁の郭清(No.8a−右No.9リンパ節郭清)
12.膵上縁の郭清(No.11p−左No.9リンパ節郭清ならびにNo.7リンパ節郭清)
13.小弯の郭清(No.1, 3リンパ節郭清)
14.胃の口側切離
15.標本摘出
16.再建(デルタ吻合に準ずる)
17.閉腹,ドレーンの挿入

V.腹腔鏡下胃分節切除術

1.「I.共通手技」を行い,手術器具の準備や良好な術野を展開する
2.胃結腸間膜の左側への切離
3.左胃大網動静脈の切離(No.4sbリンパ節郭清)
4.胃の肛門側ならびに口側切離予定線の決定
5.胃結腸間膜の右側への切離
6.右胃大網動静脈の切離
7.右胃動脈の切離
8.小網の切離と迷走神経肝枝の温存
9.胃肛門側の切離
10.膵上縁の郭清(No.8a, 7, 11p, 9リンパ節郭清)
11.小弯の郭清(No.1, 3リンパ節郭清)
12.胃口側の切離
13.標本摘出
14.再建(デルタ吻合に準ずる)
15.閉腹,ドレーンの挿入

VI.腹腔鏡補助下噴門側胃切除術

1.「I.共通手技」を行い,手術器具の準備や良好な術野を展開する
2.胃結腸間膜切離
3.胃脾間膜処理(No.4saリンパ節郭清)
4.胃上部後面の剥離
5.胃肛門側切離予定線の決定
6.胃結腸間膜の右側への切離
7.右胃大網動静脈の切離
8.右胃動脈の切離
9.小網の切離と迷走神経肝枝の温存
10.胃肛門側の切離
11.膵上縁の郭清(No.8a, 7, 11p, 11d, 9リンパ節郭清)
12.噴門周囲・腹部食道の剥離・露出
13-1.腹部食道の離断と食道内Anvil挿入法
13-2.EEA TILT TOP TM PLUSを用いた食道内Anvil挿入法
14.挙上空腸のマーキング
15.臍部の小開腹と標本摘出
16.挙上空腸の作製
17.トライツ靱帯から約20cmの空腸にAnvilを挿入
18.挙上空腸切離断端の埋没閉鎖とPCEEA本体挿入孔の作製
19.創外での空腸空腸吻合(端側器械吻合)
20.腹腔鏡下食道空腸吻合(端側器械吻合)
21.経鼻栄養チューブ挿入について(術後1日目から経腸栄養に利用)
22.小開腹下残胃空腸吻合
23.ドレーン留置,閉腹

VII.腹腔鏡補助下胃全摘術

1.「I.共通手技」を行い,手術器具の準備や良好な術野を展開する
2.胃結腸間膜切離・胃脾間膜切離(No.4saリンパ節郭清)ならびに
  胃上部後面剥離は「VI.腹腔鏡補助下噴門側胃切除術」と同様の操作である
3.No.4dリンパ節郭清
4.No.6リンパ節郭清
5.十二指腸離断
6.右胃動脈の処理(No.5リンパ節郭清)
7.十二指腸断端の埋没縫合
8.小網切離と横隔膜右脚に沿う腹膜切離
9.膵上縁の郭清(No.8a, 7, 11p, 11d, 9リンパ節郭清)
10.噴門周囲・腹部食道の剥離・露出
11.腹部食道の離断と食道内Anvil挿入法
12.挙上空腸のマーキング
13.臍部の小開腹と標本摘出
14.挙上空腸の作製
15.トライツ靱帯から約20cmの空腸にAnvilを挿入
16.挙上空腸切離断端の埋没閉鎖とCDH本体挿入孔の作製
17.創外での空腸空腸吻合(端側器械吻合)
18.腹腔鏡下食道空腸吻合(端側器械吻合)
19.経鼻栄養チューブ挿入(術後1日目から経腸栄養に利用)
20.小開腹下挙上空腸のCDH本体挿入孔の閉鎖
21.ドレーン留置,閉腹

VIII.腹腔鏡下胃局所切除術


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