プレホスピタルMOOK 4 多数傷病者対応<増 補


著 者
監修
 石原  晋(公立邑智病院 院長)
 益子 邦洋(日本医科大学 教授)
編集
 大友 康裕(東京医科歯科大学大学院救急災害医学 教授)
発行年
2010年8月
分 類
救命・救急医学
仕 様
A4判・286頁・70図・写真180点・49表
定 価
(本体 5,700円+税)
ISBN
978-4-8159-1867-5

特 色 
 平成19年に発行されたプレホスピタルMOOKシリーズ第四弾「多数傷病者対応」は,消防隊・救急隊には災害医療で実施するべき医療について,一方医師・看護師には消防やそのほかの機関の災害現場活動について理解を深めてもらうことを目的に,多数傷病者現場活動の現状と成功させるキーポイントを解説した.
 初版から2年が経ち,平成21年の消防法改正では第1条の序文により,『災害時の傷病者、すなわち多数傷病者への対応は、消防の本来業務である』とはじめて謳われ,また,災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team;DMAT)、災隊員養成研修の着実な実施と、ドクターヘリ・ドクターカーなどの体制整備も進み、医師・看護師が災害現場に出動する体制は,着実に進んでいる.
 本書は,現在の災害医療の現状をふまえ救急救命士・救急隊員、災害現場を統括指揮する指揮隊の方々へさらに災害現場医療を学んでいただくために内容を充実させ増補として刊行するものである.
 それぞれの項目は多数傷病者対応計画に携り,あるいは現場の第一線で活躍している方々が執筆. 全国の多くの救急隊員やメディカルコントロールへ,「避けられた災害死」回避のための必携の書である.

●増補序文●

 本書を平成19年8月に上梓して、はや2年10ヵ月が過ぎた。お陰様で初版第1刷が完売し、第2刷の出版となった。
 この間、平成21年4月に消防法が改正となり、第1条の序文に、「・・火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もって安寧秩序を保持し、・・」と下線部分の文言が追加された。すなわち、『災害時の傷病者、すなわち多数傷病者への対応は、消防の本来業務である』と、改めて謳ったことになる。
 従来、わが国では大規模事故災害の現場医療は、ゼロに近いと評されてきた。なぜなら、これまでは多数傷病者に対して、災害現場で医療を提供する手段がなかったからである。平成17年から体制整備が進められている災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team;DMAT)によって、災害現場医療が実施できる環境が提供されつつある。現在、DMAT隊員養成研修が着実に実施され、平成22年4月1日時点で387施設703チーム(4,302名)の研修が修了している。また、ドクターヘリ・ドクターカーなどの整備も進み、医師・看護師が災害現場に出動する体制は、着実に進んでいる。
 一方、消防職員や警察職員は、職務としての災害現場活動の訓練を受けているものの、多数傷病者に対する現場医療対応に関して系統的に学ぶ場がない。災害現場で、1人でも多くの命を救うためには、消防・警察などの緊急対応機関とDMATなどの医療チームが有機的に連携して活動することが求められる。そのため、消防・警察職員も災害現場医療すなわち多数傷病者対応に関する知識とそれに基づく活動要領および訓練などの体制整備が、今後ますます重要となる。
 消防職員の中で医療職である救急救命士・救急隊員はもとより、災害現場を統括指揮する指揮隊も災害現場医療を学んでおく必要がある。現場救護所を中心とした災害現場医療の管理運営の良否に、多くの人命が委ねられているといっても過言ではない。最先着救急隊の役割の重要性も強調しておきたい。「池田小学校事件」、「荒川沖駅事件」など、同じ失敗が繰り返されていることを、肝に銘じるべきである。
 多数傷病者事案発生時に、災害現場において消防・警察などの緊急対応機関とDMATなどの医療チームが有機的に連携し、「避けられた災害死」回避のための一助となれば幸いである。
 平成22年7月吉日
 大友康裕

■ 主要目次


I 多数傷病者対応

1 多数傷病者事故における災害現場医療対応の原則
 1.多数傷病者事故現場対応の原則
 2.災害現場医療
2 消防の災害現場多数傷病者対応
 1 多数傷病者対応の活動
 2 災害現場管理
 3 救出救助活動
 4 被災者の管理
 5 近隣消防本部との相互応援協定など
Important Reference「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」報告書
 (中間とりまとめ)の概要について
3 各機関の連携
 1 災害現場における警察の役割と他機関との連携 警察庁警備局警備課災害対策室
 2 災害現場における医療チームの役割と他機関との連携
 3 災害現場における自衛隊の役割と他機関との連携
 4 災害現場医療(診療指針)

II 各機関の災害対応組織

1 日本DMAT活動要領
 1.経 緯
 2.DMATとは
 3.運用の基本方針
 4.通常時の準備
 5.初 動
 6.各本部の役割
 7.DMATの活動
 8.費用の支弁
 9.今後の展望
2 緊急消防援助隊の概要 総務省消防庁国民保護・防災部防災課応急対策室
 1.緊急消防援助隊発足の経緯
 2.各部隊の概要
 3.緊急消防援助隊の出動
 4.法制化後の主な出動事例
 5.医療機関との連携
3 警察広域緊急援助隊 警察庁警備局警備課災害対策室
 1.設置経緯
 2.態勢強化
 3.編成、任務など
 4.装備資機材
 5.広域派遣にかかわる措置
 6.広域派遣実績
 7.実践的訓練などの推進

III Confined Space Medicine(閉鎖空間の医療)

1 Confined Space Medicine(CSM)の特殊性
 1.米国FEMA USARシステム
 2.Confined Space Medicine
 3.CSMでみられる病態
 4.クラッシュ症候群(Crush syndrome)
 5.現場での活動
 6.閉鎖空間での医療活動のポイント
2 CSM活動
 1.進入準備
 2.進 入
 3.要救助者に対する医療処置
 4.処置完了〜救出
 5.救出完了〜搬送・活動終了
3 米国のCSMトレーニングコース
 1.医療班訓練コースの概要
 2.講義内容
 3.実働訓練のテーマと内容

IV 事例紹介

1 MIMMS
 1.MIMMSとは
 2.MIMMSの概要
 3.MIMMSの教育コース
 4.MIMMSの原則に従った災害現場の管理と展開
2 米国、NDMSとDMAT
 1.米国の政権と行政機関
 2.近年の米国の危機管理の変遷の概略
 3.2001年以前の概要
 4.2001年以降の変遷
 5.日本版DMATと米国NDMSやDMATとの関係
3 米国における都市捜索救助システム
 1.連邦危機管理庁
 2.緊急支援機能
 3.国家都市捜索救助システム
 4.都市捜索救助部隊
 5.USAR医療チームの概要
 6.トレーニングプログラムの概要
4 都道府県におけるDMATにかかる整備状況について
 1.日本DMAT活動要領
 2.DMATについての地域防災計画への記載とDMAT運用計画の策定にかかる状況
 3.DMAT指定医療機関との協定の締結にかかる状況
 4.都道府県DMAT連絡協議会の設置にかかる状況

1 東京DMAT
2 神奈川DMAT
3 千葉DMAT
4 埼玉DMAT
5 山形DMAT
6 岐阜DMAT
7 大阪DMAT
8 愛知DMAT
9 高知DMAT

5 FIFAワールドカップ大会
 1.2002年FIFAワールドカップ韓国/日本大会における救急・集団災害医療体制の
   構築について
 2.集団災害医療体制の実際
6 JR福知山線列車事故
 1 消防の立場から
 2 医療機関の立場から
7 JR羽越本線列車事故
 1.事故の概要
 2.消防機関の初動
 3.医療機関の対応
 4.検 証


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