見て診て学ぶ 認知症の画像診断 改訂第2版




著 者
編 集:
松田 博史
(埼玉医科大学国際医療センター核医学科 教授)
朝田  隆
(筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学分野 教授)
発行年
2010年10月
分 類
脳神経科学・神経内科学
仕 様
B5判・426頁・308図・写真445点・47表
定 価
(本体 10,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1869-9
特 色 
 初版から5年,進歩著しい各画像診断技術の成果を加え全面改訂.臨床の第一線で活躍中の研究者により,アルツハイマー病をはじめとする代表的な認知症性疾患を,440余点もの鮮明な画像データを駆使し,脳画像所見の特徴を理解することの重要性を説く.認知症診療施設での最新成果をわかりやすく解説する臨床指針書.
 ・分子イメージング:認知症分野にも臨床応用されるようになってきた分子イメージング.個体レベルでの分子イメージングは感度の高い核医学撮像技術が主に用いられてきたが,最近では磁気共鳴画像や光イメージングにも応用が広がっている.また,認知症・アルツハイマー病の根治治療法の開発に多大の貢献を成すものと期待されるPETによる脳アミロイドイメージングも解説.
 ・磁気共鳴画像:高磁場装置の普及により拡散テンソル画像やスペクトロスコピーの精度が向上したばかりでなく,造影剤を使用しない脳血流測定法も認知症に応用され始めるようになっている.
 ・画像解析技術:認知症診療において脳画像統計解析手法が核医学画像ばかりでなく磁気共鳴画像にも広く応用されるようになり,画像診断精度の向上がみられている.
 認知症疾患の診断や病態評価・治療効果判定を行うために,医師,技師,コメディカル,看護師,学生をも対象にした認知症画像診断の必携書である.

●序   文●

 『見て診て学ぶ 痴呆の画像診断』の初版が発行されてから5年余が経過した。お陰様で好評を頂き版を重ねることができたが、この5年間におけるこの方面での進歩には著しいものがあり、今回、全面的に改訂を行うこととした。まず用語に関してであるが、2004年に厚生労働省の用語検討会によって「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられ、行政分野および高齢者介護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられた。その後、各医学会においても2007年頃までにほぼ言い換えがなされたため、本の題名を『見て診て学ぶ 認知症の画像診断』に変更した。内容に関しては、今までの項目に関して最近の知見を加えて見直しを行うとともに、最近の新しい画像技術に関しての項目を大幅に追加し、第一線で活躍されている研究者に執筆をお願いした。この数年で分子イメージングと呼ばれる技術が進歩し、認知症分野にも臨床応用されるようになってきた。分子イメージングとは、生体内での分子プロセスの可視化に関する基礎的・臨床的研究、および開発された可視化手法を利用する応用研究およびそれらの方法の総称をいう。個体レベルでの分子イメージングは感度の高い核医学撮像技術が主に用いられてきたが、最近では、磁気共鳴画像や光イメージングにも応用が広がっている。認知症における分子イメージングで最も脚光を浴びているのがPETによる脳アミロイドイメージングであり、アルツハイマー病の根治治療法の開発に多大の貢献を成すものと期待されている。磁気共鳴画像の進歩も著しく、高磁場装置の普及により拡散テンソル画像やスペクトロスコピーの精度が向上したばかりでなく、造影剤を使用しない脳血流測定法も認知症に応用され始めるようになった。さらに、画像解析技術も進歩し、認知症診療において脳画像統計解析手法が核医学画像ばかりでなく磁気共鳴画像にも広く応用されるようになり、画像診断精度の向上がみられている。
 今回の改訂においても、医師ばかりでなく、認知症診療に携わる診療放射線技師、看護師などコメディカルの方、さらには学生も本書は対象としている。本書により、認知症診療における画像診断がよりいっそう身近なものとなることを期待する。
 2010年10月吉日
 松田博史
 朝田 隆

■ 主要目次


T.総  論

 1 認知症の疫学、診断基準、原因、治療など
T.認知症とは
U.認知症の疫学
V.認知症の診断基準にみられる画像検査の位置づけ
W.MCIのコンバート予測と脳画像所見
X.治療

 2 画像診断に必要な脳の解剖
 1.肉眼的解剖
T.外表面からみた肉眼的解剖
U.内側面からみた肉眼的解剖
V.水平断からみた肉眼的解剖
W.冠状断からみた肉眼的解剖
 2.画像解剖
T.脳表の画像解剖
U.辺縁系の画像解剖

 3 画像診断の種類と撮像法および原理
 1.CT
T.CTの原理
U.アーチファクト
V.頭部領域におけるCTの撮影法
 2.MRI(fMRI)
T.MRの原理
U.MRの画像化の原理
V.超高速スキャン
W.機能的磁気共鳴画像法(fMRI)への応用
 3.SPECT
T.原理と装置
U.脳血流SPECT用放射性医薬品
V.脳血流SPECT正常像とトレーサ投与条件
 4.PET
T.PETの原理と特徴
U.PET装置による測定とデータ収集
V.検査方法
W.分子イメージング

 4 画像統計解析法の原理と種類
 1.SPM
T.脳機能画像解析の基本理論
U.ソフトウエアについて
V.Voxel-based morphometry
 2.3D-SSP
T.健常者データベースの構築
U.3D-SSPの解析処理手順
V.3D-SSPの特徴とインターフェースソフトウエアについて
 3.eZIS
T.eZISの解析処理手順
U.eZISの特徴
 4.VSRAD
T.VSRADの解析処理手順
U.VSRADの特徴

 5 正常な加齢・性差
T.部分容積効果およびその補正
U.正常加齢と脳血流・代謝および脳萎縮の関連
V.性差と脳血流・代謝および脳萎縮の関連

 6 正常老化・アルツハイマー病と関連する深部白質病変:MRI上のWhite matter hyperintensity
T.概念
U.症状
V.臨床像としての画像診断のポイント
W.病理所見
X.治療方針
Y.経過と予後

U.各  論

 1 アルツハイマー病
 1.MRI、CT画像で診るアルツハイマー病
T.高齢者(60歳以降) 脳のMRIの特徴
U.アルツハイマー病のMRI診断
V.アルツハイマー病の鑑別対象疾患
W.アルツハイマー病の早期診断
 2.SPECT画像で診るアルツハイマー病
T.アルツハイマー病の病理所見
U.アルツハイマー病のSPECT所見
V.アルツハイマー病と他の認知症との鑑別診断
W.アポリポ蛋白EとPET/SPECT所見の関連
X.SPECTでの治療効果の判定
Y.アルツハイマー病の行動心理学的症候とSPECT所見
 3.FDG-PET画像で診るアルツハイマー病
T.アルツハイマー病におけるFDG-PETの特徴
U.PETによる定量性の必要性について
V.FDG-PET正常像
W.アルツハイマー病のFDG-PET所見
X.軽度認知機能障害(MCI)
Y.治療効果判定・効果予測
Z.アルツハイマー病と他の変性性認知症の鑑別診断のコツ
[.認知症診断におけるFDG-PETの医療経済効果、保険適用に向けて
\.FDG-PETの多施設共同研究
 4.アミロイドPET画像で診るアルツハイマー病
T.アミロイドイメージングの開発経緯
U.撮像法
V.視覚的読影法と定量計測法
W.アルツハイマー症発症に至る変化
X.アルツハイマー病発症後の経時変化
Y.アルツハイマー病以外の変性疾患におけるアミロイドイメージング
Z.アミロイドイメージングと根本治療薬治験
[.今後の展望

 2 脳血管障害による認知障害
T.脳血管障害の画像診断
U.血管性認知症の診断基準
V.血管性認知症の画像診断

 3 パーキンソン病に関連する認知症
T.レビー小体型認知症と認知症を伴うパーキンソン病
U.臨床症状
V.鑑別診断および検査所見
W.治療

 4 前頭側頭葉変性症(FTLD)
T.概要
U.前頭側頭型認知症(FTD)
V.進行性非流暢性失語(PA)
W.意味性認知症(SD)
X.FTLDと他の疾患との鑑別
Y.FTLDの治療

 5 その他の認知症
 1.神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)
T.老年期認知症の1疾患単位
U.神経病理学的特徴
V.臨床的特徴、画像所見、臨床診断
 2.嗜銀顆粒性認知症
T.嗜銀顆粒性認知症とは
U.頻度
V.神経病理
W.診て―臨床の問題
X.見て―画像所見
 3.プリオン病
T.概念と分類
U.画像所見の病理学的基礎
V.孤発性クロイツフェルト-ヤコブ病の画像所見
W.獲得性プリオン病の画像所見
X.遺伝性プリオン病の画像所見
 4.皮質基底核変性症(CBD)
T.概念
U.臨床症状と臨床診断
V.画像
W.神経病理所見
X.生物学的マーカーとの関連
Y.治療
 5.ハンチントン病(HD)
T.概念
U.臨床像
V.病理
W.治療方針
X.経過と予後
 6.HIV感染症
T.概念
U.臨床像としての画像診断
V.病理所見
W.治療方針
X.経過と予後
 7.進行性核上性麻痺(PSP)
T.概念
U.画像診断
V.病理
W.治療方針
X.経過と予後
 8.正常圧水頭症(NPH)
T.特発性正常圧水頭症(iNPH)
U.AVIM
V.続発性正常圧水頭症
W.LOVA
X.LIAS
 9.神経梅毒
T.診断のポイント
U.概念
V.臨床症状
W.画像所見
X.髄液所見
Y.病理所見
Z.治療
[.経過と予後

V.最近の観点から

 1 分子イメージング
 1.アルツハイマー病モデルマウスのイメージング
T.認知症のモデル動物
U.老人斑のイメージング
V.タウ病変のイメージング
W.神経免疫反応・神経傷害のイメージング
 2.PiB以外のアミロイドイメージング
T.アミロイドイメージング用プローブ
U.11C標識PETプローブ
V.18F標識PETプローブ
W.光イメージングによるアミロイド検出の可能性
 3.アセチルコリンエステラーゼイメージング
T.脳内アセチルコリンエステラーゼの測定法
U.加齢の影響
V.アルツハイマー病
W.軽度認知機能障害
X.パーキンソン病とレビー小体型認知症
Y.進行性核上性麻痺
Z.17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症
[.多系統萎縮症と脊髄小脳変性症
 4.ミクログリアイメージング
T.脳の炎症とは
U.脳内ミクログリアの特徴
V.ミクログリアイメージングの研究
W.アルツハイマー病のミクログリアイメージング
 5.脳電位解析による脳機能イメージング法:NAT
T.DIMENSIONとNATの相違について
U.Zスコア
V.類似度ダイアグラム(Likelihood Diagram;LD)

 2 MRの進歩
 1.拡散テンソル画像(DTI)
T.拡散現象と拡散強調像
U.拡散の異方性・テンソルとは
V.加齢性変化および認知症性疾患の拡散テンソル画像
 2.ASL
T.ASLの原理
U.撮影の実際
V.長所と問題点
W.定量的rCBF測定
X.認知症への応用
 3.MRS
T.MR spectroscopy(MRS)とは
U.Proton MRSで観察される代謝物の臨床的意義
V.認知症の診断におけるproton MRSの有用性
W.認知症の治療効果判定におけるMRSの有用性と将来性


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