知りたいことがなんでもわかる
本人と家族のための 認知症介護百科 改訂第2版




著 者
著:
須貝 佑一(浴風会認知症介護研究・研修東京センター副センター長)
竹中 星郎(浜田クリニック)
頼富 淳子(保健師・在宅介護サービスグループ楽天堂スーパーバイザー)
発行年
2010年10月
分 類
介護・福祉 臨床看護・成人看護・老人介護
仕 様
A5判・176頁・5図・3表
定 価
(本体 1,500円+税)
ISBN
978-4-8159-1870-5
特 色 
 実際の診療場面や介護相談で経験した実例をもとに,厳選された110のQ&A形式で構成し,やさしく語りかける文体とユーモラスなイラストにより好評を得た,“認知症介護百科”の改訂版.
 アルツハイマー病をはじめ痴呆症を引き起こすさまざまな病気を介護者に理解していただくこと,痴呆性高齢者を介護するときに直面する問題や悩みにその解決法の拠り所となるように企画.これが正しい介護だとか,こうあるべきだとかということは一切触れず,介護はもともと生活の一部であることを大切にし,それぞれの家族がやりやすくなるために,問題が解決しやすいように実例を紹介したり,正確な医療情報を提供することに努め,今回の改訂により一層内容を充実させた.
 介護家族はもちろん介護専門施設の従事者にとっても長く役立つ座右の書である.

●序   文●

 「痴呆症」は誤解されることの多い言葉です。痴呆症という1つの病気があると思われていたり、「痴呆症」と「呆け」は違うと思われていたりします。実際に痴呆症の高齢者を連れて診察に訪れた家族に「アルツハイマー病ですね」と告げると「えっ!うちの人は老人性痴呆じゃなかったのですか」と仰天される方が大勢いらっしゃいます。老人性痴呆とアルツハイマー病は違うものという観念がいまだに広く行き渡っています。高齢化が進んでいる日本では老人性痴呆を起こす病気の大部分がアルツハイマー病なのですが、古い知識が災いして痴呆症の理解が混乱しているのです。
 痴呆症の高齢者を抱えるということはその家族にとっては初めての経験です。痴呆症の介護を経験したことのない人にとってはすべてが未知との遭遇です。知識のないところから出発しなければなりません。痴呆に関してはさまざまな情報が飛び交っている中で介護者は何を拠りどころにして痴呆症を理解し、介護していけばよいのか迷っていると思います。本書は実際に診察場面や介護相談で寄せられた実例をもとにして書かれたものです。アルツハイマー病をはじめ痴呆症を引き起こすさまざまな病気を理解して頂きながら痴呆性高齢者を介護するときに直面する問題や悩みに答えようと企画しました。本書ではこれが正しい介護だとか、こうあるべきだとかということは一切触れていません。介護はもともと生活の一部なのですからそれぞれの家族がやりやすいようにするのが一番です。問題が解決しやすいように実例を紹介したり、正確な医療情報を提供することに努めました。痴呆の進む段階ごとに問題をまとめていますので今介護をしている介護者にとっては先行きを読み取ることもできるでしょう。介護家族はもちろん痴呆を介護する専門施設の介護従事者にも長く役立つ座右の書となることを願っています。
 著者代表 須貝佑一

■ 主要目次


認知症の始まりの頃

 ■医療と薬
 Q1:認知症になりやすい人というのがありますか。
 Q2:認知症の初期はどうしたらわかりますか。
 Q3:認知症かも知れないと思ったらどこへかかれば
 Q4:認知症だと思って医者へ連れて行ったら、頭のCTは年齢相応で異常はないと言われました。どう考えたらいいのでしょうか.
 Q5:「俺はどこも悪くない」と言って医者にかかろうとしません。どうやって病院へ連れて行ったらよいでしょう。
 Q6:アルツハイマー病という診断を受けました。認知症とどう違うのですか。
 Q7:自分も忘れっぽくなったのですが認知症になるのでしょうか。
 Q8:認知症と食事の習慣は関係がありますか。
 Q9:アルツハイマー病は遺伝しますか。
 Q10:「お腹が痛い、足が痺れる」と大騒ぎしますが、病院では何もないと言われて治療してくれません。家族はどう対応したらいいのでしょうか。
 Q11:自分で薬を管理しているのですが、飲み忘れたり、飲み過ぎたり、同じような薬をいろいろな病院や薬局でもらって来てしまいます。心配になり、家族でみようとすると、興奮して怒り出し、渡してくれません。
 Q12:イチョウの葉のエキスがアルツハイマー病によいといわれていますが、根拠はありますか。
 Q13:アルツハイマー病と言われました。本人に知らせるべきでしょうか。

 ■精神変調と言動
 Q14:明るく活動的な人でしたが、近頃無気力になり趣味の習い事も理由をつけて休み、テレビや新聞も見なくなりました。
 Q15:「もう死にたい」とよく口にしますが、大丈夫でしょうか。
 Q16:「誰かに聞かれるといけないから」と、ひそひそ話をするようになりました。認知症でしょうか。
 Q17:最近、多弁になり、いろんな人に作り話をしています。寂しいのでしょうか。
 Q18:お金や通帳を冷蔵庫や畳の隙間など変なところに隠すようになりました。
 Q19:気前よく人にお金をあげたり高額な物を契約してしまいます。どうすればいいでしょうか。
 Q20:外では「穏やかで楽しいお年寄り」と言われていますが、家では性格が変わって気難しくて暴力的です。どちらが本当なのでしょうか。家族の対応に問題があるのでしょうか。
 Q21:「財布や預金通帳がない」と言って大騒ぎしたり、「嫁がセーターを盗った」と交番に届けたり、近所の人に言いふらすので困っています。
 Q22:「毒が入っている」と言ってせっかく用意した食事に手をつけません。
 Q23:「外に男がいる、浮気している」と言って責めますが、私には身に覚えがありません。“色ボケ”でしょうか。どうすればいいのでしょうか。

 ■日常の生活
 Q24:昔のことは覚えているのに、数分前のことを忘れてしまうのはなぜでしょうか。
 Q25:認知症といわれていますが、まだ運転をしています。車は取りあげるべきでしょうか。
 Q26:夫はまだ54歳なのに認知症になっています。仕事は続けさせたいのですが。
 Q27:お風呂を勧めると「昨日入ったからいい」と言って入りません。もう1ヵ月以上になります。
 Q28 :調理に時間がかかり、献立はいつも味噌汁とアジの干物です。味つけも変ですが、本人は平気で食べています。
 Q29:同じ物を着て着替えようとしません。どう勧めたらよいでしょうか。
 Q30:危ないので台所の火は使わせないようにしましたが。
 Q31:パンや納豆など同じ物を買ってきてしまうので家に物が余ってしまいます。
 Q32:大した用事もないのに昼夜かまわず電話をします。
 Q33:冷蔵庫や食器棚に腐った物が置いてあります。
 Q34:郵便物が紛失したり、かかってきた電話の用件が伝わらなくて困ります。
 Q35:認知症で食べてはいけないものがありますか。
 Q36:認知症の人でもお酒は飲んでもいいのですか。
 Q37:糖尿病なのに食事制限が守れません。どうやったらいいでしょうか。

 ■介護者の思い
 Q38:約束したことでも「そんなこと知らない」と怒ります。どう説明したらいいですか。
 Q39:家事が難しくなっているので、ヘルパーさんを頼みましたが、「帰って」と言い、中へ入れません。
 Q40:間違ったことをしているのを見るとつい叱ってしまいます。
 Q41:毎日、日記を書かせてその日の出来事を思い出させるようにするのは効果がありますか。
 Q42:孫が遊びに来る日に「今日は孫が来るのか」と5分おきに聞いたり、デイサービスの日に朝から何度もそれを確認するので疲れてしまいます。忘れが進んだのか心配です。どのように対応したらいいのでしょうか。
 Q43:耳が遠くなったので補聴器を買ったのですが、本人は「うるさい、いらない」と言って使いません。当人は「困らない」と言いますが、家族は話が通じないので困っています。
 Q44:認知症の介護認定はどうしたらよいのでしょうか。
 Q45:1日のうちでも落ち着いているときと、調子の悪いときがあります。認定調査はどのような時間に設定すればよいですか。
 Q46:認定調査のとき、本人は、実際よりよくみせようとして「なんでもできる」と言ったり、頑張って普段できないようなことをやってみせたりします。普段の様子が正しく伝わるかどうか心配です。


認知症の進む頃

 ■医療と薬
 Q47:アルツハイマー病に効く薬ができたと聞きました。使ってもらえますか。
 Q48:認知症の人に急に病気が併発したらどうすればよいでしょうか。
 Q49:昼夜逆転、徘徊、暴言などがあり、医師からアリセプト▲○R▲が処方されました。飲んでも症状が落ち着きません。どのくらい飲めば落ち着きますか。
 Q50:「自分はどこも悪くないから」と薬を飲もうとしません。
 Q51:肺炎や骨折などの急病のときに病院で診てもらえるか心配です。
 Q52:認知症が進むと暴れたり、妄想をもつようになるといわれているので、これから先が心配です。
 Q53:認知症が進み在宅介護が難しくなりました。入院または入所できる施設サービスにはどのようなものがありますか。
 Q54:「認知症サポート医制度」があると聞きましたがどんな制度ですか。

 ■精神変調と言動
 Q55:「お父さん遅いわね」と、もう亡くなった夫がいるようなことを言います。
 Q56:夕方になると「お世話になりました。家に帰ります」と他人行儀に挨拶して、家を出ていこうとします。「ここが自分の家だ」と説明しても5分もしないうちに同じことを言ってきます。どうしてでしょうか。92
 Q57:「家に帰る」とは生まれた家のことで、子ども時代に返ったのだから、その頃の思い出を話してもらうと落ち着くといわれますが、本人は「そんなこと忘れた」と話に乗ってきません。そういうときにはどうすればいいのですか。
 Q58:毎日同じことを言っても通用するのでしょうか。嘘をついてもいいのでしょうか。
 Q59:昼夜が逆転して、夜は眠らずに起きていて、昼間は眠っています。昼間は起こしている方がいいのでしょうか。
 Q60:会話をしていてニコニコしていると思っていると「何笑っているんだ」と突然怒り出し、びっくりすることがたびたびあります。何か原因があるのでしょうか。

 ■日常の生活
 Q61:家でお風呂に入れようとすると抵抗して入りません。
 Q62:トイレを汚して困っています。自分で始末させた方がいいですか。
 Q63:猫を飼っているのですが、世話ができずに部屋の中が猫の糞尿で大変不潔な状態です。猫を里子に出そうと相談しても納得してくれません。放っておいた方がいいのでしょうか。
 Q64:数分おきにトイレに連れて行けと言います。連れて行っても排泄はないのです。
 Q65:石鹸やトイレットペーパーを口に入れてしまうので危ないのですが。
 Q66:隙をみては玄関から出て行こうとします。鍵をかけてはいけませんか。
 Q67:留守の間張り紙をしておいたのですが、読んでいなかったようで、用事が通じません。
 Q68:認知症の人がたくさん食べているのに太らないのはなぜですか。
 Q69:食事をした後でもすぐに「ご飯まだ食べてないから」と要求します。
 Q70:引っ越しや転居は認知症が進んでしまうのでしない方がいいと聞きますが。
 Q71:汚れた下着をしまい込んで、カビが生えてしまいます。
 Q72:おむつ外しで不潔になるのでつなぎ服を使いました。人からはつなぎ服はいけないと言われました。

 ■介護者の思い
 Q73:毎日1人で散歩していますが、道に迷わないかと心配です。行き倒れになったらとか、ほかの人たちに迷惑をかけるのではないかと気がかりですが、対策があるのでしょうか。
 Q74:行方不明になったらまず、どうしたらいいでしょう。
 Q75:プライドが高くて、デイケアのようなお年寄りの集まりには行こうとしません。
 Q76:デイサービスに母と見学に行きましたが、「あんなところに行きたくない」と行きたがりません。どうしたらよいでしょう。
 Q77:認知症のお年寄りにはグループホームがいいと聞きましたが。
 Q78:グループホームとはどのような施設なのでしょうか。利用するにはどのようにすればいいですか。126
 Q79:ショートステイを利用すると認知症が進むのでしょうか。
 Q80:親戚の不幸を知らせても大丈夫でしょうか。
 Q81:娘の私をお手伝いさんと思っているようです。何度言ってもすぐ忘れて悲しくなります。
 Q82:「どうしたらいいの」といつも私(主たる介護者)の後をついて歩くのでやり切れません。
 Q83:たまには旅行したいのではと思い、温泉に誘ったところ喜んで「行きたい」と言います。家族と一緒に旅行に連れて行きたいのですが、かまわないですか。
 Q84:たまに来る娘や親戚の人には上機嫌でそつなく応対するので、日常の大変さがわかってもらえず「世話の仕方が悪い」と言われます。
 Q85:病気だからと思っても聞き流せないことや排泄の失敗などが重なると、ついきつく叱ってしまい自己嫌悪に陥ります。
 Q86:在宅で看るのが限界ですが、施設に預けるとなると後ろめたさや寂しさを感じて決心がつきません。
 Q87:訪問介護では何人ものヘルパーが入れ代わり立ち代わり入ると聞きますが、混乱しないでしょうか。
 Q88:ショートステイを利用したら疥癬に感染してしまいました。「治るまでデイサービスは休んでほしい」と言われて困っています。


認知症が重くなった時期

 ■医療と薬
 Q89:認知症が重くなったときの薬はありますか。
 Q90:薬を飲ませるのが難しくなっています。
 Q91:薬を飲ませるようになってから、口をもぐもぐさせる、よだれが出る、舌が出る、午前中ボーッとしている、足がもつれるなどが目立つようになりました。とても気になるのですが。
 Q92:常に足がピクピクひとりでに動きます。
 Q93:たびたび痙攣が起きるようになりましたが、救急車を呼ぶべきでしょうか。

 ■精神変調と言動
 Q94:テレビに映っている人にお辞儀したり、アナウンサーの話に受け答えするようになりました。
 Q95:毎朝、洗面所の鏡の前に行って、鏡に映る自分の姿に話しかけたり、挨拶するのはなぜでしょうか。
 Q96:暴力行為がひどいので、どこでもショートステイを断られてしまいます。
 Q97:デイサービスを利用して認知症の夫を預けています。施設の連絡帳にたびたび「職員に手を上げます」「廊下に放尿がありました」といった様子が書かれて帰って来ます。施設の方々に申し訳ないので預けるのを止めようと思っていますが。
 Q98:昼も夜も大声を出して何度も人を呼ぶので介護する方が疲れます。
 Q99:夜中に急に起き出して「空襲だ、火事だ」とか「どろぼーがいる」と大声を出して興奮し、落ち着きなく動き回ります。
 Q100:大便を手でこねたり、衣類や壁などに塗りたくるので困っています。対策はあるのでしょうか。

 ■日常の生活
 Q101:食べ物をよくむせるようになりました。
 Q102:食べた物を口に入れたまま、いつまでたっても飲み込もうとしないので困っています。
 Q103:口から食べ物を摂れなくなりました。これからどうしたらよいでしょう。
 Q104:最近、冷蔵庫にある肉や大根やネギなどの野菜を、なまのまま食べてしまいます。またバターを1ケース食べたり、お歳暮で届いたミカンを1箱食べてしまいました。身体に害はないのでしょうか。
 Q105:穏やかな表情で眠っている時間が長くなりました。そっと寝かせておく方がいいのでしょうか。

 ■介護者の思い
 Q106:言葉も出なくなり、無表情で絶えず大声で叫ぶなど、ほとんどコミュニケーションがとれません。意思疎通を図る手立てはないものでしょうか。
 Q107:もし、介護する人が急にいなくなってしまったらどうすればいいですか。
 Q108:「成年後見制度」とはなんでしょうか。
 Q109:後見、保佐、補助の意味を教えてください。
 Q110:アルツハイマー病の「終末医療」はどのように行われるのでしょうか。


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