名医に学ぶ
認知症診療のこれまでとこれから 改訂第2版




著 者
著:
長谷川和夫(浴風会認知症介護研究・研修東京センター 名誉センター長)
発行年
2010年12月
分 類
精神医学 介護・福祉
仕 様
A5判・148頁・33図・28表
定 価
(本体 2,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1873-6
特 色 
 初版では「長谷川式スケール」の考案者である著者が,豊富な臨床経験に基づき認知症のこれまでとこれからをわかりやすく解説し好評を得た.今回の改訂版では認知症医療と介護を取り巻く状況の変化に内容を合わせ,また昨今の診断技法を駆使する操作的診断と治療に対し,認知症の人の物語を聴く時間の大切さと「病気をみずして病人をみよ」という医療の原点に認知症診療も立たなければならないと説く.心理療法的アプローチや生活指導の重要性と,その課題と取り組みかたを解説する.
 広く臨床医・研究医, ケア専門職,そして家族の方々にとっても必読の書.

●序文 —改訂にあたって — ●

 本書が刊行されておよそ4年の歳月が経ちました。白雲が蒼空を流れていくように認知症の医療と介護にかかわる状況も変わってきました。平成20年に厚生労働省は、認知症緊急プロジェクトとして、実態の把握、研究の開発、医療対策、認知症ケアの普及および本人・家族の支援、若年性認知症対策の5項目を挙げました。現実の診療現場では認知症と呼称が変わってから、アルツハイマー病はアルツハイマー型認知症と呼ばれることが多くなりました。このような流れに沿って若干の改訂を行いました。
 最近、短時間ですが、街角の診療所で認知症の方を診察する機会をもっています。かつての大学病院での診療と異なった新鮮な臨床体験をしています。言うまでもなく診療の中で適切な診断は、適切な治療を導入する重要な位置を占めています。しかし、精緻を極める診断技法を駆使して診断名に達したことでよしとする傾向はないでしょうか。単に疾患対応の操作的診断と治療に流れていることはないでしょうか。
 「病気をみずして病人をみよ」という医療の原点に認知症診療も立つことです。認知症の人の物語を聴く時間をもつことが第一でしょう。心理療法的アプローチや生活指導を取り入れることです。これには多くの課題がありますが、それを一つひとつ解決していく工夫や対策を考えていくことです。
 広く医療関係者の皆さまにお読み頂き、御指導、御教示頂くことを念願しております。
 平成23年1月10日 長谷川和夫

■ 主要目次

CHAPTER 1 物語の始まり

CHAPTER 2 痴呆から認知症へ
 1.改称の経緯
 2.「痴呆」に替わる用語に関する検討会
 3.パブリックコメント(国民の意見募集)
 ◆「認知症」

CHAPTER 3 認知症とは何か
 1.認知症の特性
 2.健康な人の物忘れと認知症の物忘れとはどこが違うか

CHAPTER 4 認知症によく似た状態
 1.意識混濁あるいはせん妄
 2.うつ病
 Essay 1 少女ユキとの出会い

CHAPTER 5 認知症の疫学
 1.認知症の人はどれくらいいるか
 2.在宅認知症高齢者の実態
 3.認知症高齢者の家族ケア

CHAPTER 6 認知症高齢者との面接
 1.不安感を除くこと
 2.高齢者のペースに合わせる
 3.適切な面接距離を保つ
 4.適切な情報の与え方
 5.非言語的な情報伝達
 6.感情の交流を重視する
 7.面接者としての注意点
 8.家族との面接
 ◆「介護ストレスの予防」について

CHAPTER 7 長谷川式認知症スケールについて     
 1.開発の経緯
 Essay 2 僕にはメロディーがない

CHAPTER 8 認知症の精神診査と診断
 1.診断の場面で注意すること
 2.認知症高齢者の精神診査
 3.認知症診断のポイント

CHAPTER 9 認知症の原因疾患とその治療   
 1.アルツハイマー型認知症
 2.アルツハイマー型認知症と鑑別を必要とする認知症の原因疾患
 ◆「若年性認知症」について

CHAPTER 10 認知症のケア
 1.認知症ケアの理念
 2.パーソンセンタード ケアについて
 3.物語に基づくケア
 4.認知症高齢者のケアマネジメント
 Essay 3 認知症ケアのバリデーション療法

CHAPTER 11 認知症デイケアの臨床から  
 1.聖マリアンナ医科大学病院デイケアの経緯と目的
 2.デイケア実施の状況

CHAPTER 12
 新しい介護サービス
 1.新予防給付について
 2.居宅サービス
 3.地域密着型サービス
 4.施設サービス
 Essay 4 認知症の人との出会いをめぐって

CHAPTER 13 認知症の予防

CHAPTER 14 成年後見制度
 Essay 5 老いることの意味

CHAPTER 15 認知症対策のこれから
 1.認知症になっても安心して暮らせる町づくり
 2.認知症介護研究・研修センターについて

参考文献・認知症の関連サイト


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