がんへの挑戦 免疫細胞療法




著 者
著:
木村 秀樹(千葉県がんセンター 副センター長)
発行年
2011年3月
分 類
癌・腫瘍一般
仕 様
A5判・122頁・65図・12表
定 価
(本体 1,900円+税)
ISBN
978-4-8159-1877-4
特 色 
 2人に1人ががんにかかり,3人に1人ががんで死を迎え,今後日本は高齢化に伴い年間50万人以上の方ががんで亡くなる時代を迎えようとしている.本書は,このような時代に,がん治療に長年挑み続け,がん医療の最前線を歩んできた著者の,がんの脅威に立ち向かう挑戦状であり,そしてその最大の武器となった免疫細胞療法の解説書である.
 第1部には,現在の免疫細胞療法を取り巻くさまざまな問題点を,第2部では「免疫細胞療法の実際」として著者が35年間取り組んできた免疫療法の変遷と,現在のリンパ節を用いた肺がんの治療に至る過程を述べる.
 百聞は一見に如かず.難解と思われがちな免疫細胞療法を目で見て感じて理解してもらえるように,ふんだんに図表を取り入れて解説.実際には想像していたよりもはるかに簡単でわかりやすいことを実感してもらえるはずである.
 がんの免疫に興味のある方,これから実際に免疫療法に取り組みたいと考えている若い研究者には是非一読していただきたい良書である.

●序   文●

￿￿ 人類に対する最大の脅威ノノ≪がん≫。2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死ぬと言われています。今後日本では高齢化に伴いさらにこの傾向は強まり、年間50万人以上の方ががんで亡くなる時代がすぐそこまで来ています。本書はこのような時代にあたり、がんの脅威に立ち向かう挑戦状です。また、がん医療最前線を歩んできた筆者が挑み続けてきたがんに対する免疫細胞療法の解説書でもあります。
 百聞は一見に如かずといいますが、何事も聞くよりも自分の目で見た方が確かで、理解もしやすいのが相場です。免疫細胞療法というと通常は非常に難しく理解が困難なことと考えてどなたも敬遠しがちですが、実際に目で見てみると想像していたよりもはるかに簡単でわかりやすいことに気づくと思います。この本は、耳で聞くよりも目で見て感じて理解してもらえるように、ふんだんに図表を取り入れました。わかりにくいところは飛ばしてでも最後までご一読ください。読み物としては1〜2時間で読み切れると思います。最後に筆者が言いたかったことが何か1つでも心に残って頂ければ望外の喜びです。
 第1部には、現在の免疫細胞療法を取り巻くさまざまな問題点を取り上げました。第一になぜこのような免疫療法が今必要とされているのか? がん患者の増加と手術、抗がん剤、放射線療法などの現状から免疫療法に関する基礎的な知識などを解説しています。また免疫細胞療法における保険診療、自由診療、先進医療などの違いについてや再生医療における制度的枠組みに関する厚生労働省の取り組みについてもわかりやすく説明しています。
 第2部では、「免疫細胞療法の実際」と題して、私のたどってきた免疫療法の変遷について述べました。筆者が35年間かかってたどりついた自分史のようなものですが、最初の動物実験から始まり、現在のリンパ節を用いた肺がんの治療に至る過程を時系列的に述べてみました。我ながら頑固に自己流を守ってきたことにあきれる思いですが、少なくとも他人は騙せても自分だけは騙せないことを念頭に、自分を信じてやってきたつもりです。がんの免疫に興味のある方や、これから実際に免疫療法に取り組みたいと考えている若い研究者の方に読んで頂けたら幸いです。
 今回この本を出版するにあたり、巻頭言を瀬田クリニックの後藤先生にお願いしました。後藤先生とは以前より仕事を通じたおつきあいをさせて頂いており、お忙しい中、無理をいってお願いしました。先生は快く引き受けてくださり、また、身にあまるご紹介の言葉を頂きました。この紙面を借りて、御礼を述べさせて頂きます。瀬田クリニックとは、前理事長の江川先生の時代よりご指導を頂いておりましたが、先生は平成21年8月ご逝去されました。免疫細胞治療の今日は、江川先生なくしてはあり得ず、われわれにとっては大変大きな痛手です。ここに謹んで先生の御冥福を祈り、はじめのことばとさせて頂きます。
 平成23年2月吉日

■ 主要目次

第1部 免疫細胞療法とは

1. 増え続けているがん
2. 免疫細胞の種類
3. がんの免疫療法
 1・免疫細胞療法の特徴
4. 特異的免疫応答
5. 樹状細胞ワクチン療法
6. CTL療法
 1・α62T細胞療法
 2・腫瘍細胞の認識機構
 3・γ64T細胞療法
7. がん免疫細胞療法の課題
8. 自由診療と先進医療
9. 再生医療における制度的枠組みの問題点

第2部 免疫細胞療法の実際

1. エピソード
2. 免疫療法との出会い
3. アメリカでの研究の始まり
 1・モロニーMSV誘発腫瘍について
 2・担がん12日目の脾臓細胞の免疫への関与
 3・担がんマウス腫瘍所属リンパ節
 4・抗T cell抗体(Ty1.2)とILの効果
4. 帰国後の転機 IL-2の登場
5. 肺がん所属リンパ節の役割と機能
6. 千葉県がんセンターでの新たな試み
7. リンパ節の培養方法
8. 肺がんの診断と治療
9. 術後肺がんの免疫化学療法
10.術後免疫化学療法のプロトコール
11.免疫療法の実際
12.副作用
13.細胞の投与方法
14.術後成績について
15.細胞数と予後との関係
16.再発とその後の治療
 1・腫瘍マーカーの上昇した症例
 2・肺内転移再発例
 3・脳転移再発例
 4・がん性腹膜炎の症例
 5・気管内転移例
 6・分子標的治療との併用例
17.腫瘍による免疫抑制機構
 1・がんと免疫の相互関係
 2・免疫抑制メカニズム
 3・まとめ
18.免疫細胞療法の効果判定
19.これからの免疫療法の方向性
 1・多様性(heterogeneous)のあるeffecter cellや抗体
 2・免疫抑制シグナル、制御性細胞(regulatory cell)の抑制
 3・化学療法、放射線療法、手術療法との併用
 4・分子標的治療との併用
 5・まとめ 


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