実践 リウマチ肺障害の診療


−実際の症例に基づく胸部X線画像読影診断のポイント−




著 者
編 集
田中 良哉 産業医科大学医学部第1内科学講座 教授
迎   寛 産業医科大学医学部呼吸器内科学講座 教授
発行年
2011年3月
分 類
膠原病・リウマチ/呼吸器一般
仕 様
A4判・124頁・35図・写真80点・15表
定 価
(本体 3,200円+税)
ISBN
978-4-8159-1878-1
特 色 
●関節リウマチ(RA)に合併する肺障害リスクマネージメントのエッセンスがすべてここに入っている!●
 生物学的製剤の台頭により,関節リウマチ(RA)の治療目標は関節痛や腫脹の改善から,臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解へと変革し,関節破壊や機能障害の制御が可能となってきた.
 しかし,RAは自己免疫異常に起因する多臓器障害を伴い,とくに肺障害は半数以上の患者が有する疾患であり,なかでも間質性肺炎は高頻度で,治療の選択次第で患者の生命予後を決する重要な合併症である.
 本書では,RA合併の肺障害に対する薬物治療のエッセンスを凝縮し,速やかな診断,早期治療への対応,そして抗リウマチ薬や生物学的製剤を使用するうえでのリスクマネジメントをわかりやすく解説.RAに合併する肺障害の読影診断のポイントを,実際の症例に基づく胸部X線画像を豊富に提示することで,見て視て診る方式により丁寧に解説する.
 治療適応・効果判定から,リスク管理,併発症の管理と治療まで,レベルの高いRA治療を実践するための決定版である.

● はじめに●

 関節リウマチ(RA)は,日本では約70万人の患者数を数え,30〜50歳代の女性に好発し,全身の関節滑膜炎を主病変とする.病態形成には自己免疫異常が関与し,発熱,倦怠感,皮下結節,間質性肺炎などの関節外障害を併発する全身性自己免疫疾患(膠原病)である.RA は,発症早期から関節破壊の進行による身体機能障害を伴う免疫難病とされてきた.しかし,生物学的製剤の台頭により,治療目標は関節痛や腫脹の改善から,臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解へと変革し,関節破壊や機能障害の制御が可能となってきた.
 RA は,自己免疫異常に起因する多臓器障害を伴い,とくに半数以上の患者が何らかの肺障害を有する.RA に伴う肺障害には,間質性肺炎・肺線維症,胸膜炎,肺胞出血,肺梗塞等があげられる.RA の疾患活動性に伴って発症,増悪し,しばしば生命予後を決するために,速やかな診断,早期治療が要求される.また,細菌性肺炎などの感染症,ニューモシスティス肺炎などの日和見感染症,さらに薬剤性肺炎との鑑別診断が重要である.
 ことに,間質性肺炎は高頻度で,治療の選択次第で生命予後を決する.そのためにも,まずは間質性肺炎の原因を明らかにすることが必要である.その大部分は RA に伴う間質性肺炎であり,原病の十分な疾患制御が必要である.次に,感染症,日和見感染症との鑑別が重要であるが,臨床症候,経過を把握すれば,困難でない場合が多い.一方,抗リウマチ薬や生物学的製剤による間質性肺炎は,実際はきわめてまれであるという現状認識が重要である.診察や精査,考察を十分にせずに,不明なときには薬剤のせいにしてしまう医師は決して少なくはない.
 新規治療が導入されて治療目標が高まるにつれ,よりレベルの高い適正医療が要求されるようになってきた.リウマチ専門医には,治療の適応,目標設定,効果判定などを常時評価すると同時に,リスク評価と管理,併発症の管理と治療を徹底することが求められている.ここでは,実際の症例に基づく胸部 X 線の読影診断のポイントをわかりやすく示し,リウマチ肺障害,リウマチ診療の実践に役立てていただくべく編集を行った.産業医科大学呼吸器内科学 迎 寛 教授、同・第一内科学 齋藤和義 准教授,同・平田信太郎 助教 には厚く御礼を申し上げる.不幸な転機を迎える患者を一人でも減らし,普通に楽しく暮らせる患者を一人でも増やすという熱い思いを寄せあって作成したつもりである.

平成23年2月 田中 良哉

■ 主要目次

● 第1章 ● 解 説 編

I.関節リウマチ概論
1.概   論
2.臨床症候
3.診   断
4.関節外障害
5.関節リウマチ(RA)に伴う肺障害
6.関節リウマチ(RA)の治療概論

II .関節リウマチ患者の呼吸器合併症で最も頻度が高い間質性肺疾患
1.分類と特徴
2.画像所見(単純胸部X線・CT・HRCT画像)
 1)通常型間質性肺炎(UIP)
 2)非特異性間質性肺炎(NSIP)
 3)器質化肺炎(OP)
 4)びまん性肺胞障害(DAD)
 5)離性間質性肺炎(DIP),リンパ球性間質性肺炎(LIP)
3.病理所見
4.治療と予後

III .気道病変
  1.閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans;BO)
  2.濾胞性細気管支炎(follicular bronchiolitis;FB)
  3.びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis;DPB)様疾患
  4.気管支拡張症

IV.リウマチ治療に関連する二次性呼吸器合併症
1.薬剤性肺障害
 1) メトトレキサート(MTX)処方症例
 2)ブシラミン処方症例
 3)金製剤処方症例
 4)レフルノミド処方症例
 5)生物学的製剤処方症例
2.呼吸器感染症
 1)ニューモシスティス肺炎(PCP)
 2)肺 結 核
 3)非結核性抗酸菌症
 4)真 菌 症
   5)サイトメガロウイルス(CMV)肺 炎

● 第2章 ● 症 例 編

症例 1 関節リウマチに伴う典型的な間質性肺炎(リウマチ肺)の1例
症例 2 関節リウマチに伴う特発性器質化肺炎の1例
症例 3 関節リウマチに伴う非特異性間質性肺炎の1例
症例 4 関節リウマチに伴う胸膜炎の1例
症例 5 関節リウマチにびまん性汎細気管支炎様病変を併発した1例
症例 6 メトトレキサート(MTX)中止により間質性肺炎が増悪した関節リウマチの1例
症例 7 関節リウマチと間質性肺炎を伴う混合性結合組織病(MCTD)を併発した1例
症例 8 関節リウマチに細菌性肺炎を伴い,抗菌薬が奏効した1例
症例 9 関節リウマチにニューモシスティス肺炎を発症し,ST合剤が奏効した1例
症例10 関節リウマチにニューモシスティス肺炎を発症し,ST合剤が奏効した1例
症例11 陳旧性肺結核を有する疾患活動性の高い関節リウマチにイソニアジド予防投与下に生物学的製剤を使用した1例
症例12 メトトレキサート(MTX)による薬剤性肺炎を併発した関節リウマチの1例

● 第3章 ● リスクマネジメント編

I.メトトレキサート(MTX)使用におけるリスクマネジメント
1.関節リウマチ(RA)におけるメトトレキサート(MTX)治療の有用性
 1)メトトレキサート(MTX)の作用機序とその特徴
 2)関節リウマチ(RA)におけるメトトレキサート(MTX)治療の実際
 3)関節リウマチ(RA)治療における位置づけ−なぜメトトレキサート
 (MTX)をうまく使うことが重要なのか−
2.メトトレキサート(MTX)による副作用の実態
 1)メトトレキサート(MTX)の重篤な有害事象
 2)メトトレキサート(MTX)呼吸器障害
3.メトトレキサート(MTX)を上手に使うために(原則編)
 1)メトトレキサート(MTX)の効果を最大限に引き出すための使用原則
 2)メトトレキサート(MTX)を安全に使いこなすための使用原則
4.メトトレキサート(MTX)の上手な使用法(実践編:開始から経過観察の実際)
 1)メトトレキサート(MTX)開始前に考慮すること
 2)メトトレキサート(MTX)開始中に実施すること
 3)本邦におけるメトトレキサート(MTX)治療の将来と
 リスクマネジメント
II.生物学的製剤使用におけるリスクマネジメント
1.生物学的製剤が関節リウマチ(RA)にもたらしたもの
2.生物学的製剤の肺障害
 1)細菌性肺炎
 2)抗酸菌感染症
 3)ニューモシスティス肺炎
 4)間質性肺炎
 5)生物学的製剤使用中の咳嗽,発熱,呼吸困難の鑑別フローチャート

付録. 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン(簡易版) 


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