年寄りの健康,病気,介護がわかる



老年学のはなし




著 者
著:田村 康二
 悠遊健康村病院・介護老人保健施設悠遊苑・山梨医科大学名誉教授
発行年
2011年5月
分 類
内科学一般/臨床看護・成人看護・老人看護
仕 様
A5判・328頁・18図・46表
定 価
(本体 2,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1881-1
特 色 
 高齢化社会の山積する問題の解決には,まず経済的問題が壁となっている.それにはお年寄りが生産的で極力納税者であれば,何の問題もないのではないか.しかも,70歳を過ぎたお年寄りの70%は達者である.つまり,老年医学の目指すところは,プロダクティブエージングとしてこのお年寄り達を極力納税者であるように努めることだ.
 本書は,著者の長年の経験と知識をもとに,『老年学のはなし』という読み物のかたちをとりながら,現在の高齢者の健康,病気,介護の本当の姿をあらわし,お年寄りを診る医師へ高齢者医療に対する意識革新の必要性を説いた好著である.

●序   文●

￿￿[一生富士山に“お前いい絵描くな”なんて言われないんだろうと思うの。だから死ぬまで描きたいと思うんですね](片岡珠子,100歳・文化勲章受章者)

 彼女が百寿記念にと描いた鮮やかな色彩とその絶妙な組み合わせ、爆発する生命力が溢れ出る「めでたき富士」を眺めていると、年寄りも生きていくエネルギーをもらえる。近年は70歳を超す年寄りの数だけではなくて、質も、この画伯が示すように躍動するようになってきた。100歳まで老いたからといって、誰もが病気になるわけではない。年寄りの機能を解明しているのが老年学だ。年寄りを診る医師の機能の革新が必要である。老年医学の目指すところは、年寄りを極力納税者であるように努めることだ。高齢化社会の山積する問題を解決するには、まず経済的問題が壁となっている。しかし高齢化社会では年寄りが生産的であれば、何の問題もなかろう。
 誰もがやがて老いる。しかし70歳を過ぎた年寄りの70%は達者だ。この達者な年寄りとはどういう生物か? どのように社会と接して生産的に暮らし働いているのか? 一方虚弱な年寄りをどう支援するか? 不幸にして病を得た年寄りをどう治しリハビリで社会復帰させるのか? 彼らをどうやって納税者にできるのか? それらの答えを長年にわたる経験と知識をもとにして『老年学のはなし』という読み物として世に送りたい。

 平成23年5月吉日
 田村康二

■ 主要目次

第1話 ■年寄りがわかる
【■1】 年寄りの生きざま
【■2】 年寄りとは?
【■4】 年寄りの診察では、老医は少なくとも話し相手になれる

第2話 ■「老いの神話」から「老いの実り」へと変革する
【■1】 世間の思っている老いとは虚構だ。もはや神話だ
【■2】 老いは、全世代がかかわる社会の開発と経済とにかかわる課題だ
【■3】 誕生日ケーキに100本のローソクを立てるのは、もはや難しくない
【■4】 百寿者の寝たきりを減らす方策
【■5】 百寿者の主な死因は感染症、その背景疾患は非感染症だ
【■6】 年寄りは粗食では長生きしない
【■7】 医師にして仁・百歳現役なれば、神に近し

第3話 ■年寄りを尊敬するか、やっかい者にするか? それらは互いの鏡像だ
【■1】 年寄りを扱うには2種類ある
【■2】 年寄りへの肯定的な差別と事実
【■3】 年寄りへの否定的な差別と事実

第4話 ■自立して暮らす気楽さと不安、のけ者になるのを恐れる
【■1】 年寄りの孤独は問題だ
【■2】 貴族だろうと平民だろうと、子どもはいらない
【■3】 年寄りの自立に先立つもの、それは情報とお金と健康だ
【■4】 医師の役割は年寄りの自立性を保たせることにある
【■5】 金銭の管理をしっかりとする
【■6】 車は年寄りのものだ。それができないとなると…
【■7】 いずれ1人暮らしはできなくなる

第5話 ■何がどうしてこうなったからこうすると言われても
【■1】 予防に金と時間をケチるな
【■2】 個人衛生に人はなぜケチるのか?
【■3】 医者ともあろう者が、酒を飲むとは何事だ
【■4】 80歳で歯20本は長寿の印
【■5】 適当な全身運動に1ドル投資すれば、3.2ドルも医療費が節約できる
【■6】 腰痛は看護・介護の職業病ではない。日頃が大事だ
【■7】 「年寄りの冷や水」は、脳にも身体にも効く
【■8】 「見守り」は危険がつきもの
【■9】 骨、関節そして筋肉が脆くなる
【■10】 転倒・転落は一大事
【■11】 年寄りの婚姻
【■12】 小便が近くて間に合わず漏らしてしまう。しかも便秘がちだ

第6話 ■年寄りは夢がある 希望がある そして持病がある〜♪
【■1】 今の75歳は100年前の65歳と同じだ
【■2】 年寄りの病気を診ると、その人の生きざまがみえてくる
【■3】 年寄りを正しく診断し適切な治療をすることは難しい
【■4】 老いのライフスタイルと環境を考える
【■5】 人口問題は医学の最大の難問だ
【■6】 虚弱な年寄りのQOLには質の高いケア施設が必要だ
【■7】 年寄り患者によい体位・悪い体位
【■8】 心筋梗塞や脳卒中を疑ったら救急車で「心筋梗塞・脳卒中センター」へ搬送する
【■9】 「どうしよう、この痛み!」
【■10】 安易に静脈点滴、経管栄養、胃瘻などをすべきでない
【■11】 年寄りの胃食道逆流症・嘔吐に注意する
【■12】 老化で特殊感覚は低下し障害される
【■13】 年寄りへの薬物療法のエビデンスは不十分だ。しかし徐々に改善されている
【■14】 年寄りには使用を避けることが望ましい薬がある
【■15】 老化による衰えをテクノロジーで補う
【■16】 死ぬのは仕方がないが、苦しみたくない

第7話 ■認知症と言われたくない
【■1】 認知症の診断には決め手がない
【■2】 認知障害の症状はさまざま

第8話 ■年寄りの戸惑い
【■1】 年寄りはことごとに戸惑う
【■2】 年寄りのうつ病
【■3】 声かけはドレミファ…の「ソ」の音階でする
【■4】 睡眠障害は精神障害のはじめかも知れない
【■5】 勘違い・物忘れ、せん妄、妄想・幻覚
【■6】 老いの自殺
 
第9話 ■年寄りの思い込みと周りの思いが違うとき
【■1】 年寄りの思い込みによる行動
【■2】 年寄りのする閉じこもり
【■3】 介護保険は本人の生活を支えるようにはできていない
 
第10話 ■ケアとは年寄りの機能を 高めることだ
【■1】 認知症への不安を、誰もが抱いている
【■2】 在宅医療は入院・外来に次ぐ第三の医療だ

第11話 ■病める年寄りは、わが身の鏡
【■1】 老化による身体の脆さを忘れない
【■2】 働けば健康を保てる。健康なら生産的になり得る
【■3】 生きざまを変えてゆく
【■4】 アルツハイマー病に怯える。では生きざまを変えよう
【■5】 全身運動を日頃からする
【■6】 食べて何をするか?
【■7】 室内の照明は明るくする
【■8】 熟眠する
【■9】 禁酒・禁煙
【■10】 新しいスキルを始めよう
【■11】 薬を飲む


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