よくわかって役に立つ 認知症のすべて 

改訂第3版


著 者
編集:
平井 俊策(群馬大学名誉教授・財団法人老年病研究所附属病院名誉院長)
発行年
2011年7月
分 類
内科学一般・老人医学
仕 様
B5判・384頁・102図・写真56点・103表
定 価
(本体 8,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1886-6
特 色 
 本書は,認知症の最新情報を分かりやすく提供し認知症学のスタンダードとして支持を得てきた.第2版から6年,認知症における,分類面,診断面,治療面,薬物療法,など認知症のあらゆる分野のup-dateな情報をさらに充実させて改訂3版として内容を一新して登場.学問的にも, 実地診療でも,介護の指針書としても.必ず役立つ一冊である.

●改訂第3版 序文●

￿ 本書が最初に出版されたのは11年前、そして第2版が出てから6年がはや経過した。この間にこの領域では多くの点で着実な進歩がみられている。まず用語の面で「痴呆」という言葉が使われなくなり「認知症」という言葉がすっかり定着した。この言葉は「痴呆」という言葉に差別用語的ニュアンスがあるため厚生労働省がそれに代わる言葉として委員会を設けて行政用語として用いることにした言葉である。第2版が出版された当時から既に使われていたものではあるが、専門の学会で正式に決めた学術用語ではないため、これを学術用語として用いることに当時は学会でかなりの異論があった。このためにこれを用いることは時期尚早であると考えて第2版では従来の「痴呆」という言葉のまま使用した。しかし、その後「認知症」という言葉が専門学会でも使われるようになったためにこの版からは「認知症」という言葉に改めることにした。
 次に分類面ではまず非アルツハイマー型変性性認知症も新しい知見に基づいて書き換えられている。DSM─Vへの改訂作業も進められているが、これはまだ残念ながら最終案の段階にはない。診断面では特にアミロイド画像についてさまざまな試みが行われ、治療面においても新しいワクチン療法が出現しつつあるし、薬物療法の面でも新しい進歩がみられている。その他すべての分野でさまざまな進歩・改良がみられている。第3版では現時点におけるこれらの進歩が記載されている。
 本書は実地に役立ってわかりやすく、しかも内容が学問的にも充実していてup─dateな情報が得られるということを基本的なコンセプトとして発刊された書物であるが、この基本的なコンセプトはこの版でも同様である。内容を一新したこの第3版が第2版と同様に「認知症」の診療・介護に従事される医師、コメディカルの皆様に広く利用され、お役に立つことができれば幸いである。

 平井俊策

■ 主要目次


1 認知症とは何か
認知症とは
大脳の器質性疾患のいずれも原因となる
認知症の臨床的な特徴
どのレベルの認知機能障害から認知症と呼ぶか
臨床的診断名と原因疾患の診断名について
認知症の診断の手順
まとめ

2 認知症はどのような病気で起こるか
DSM─Wによる認知症性疾患
ICD─10による認知症性疾患
認知症を示す疾患と、その有病率・認知症化率
初老期認知症の原因
老年期認知症の疫学調査
認知症の臨床病理研究
主要な認知症性疾患

3 認知症と間違えられやすい状態
良性老人性物忘れと加齢に伴う記憶障害
軽度の意識障害
うつ病性仮性認知症
薬物・アルコールによる認知症様状態
生来性の知能発達障害
神経心理学的徴候

4 認知症の前駆状態とMCI
MCIの概念とEBM
MCIの診断における客観的マーカーの信頼性の比較
アルツハイマー病に進行しないで安定した経過をたどるMCI

5 認知症に伴う精神症状と行動異常
認知症でみられる精神病理学的症状および症候群
アルツハイマー型認知症の非認知症状管理

6 認知症はどのくらい多いか─有病率、認知症高齢者数を中心に
調査方法
1990年以前の認知症の有病率
認知症高齢者数とその将来推計
精神科病院における認知症患者数
その他の施設における認知症高齢者数
近年(1990年以降)の認知症の有病率
血管性認知症とアルツハイマー型認知症の割合

7 認知症の診断はどのように進められるか
臨床症状の捉え方
認知症の診断(1)─せん妄およびうつ状態との鑑別
認知症の診断(2)─健常者にもみられる記憶力低下との鑑別およびアルツハイマー型認知症の早期診断
改訂作業中のDSM─V─認知症関連working groupからの提案

8 認知症の評価にはどのようなスケールが使われるか
認知機能障害を測定するための尺度
日常生活動作能力(ADL)を測るスケール
認知症の行動の障害を測るスケール

9−A 認知症の画像診断─ルーチンな画像診断を中心に
血管性認知症
アルツハイマー型認知症
非アルツハイマー型変性性認知症
治療可能な認知症

9−B 認知症の画像診断─脳アミロイドの画像化
認知症診療におけるアミロイドイメージングの役割
PiBを用いたアミロイドイメージング
PiB以外のPETプローブ

10 アルツハイマー病の診断マーカー
CSF Aβ42
CSF total tau(t─tau)
CSF Aβ42とtau
CSF phosphated tau(p─tau)
MCIからAD発症の予測に関するCSFバイオマーカーの有用性
危険因子としての血漿Aβ40、Aβ42

11 認知症高齢者のケア
認知症高齢者の理解
好ましい接し方
日常生活への援助
行動・心理症状(BPSD)

12 認知症への社会的対策にはどのようなものがあるか
社会的対策─その内容と問題
人材の養成
研 究
認知症の人と家族の会

13 認知症と介護保険
介護保険とはどのような制度なのか
介護保険制度における医師の役割
居宅療養管理指導とは

14 認知症の家族介護者への対応と支援
家族介護者の実態
介護負担の要因と対応
在宅介護への支援

15 認知症高齢者の人権
人権侵害の内容
人権の内容
人権保障の仕組み

16−A 認知症の薬物療法 対症的薬物療法の実際
認知症の対症療法とは
対症療法の実際

16−B 認知症の薬物療法 抗認知症薬開発の現状
抗認知症薬の概念
認知症の治療目標と薬物療法の意義
抗認知症薬開発の流れ─対症療法から根本的治療法の追求
海外・国内で使用されているアルツハイマー病に対する症状改善薬
アルツハイマー病に対する症状改善薬の開発
アルツハイマー病に対する根本的治療薬の開発

16−C 認知症の薬物療法 アルツハイマー病のワクチン療法の試み
アルツハイマー病のワクチン療法の発明
ヒトでの治験
AN─1792ワクチンによる脳炎
AN─1792ワクチンの臨床効果
AN─1792ワクチンから学んだこと
受動免疫ワクチン
開発中の能動免疫ワクチン

17 認知症のリハビリテーション─経時的アプローチ
リハビリテーションの特徴
リハビリテーションの技法(非薬物療法)
経時的アプローチ
リハビリテーションの効果と課題
認知症の病型別リハビリテーション(メンタルケア)の視点

18 認知症の予防はどこまで可能か
血管性認知症
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

19 アルツハイマー病とは─最近の知見から
アルツハイマー病の概念の変化
アルツハイマー病のアミロイド・カスケード仮説
アポリポ蛋白E4
プレセニリン
タウ蛋白アイソマーと神経変性
リン酸化タウと神経細胞変性

20 血管性認知症とは─最近の知見も含めて
血管性認知症は皮質下性認知症
皮質下性認知症とは
血管性認知症の「認知症」の定義
血管性認知症の分類と病態
血管性認知症の発生頻度
血管性認知症の早期診断のポイント
画像診断(CT、MRI)
脳循環代謝
血管性認知症の経過
血管性認知症の予後
治療・看護と日常生活管理の注意点

21 非アルツハイマー型変性性認知症
非アルツハイマー型変性性認知症とは
α─シヌクレイノパチー
タウオパチー
TDP─43プロテイノパチー
FUSプロテイノパチー
その他

22 治療の容易な認知症
治療の容易な認知症とは
認知症と一過性せん妄
治療の容易な認知症に含まれる疾患
治療の容易な認知症
厳密には認知症ではないが、認知機能が改善できる疾患


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