実践 小児脳波入門 改訂第2版
日常診療に役立つ脳波アトラス

※品切れ, 改訂第3版が発売されております
著 者
前垣 義弘(鳥取大学医学部脳神経小児科 准教授) 著
発行年
2012年4月
分 類
小児科学一般
仕 様
A4判・191頁・189図・7表
定 価
(本体 6,200円+税)
ISBN
978-4-8159-1897-2
特 色 
 初版では,実物の脳波とのギャップを感じさせない実物大脳波を同一の脳波モンタージュで提示し詳述.とくに,専門医ではない小児科医,研修医,医学生を対象に,難解と思われがちな小児脳波について,日常診療でこれだけ知っておけば十分であろう必要な脳波所見に絞って詳述し好評を得た.
 今回の改訂では,国際てんかん分類の変遷,本邦におけるてんかん診断・治療ガイドラインの内容に準拠して記述を加筆・修正,さらにデジタル脳波計の使い方とピットフォール,判読法を追加して,脳波を正しく判読する基本的事項から,さらにステップアップできるように対応した内容となっている.
 わかりやすく実際的な内容で本書を読むことによって,脳波解読の基本的な考え方や診断・治療から,最新の診断ガイドライン・デジタル脳波計の使い方について力となってくれる.

■ 改訂第2版 はじめに ■

 本書は平成19年の出版以来、著者の予想をはるかに超えて広く読まれているようです。初版から既に5年が経ち、この間に国際てんかん分類の変遷(当面1989年のILAE国際分類を用いる)や本邦におけるてんかん診断・治療ガイドライン[日本てんかん学会HPおよび日本神経学会HP]の作成が行われました。これらの事項を加筆・修正するとともに、デジタル脳波計の使い方を是非盛り込みたいと考えたのが今回の改定の経緯です。本書に紹介している脳波のほとんどは、デジタル保存された脳波を判読しやすいように条件を変更し、紙(アナログ)脳波に近い形に再表示したものです。オーダーした脳波がすべてこのようなきれいに記録された脳波でないことは当然です。記録中に体動や発汗で基線が大きく揺れて、判読しにくい部分があることは避けられません。紙脳波を読んでいて、記録中に1ヵ所しかない異常脳波がアーチファクトに隠れている場合や、尖った波をどう判断してよいかわからない場合など、悩むことがしばしばです。そのような場合、私は今でも脳波室に行ってデジタル保存された脳波を再表示して判断しています。それらはてんかん性異常波である場合もあるし、生理的な波である場合やアーチファクトのこともあります。デジタル脳波計はとても便利です。紙(アナログ)脳波の記録条件を正しく理解していれば、デジタル脳波の操作は十分可能です。初版においては、紙に書き出された脳波を正しく判読することに主眼をおいたため、脳波記録条件の項目は省略しました。しかしデジタル脳波計が普及した今日、ある程度脳波判読できるようになった次のステップアップにデジタル脳波計の操作・判読が必要であると感じるようになりました。操作するキーは限られており、原理を知っていれば難しいことではありませんので、是非tryしてみてください。

本書の主な改訂点
  I  デジタル脳波計の使い方とピットフォール、判読法を追加
 II  てんかん治療ガイドラインに準拠して記述を加筆修正


 自分で電極を装着して脳波記録ができるようになると、けいれん重積患者を診療した際に発作が完全に抑止できたかどうかの判断や、急性脳症の疑いがあるかどうかの判断を救急外来や病室でいつでもできるようになります。短期間でも小児神経科研修認定施設で研修すると電極装着・脳波計の操作・判読ができるようになります。日常的な診療ですので後期研修の一部に含めるのもよいと思います。本著のデジタル脳波の項目は、平成23年の鳥取大学小児神経学入門講座(http://www.med.tottori-u.ac.jp/nousho/)のレクチャー(実習)のために作成したものをもとにしています。皆さんのスキルアップに役立てれば幸いです。最後に、デジタル脳波の稿にコメントを頂きました中村和幸先生、西村洋子先生、近藤典子先生、白井謙太朗先生、そして何よりこれまで出会った多くの患者さん方に心より感謝申し上げます。

 平成24年4月吉日
 前垣 義弘

■ 主要目次

● 用 語

I 小児の発作性疾患と脳波

1.小児発作性疾患
2.てんかん診断における脳波の役割
3.てんかんの経過と脳波変化
4.熱性けいれんと急性脳症
5.てんかんと間違われやすい発作性疾患
6.病的意義のない脳波異常

II 脳波の基本的事項

1.電極配置と名称:10-20電極法
2.脳波導出法
3.脳波の要素
4.脳波異常

III 正常脳波

1.覚醒—睡眠サイクルと脳波:各stageで見られる脳波所見
2.年齢ごとの正常脳波
3.賦活脳波

IV 頻度の高い小児てんかんと急性脳症の脳波

1.中心側頭部に棘波を示す良性小児てんかん(BECTS、ローランドてんかん)
2.後頭部に突発波をもつ小児てんかん(CEOP)
3.欠神てんかん
4.点頭てんかん(West症候群、infantile spasms)
5.細分類不能の局在関連性てんかんと内側側頭葉てんかん
6.急性脳症・脳炎と熱性けいれん重積

V てんかん性異常波と間違えやすいnormal variant

1.熱性けいれん児に見られる非定型棘徐波(pseudo petit mal)
2.6Hz棘徐波複合(phantom spike)
3.6Hz陽性棘波、14Hz陽性棘波(14 & 6Hz陽性棘波)

VI よく見るアーチファクトと耳朶電極の活性化

VII 脳波記録時の心電図からわかること

1.不整脈や心伝導障害
2.脳波に混入した心電図や脈波の鑑別
3.体動やミオクローヌス

VIII デジタル脳波計の使い方

1.デジタル脳波とは
2.脳波設定条件
3.演習


参考1●瘤波とK複合波
参考2●睡眠導入剤の使用
参考3●BECTS関連疾患
参考4●後頭部突発波とPOSTS
参考5●不随意運動のミオクローヌスとミオクロニー発作
参考6●脳波オーダーのポイント
参考7●脳波レポートの1例
参考8●脳波の縮尺

診療のポイント1●初発発作の解釈と治療
診療のポイント2●てんかん治療における脳波検査の意味
診療のポイント3●発作症状からてんかん症候群を推定するポイント

付 録 脳波スケール


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