救急実践アドバンス 解剖・生理・病態から治療まで


著 者
編著
阿南 英明(藤沢市民病院救命救急センター センター長)
発行年
2012年6月
分 類
救命・救急医学
仕 様
A5判・634頁
定 価
(本体 8,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1900-9
特 色 
 救急医は専門領域に関係なく軽症から重症に至るまでさまざまな患者に対応した診療能力が求められる.そのニーズに応じて七変化できる懐の広さが救急医の醍醐味であろう.
 本書は,その特徴ともいえる解剖・生理・生化学レベルでの解説に加え,図や写真を多く盛り込んだこれまでの類書にない硬派な救急医療の実践ハンドブックである.オールマイティーになんでもこなす器用な救急医になるために,また,不得意な部分があったり,今後新たに守備範囲を広げたいと思う救急医にとって必携書である.

■ 序文—あらゆる疾病・外傷に対応できる能力を身につけるために— ■

 従来から多発外傷や中毒、ショックなどの重症患者に対応する救命救急医がわが国の救急医療を支えてきた歴史がある。一方、救急外来で重症度、診療領域に因らず、あらゆる患者に対応する救急医療のスタイルがカナダや米国を中心に世界的に普及している。わが国にもその波は確実に押し寄せ、救急外来を主な仕事の場として、あらゆる病態、疾病、外傷に対応する技能を発揮するER型救急医と呼ばれる医師たちが増えてきた。日本救急医学会の中においても「今後、救急医はどうあるべきか」についてさまざまな議論がなされている。
 いずれにせよ、医師不足のあおりで救急患者受け入れ施設が減少している現状を打破するためには、今後救急医は重症患者対応だけで済まされない。専門領域に関係なく救急外来(ER)を訪れるさまざまな患者の対応をすることが求められ、軽症から重症に至るまで診療できる能力の育成が必要だと考える。しかし、注意すべきなのは、初期対応だけして各専門診療科に引き渡すだけの「振り分け」だけをしていたら“それは医師の仕事ではなく看護師にもできる仕事だ!”となるし、救急医はいつまでたっても一人前のプロフェッショナルとして扱われない。そのためには、救急外来は救急科の外来であるというプライドをもち、とことん診断できるものは診断し、処置治療も可能なだけ行う姿勢が必要である。さらに、旧来から重症患者対応を得意としてきたわが国の救急医の強みを引き出して、ER診療だけでなくその後の継続診療まで携わる意気込みが必要である。たとえER診療が終了して専門診療科医師に引き継いでも、目の前の患者がその後どうなっていくのかを十分に知り継続的診療ができるように修練する必要がある。
 現状のわが国の救急医は所属する施設によってその診療形態、守備範囲はさまざまである。ERだけで活躍する場合も、集中治療室や病室で継続的な診療をする場合もある。いずれも救急医にとって大切な職域なので、ニーズに応じて七変化できる懐の広さが救急医の醍醐味なのではないだろうか。オールマイティーになんでもこなす器用な救急医だからこそ本書の使い道があると考える。自分の得意なところは他の専門書で、さらに知識と見識を深めて頂ければよい。しかし、不得意なところであったり、今後新たに守備範囲を広げたいと思う救急医に喜ばれる書でありたいと思う。本書は単なるマニュアル本にしたくはない。極力簡潔に解剖・生理・生化学レベルでの解説を入れて、原理・原則を理解して頂くことを望む。そうした理解が十人十色の救急患者対応の応用能力を身につけることにつながると考えている。
 平成24年6月吉日
 阿南 英明

■目次■

I 救急診療の考え方

II 救急医として知っておきたい生理・生化学

III 症侯
1.呼吸困難
2.咳・痰
3.咽頭痛
4.ショック
5.意識障害
6.頭痛(顔面・眼痛)
7.めまい
8.痙攣
9.麻痺(運動・感覚)
10.動悸
11.胸痛
12.腹痛
13.陰部・陰嚢の痛み
14.排便異常
15.悪心・嘔吐
16.黄疸
17.発熱
18.尿の異常
19.吐血・下血・喀血
20.腰痛
21.関節痛
22.皮膚異常(痒み、皮疹)
23.後頸部痛

IV 外傷(多発・全身性、局部):小外傷の対処を中心に
1.外傷初期診療の見方
2.創部処置基本ルール
3.頭部損傷
4.顔面損傷
5.胸部損傷
6.腹部損傷
7.脊髄損傷
8.四肢・骨盤外傷
9.熱傷

V その他
1.電解質異常
2.耳鼻咽喉科疾患
3.眼疾患
4.産科疾患

VI 抗菌薬の選択基本ルール
1 総論
2 抗菌薬の各論
3 まとめ

VII Sepsis

VIII 緊急輸血

IX 脳死と臓器移植
1 脳死
2 法に基づく脳死判定
3 臓器移植

X 高齢者対応の特性

XI 環境性体温異常
1 偶発低体温
2 熱中症

XII  脳低温療法・低体温療法—心肺停止患者の場合

XIII  急性中毒

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