小児ICUマニュアル 改訂第6版

※改訂第7版が発売されております
著 者
総合編著:
 志馬 伸朗(独立行政法人国立病院機構京都医療センター救命救急科 医長)
編 著:
 橋本  悟(京都府立医科大学集中治療部 教授・部長)
 問田 千晶(国立成育医療研究センター集中治療科)
発行年
2012年9月
分 類
集中治療医学(ICU/CCU) 小児外科学 小児科学一般
仕 様
B6判・394頁
定 価
(本体 6,200円+税)
ISBN
978-4-8159-1901-6
特 色 
 初版から20年を越え,ICUや小児外科の現場で確かな支持を得てきた,小児特有の周術期管理のエッセンスを図表を中心に簡明にまとめたマニュアルの改訂第6版.
 小児集中治療医学はこの20年,その質・量ともに著しい発展を遂げた.
 地道に改訂を重ねてきた本書も,この急激な発展への追随をはかるべく,今回の改訂では臨床現場で働く若き小児集中治療医達の実践的な助言を受け,内容の充足に努めた.内容とともにデザインも大幅な改訂となり,蓄積された高水準の内容はさらに磨きがかけられている.
 専門医のみならず,PICUを目指す方々や小児科医,麻酔指導医・救急指導医の認定医を目指す方々,看護スタッフの方々には必携書である.次の20年へ,小児集中治療の現場で必ず役立つ指針書である.

■ 改訂第6版序 ■

 小児ICUマニュアルが上梓されてから,20年を超える歳月が経過し,このたび第6版の改訂を迎えることとなった.20数年前,筆者は医師として研修を始めたばかりであり,小児集中治療,あるいは小児集中治療室(PICU)という概念はまだ広く認知されていなかった.初版編著者である橋本悟(現・京都府立医科大学集中治療部教授)と,佐和貞治(現・京都府立医科大学麻酔科学教室教授)のお二人が,今はなき小さなこども病院集中治療室の片隅で,ゲラ版を片手に奮闘されておられた姿を,つい昨日のように思い出す.
 この20年,医療は変化した.未開であった小児集中治療という分野においても,宮坂勝之,田村正徳,羽鳥文麿,阪井裕一(所属・敬称略)といった先駆者達が,この分野の成功的発展に尽力されてきた.その結果,多くの若き医師達がこの専門分野に学び,そしていくつかの世界に比肩するPICUがわが国で生まれた.医学生は,PALSのPは,PICUのPですね?と答えるようになった.
 全国に広がる小児集中治療分野で,本書が現場で遍く利用されていることを目にしてきた.本書は,インターネット全盛の時代においてなお,ナースステーションや当直室の片隅に,ぼろぼろになりながらひっそりと生き延びていた.著者にとっては望外の喜びであった.
 一方で,小児集中治療医学もまた,その質・量ともに著しい発展を遂げた.版を重ねるごとに,この発展への追随の困難性を感じるようになった.したがって,今回の改訂では,成育医療研究センターの臨床現場で働く若き小児集中治療医達の実践的な助言を受け,内容の充足に努めた.成育医療研究センター集中治療科中川聡,六車崇両名の協力あってのことである.
 それでも内容は十分ではない.不十分な記載や偏りに是正すべき点が残っていることは否めない.一方で,これが限界であろうとも思う.本書は本書としての役割を機能し,これを補完する詳細で教科書的な書物が日本で生まれることが,今後の課題と思われる.
 今回は,最後の改訂という思いで,内容・デザインともに大幅な改訂とした.次の20年の世代に引き継ぎたい.

 冠雪が映える比叡山を眺めながら
 2012年2月
 志 馬 伸 朗

■目次■

●第1章 循環の管理

I.心 肺 蘇 生
 1 小児の心停止に至る経路
 2 小児の心肺不全
 3 小児の心肺蘇生
 4 蘇生時に使用する薬剤
II.シ ョ ッ ク
 1 ショックの定義
 2 ショックの分類
 3 診断
 4 治療
III.心 不 全
 1 心不全の評価
 2 心不全の治療
IV.不 整 脈
 1 頻拍性不整脈の治療
 2 徐脈性不整脈の治療
 3 抗不整脈薬の種類と用法
V.先天性心疾患の循環管理
 1 先天性心疾患の内科的治療
 2 先天性心疾患の術後管理
VI.機械的循環処置
 1 ペーシング
 2 電気的除細動
 3 IABP
 4 体外式心肺補助
VII.酸素代謝・その他の計算式等
 1 酸素代謝
 2 その他の計算式

●第2章 呼吸の管理

I.呼吸窮迫・呼吸不全の診断
 1 呼吸窮迫・呼吸不全の診断
 2 新生児呼吸障害の重症度判定
 3 急性肺損傷の診断
I I.酸素療法と人工呼吸
 1 酸素療法
 2 気道確保
 3 機械的人工呼吸法
 4 人工呼吸器
 5 体位排痰法
I I I.各種呼吸不全病態と治療
 1 急性呼吸促迫症候群(ARDS)
 2 気管支喘息
 3 特殊呼吸療法
 4 新生児の呼吸管理
 5 クループ
I V.参考
 1 解剖
 2 数値・計算式

●第3章 水電解質代謝・腎の管理

I.水分・電解質管理
 1 水分管理
 2 電解質管理
 3 酸塩基平衡
 4 熱傷
I I.腎 の 管 理
 1 腎不全
 2 腎障害の診断
 3 血液浄化法(代替腎療法)
 4 利尿剤
 5 溶血性尿毒症症候群

●第4章 栄養の管理

I.エネルギー所要量
 1 エネルギー必要量
 2 蛋白必要量
 3 血中グルコース(血糖)正常値
I I.栄 養 評 価
 1 各種栄養評価方法
 2 窒素バランス(N-balance)
 3 血清総蛋白,アルブミン濃度(年齢別正常値)
I I I.栄 養 各 論
 1 完全静脈栄養(TPN)
 2 経腸栄養法(EN)
 3 ミルク・食事
 4 インスリン療法

●第5章 消化管の管理

I.消化管
 1 下痢・腸管麻痺・嘔吐
 2 新生児壊死性腸炎(NEC)
 3 ストレス潰瘍
 4 選択的消化管殺菌(SDD)
I I.肝
 1 新生児黄疸と光線療法
 2 肝機能障害
 3 劇症肝炎
 4 肝不全に対する血液浄化法

●第6章 感染症の管理

I.病原微生物の分類
I I.感染症の予防
I I I.感染症の診断
 1 微生物学的診断
 2 炎症とSIRS
 3 院内感染の診断
I V.感染症の治療
 1 各種抗菌薬
 2 抗菌療法
 3 各論

●第7章 血液凝固の管理

I.輸   血
 1 ヘマトクリット(Ht),ヘモグロビン(Hb)濃度
 2 貧血の補正
 3 造血を目的とする製剤
 4 血小板の補充
 5 新鮮凍結血漿の補充
 6 血液製剤
 7 アルブミン製剤
 8 血漿増量剤
I I.出血・凝固
 1 出血のコントロール
 2 抗血栓療法
 3 DIC

●第8章 神経・疼痛の管理

I.意識障害
 1 小児意識レベル評価法
 2 脳死判定基準
 3 聴性脳幹反応(ABR)
I I.痙攣・頭蓋内圧亢進
 1 痙攣重積状態
 2 抗痙攣薬
 3 頭蓋内圧亢進症
 4 重症頭部外傷脳圧管理プロトコル
 5 脳浮腫治療の薬剤
I I I.鎮痛と鎮静
 1 鎮静薬
 2 解熱鎮痛薬
 3 鎮痛薬
 4 持続鎮静薬・筋弛緩薬
 5 鎮静スコア
 6 鎮痛スケール
I V.脳低温療法
 1 脳低温療法の適応
 2 PCASにおける低体温療法行程見本
 3 重症頭部外傷における低体温療法行程見本
㈸.脳症・髄膜炎
 1 ライ(Reye)症候群
 2 インフルエンザ脳症
 3 細菌性髄膜炎

●第9章 基礎的事項 その他

I.ライン管理
 1 血管内カテーテル
 2 薬液投与設計
 3 カテーテル関連血流感染
 4 サイズ換算表
I I.年齢区分・正常値
 1 小児の年齢別区分
 2 小児のバイタルサイン
 3 新しく提唱された小児の心拍数と呼吸数
 4 小児の身長・体重
 5 身体発育表・発育曲線
 6 年齢別血液生化学データ
I I I.重症度評価
 1 小児臓器不全の評価
 2 重症度スコアリング
 3 その他
I V.集中治療室の基準
 1 特定集中治療室の施設基準
 2 小児特定集中治療室管理科
 3 日本集中治療医学会認定医研修施設の施設基準
V.先天性心疾患略語集

●第10章 薬剤

I.薬物療法総論
 1 小児に対する薬物投与時の留意点
 2 小児に対する薬用量(その他)
 3 アナフィラキシーショックの治療
I I.薬物療法各論
 1 蘇生時に使用する薬剤
 2 抗不整脈薬
 3 挿管時に用いる薬剤
 4 持続投与薬剤早見表
 5 ホルモン(補充)療法
 6 薬物血中濃度基準値

●追補
 1.ARDSの定義 ベルリン基準(2012年)


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