統合失調症だけど大丈夫

回復と自立へのあいことば


著 者
著 渡部 和成(医療法人回精会 北津島病院 統合失調症治療センター・センター長)
発行年
2012年￿11月
分 類
精神医学 看護学一般
仕 様
A5判・102頁
定 価
(本体 1,500円+税)
ISBN
978-4-8159-1906-1
特 色 
  2007年に小社より出版した「統合失調症をライトに生きる」では,著者の統合失調症への治療姿勢に患者やその家族,また精神医療関係者にも幅広い支持を受け好評を博した.
 それから5年,今回,さらに経験を積んだ著者が,最も進歩した形での統合失調症に対する治療姿勢と治療法をもっと多くの悩める方々に知ってもらうため,新訂版として本書を執筆.
 「統合失調症だけど大丈夫」,この言葉は著者が患者とその家族にかけている言葉である.統合失調症は必ず“良くなる”病気だと理解してもらうとともに,著者の治療法に対する強い信念が込められている.本書では,著者の診療姿勢・方針とともに.著者の治療を受け,ライトに(前向きに,軽やかに)生きようとする方々の症例も多数掲載している.
 患者,その家族,精神医療関係者に本書をぜひ読んでいただき,「統合失調症だけど大丈夫」だと考え,より一層ライトに生きられるようになっていただきたい.本書はその糧となってくれる好著である.

■ はじめに ■

 2007年に出版した「統合失調症をライトに生きる」は,多くの方々に読んでいただきましたが,5年が経過した現在でもなお新たにお求めいただいております。私の治療姿勢が患者さんやご家族や精神医療関係者に理解され支持されているからなのだろうと思います。この5年間に,私は,統合失調症治療専門家としての経験をさらに重ね,自身の治療姿勢に磨きを掛け,患者さんのための治療体系を作り上げ発表してきております。そこで,このタイミングで「統合失調症をライトに生きる」の改訂版を発刊し,私の最も進歩した形での統合失調症に対する治療姿勢と治療法を読者の方々に知っていただくことが望ましいとの判断に至りました。
 書名の「統合失調症だけど大丈夫」は,現在,私が診察の場でも,主宰している集団療法の場でも,いつも統合失調症患者さんに,統合失調症治療で最も大事な言葉として意識してもらうように投げかけているものです。
 私は,患者さんに病気を理解し病気を乗り越えてもらうために,統合失調症の病名告知の仕方を工夫して,100%患者さんに病名告知をしています。工夫した病名告知により,患者さんに,統合失調症は“良くなる”病気だと分かってもらうことを大切にしていますが,最近はそれだけにとどまらず,私は,“統合失調症だとしても,良くなる病気だから,何も不安がることはなく,自信を持って回復・社会参加に向けて一歩一歩頑張っていくことが大事だ”と患者さんに理解してもらうように,「統合失調症だけど大丈夫」という言葉を用いて日々の治療と指導を行っております。
 本書では,前半で,患者さんが,「統合失調症だけど大丈夫」と心から思い,病からの回復に対する自信を持てるようになるための,私の治療姿勢と治療法を説明したいと思います。また,後半では,「統合失調症だけど大丈夫」だと意識して,ライトに(前向きに,軽やかに)生きようと,私と相談しながら,日々頑張っている患者さんたちを紹介していきたいと思います。
 全国の統合失調症の患者さんには,本書を読んでいただき,あるいは本書を読まれたご家族や医療スタッフに支えられて,ぜひ「統合失調症だけど大丈夫」だと考え,より一層ライトに生きられるようになっていただければと思います。

■目次■

はじめに

第1章 統合失調症治療の切り札は病識である
   1.治療を始めるにあたって大切なこと
   2.どう治療するか —— からだの病気であり,こころの病気である
   3.薬が効く素地 —— 薬物療法と患者心理教育との関係
   4.薬の効果とレジリエンス
   5.統合失調症治療の切り札としての病識

第2章 病名告知とは,患者と家族に対して説明・教育することである
   1.統合失調症をどう告知するか
   2.病識と患者心理教育 —— 自分だけじゃない
   3.病識を維持するには
   4.教育−対処−相談モデルと回復
   5.病名告知と,クライエント・パスとリカバリー・パス

第3章 統合失調症は,高血圧症や糖尿病の治療と同じように考え,
    治療すると良い

   1.高血圧症をたとえにして統合失調症治療を説明する
   2.糖尿病をたとえにして統合失調症治療を説明する
   3.高血圧症や糖尿病のように治療するための大事な指導

第4章 適切な統合失調症治療
   1.統合失調症治療の基本的考え
   2.統合失調症の薬物療法
   3.統合失調症の心理社会的療法

第5章 統合失調症だけど大丈夫
   1.「統合失調症だ」と「統合失調症だけど大丈夫」
   2.「統合失調症だけど大丈夫」と思えるようになった患者の例

第6章 統合失調症だけど大丈夫だと自信を持ち,あるいは持とうとして,
    病からの回復に向けて治療を続けている患者たち

   1.病気とうまく付き合い,再入院を避けることができている例
   2.SDM(情報共有下の医師と患者による治療法の選択)で薬物選択し安定している例
   3.引きこもりから脱出できた例
   4.社会復帰に向けて作業所に通えている例
   5.社会復帰に向けてボランティアをしている例
   6.社会復帰に向けて仕事に就いている例
   7.ご家族の患者さんへの接し方の変化が,患者さんの病状の安定化をもたらした例
   8.短期教育入院により,レジリエンスの増大が見られた例

おわりに
文 献・索 引


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