リウマチ病セミナー XXIII


著 者
監修 七川 歡次(滋賀医科大学名誉教授)
発行年
2012年12月
分 類
膠原病・リウマチ
仕 様
B5判・254頁
定 価
(本体 8,200円+税)
ISBN
978-4-8159-1907-8
特 色 
 リウマチ学のいまを知らせる好著.本セミナーは,1990年以来毎年発行されて,今回で23冊目.
 内容は,リウマチ病の捉え方に大きく影響する新しい知見とそれに基づく新しい考え方.リウマトロジーの醍醐味を教えてくれるリウマチ病研究の歴史.そして,今やリウマチ学の最大のテーマである骨粗鬆症の最新知見.多彩で新しい薬剤のレビュー,大きく進歩する手術技術などを取り上げる.
 常に本領域の水先案内人として,最新の研究成果・治療データを提供してきた.多彩で日進月歩の進展をみせるリウマチ学を一流の研究者たちが思う存分成果を披露している.

■ 序   文 ■

 リウマトロジーの扱う分野は広く,まず痛みに関する疾患,訴えがあり,その対処法が優先する一方,自己抗体,自己免疫疾患とされるものがあって,その対応にも迫られる.それらを反映するように,本書でも三木健司先生による運動器慢性疼痛に対するオピオイドの使い方が書かれている一方,自己抗体,自己免疫病の典型のSLEの原因について,自己抗体,自己免疫の考えは不要とする塩沢俊一教授の反省と新しい仮説が述べられていて,これがリウマトロジーだと敬服した.しかし,一方では免疫分野でのセマフォリンの知見が集積してきて今後さまざまなリウマチ病の誘導役をつとめていることがわかってきていて注目される(吉田祐志先生/熊ノ郷淳教授).
 また,年々開発された新しい薬剤,殊に生物学的製剤の効果は,費用も高価で投与法も煩雑であるうえ完全寛解が低率であり,一般化しにくい一方,リウマチの訴えや痛みから解放してくれる姿勢の矯正,維持を目指したアレキサンダー・テクニークを志水正敏先生が紹介してくれている.
 リウマトローグは生物学的製剤依存から脱却することを考え,準備を始めているように見える.田中良哉教授の経口剤であるトファシチニブがどれだけ期待に答えられるか,またワクチンによる関節リウマチの治療について村田紀和先生に解説してもらった.
 炎症については,発生機序についてよく研究されてきたが,この収束に関するものが乏しい.今回,遠藤平仁先生にresolving lipoxinについて紹介して戴いた.片方は慢性炎症が多くのリウマチ性障害を残すことで関心が高いが急性炎症が発生し,2〜3日,あるいは1週間以内に完全寛解するものがあり,その代表がpalindromic rheumatismである.これについて井上康二先生が解説していて,参考にして戴きたい.
 OAの治療としては軟骨の再生を目指したものが優先されるが松末吉隆教授に軟骨移植の進歩をこれまでの経験に基づき解説して戴いたがさらに軟骨細胞の移植に,iPS細胞を経ずに皮膚細胞からの軟骨細胞への誘導に妻木範行教授が成功していて,今後期待されるところが大きい.
 リウマチ病の訴えの最たるものが腰痛であり,これにあえて携り,切り込もうとするリウマトローグが増加しつつあり,どこまで分け入ることができるか知りたいものである.慢性の腰痛について矢吹省司教授を煩わしたが,教えられるところ大であった.西林保朗先生が成人に見られるmild caudal regression syndromeについて詳述されていて,成程これはリウマトロジーだと思った.局所的治療として福田眞輔教授に棘突起間スペーサーについて丁寧に解説して戴き,有難い.種々の治療法開発がわれわれを勇気づけてくれる.
 多くのすぐれた論文に触れず残念であるが,意とするところをくみとって戴ければ幸いである.

2012年12月
七 川 歡 次

■ 主要目次

炎症リウマチ
 Sjogren 症候群(Sjogren's syndrome) (住田 孝之)
 全身性エリテマトーデス(SLE)の発症病因 −「自己臨界点説:
  Self-organized criticality theory of autoimmunity」− (塩沢 俊一)
 Palindromic Rheumatism再訪 (井上 康二)
 多発性筋炎/皮膚筋炎 2011 (前田 恵治)
 反応性関節炎 2011 (小林 茂人)
 関節リウマチと睡眠障害 (柱本  照)

骨関節,脊椎,神経
 Fibrous Dysplasia 再訪 (豊澤  悟/岸野 万伸/佐藤  淳)
 胸鎖関節炎 (有田 勲生)
 慢性の腰痛 (矢吹 省司)
 姿勢とリウマチ病のプライマリケア (志水 正敏)
 成人にみられるmild caudal regression syndrome (西林 保朗)
 剣道によるスポーツ外傷・障害 (高幣 民雄)

燐・カルシウム代謝
 高齢者骨粗鬆症 (前田  晃)

検査,評価
 足関節の内視鏡 (高尾 昌人)

生物学的反応
 IL-7と関節リウマチ (石原 克彦)
 免疫セマフォリン (吉田 祐志/熊ノ郷 淳)
 Resolving Lipoxin (遠藤 平仁)
 腸性セロトニン (松本 譽之/中村 志郎)
 iPS細胞を経ない皮膚細胞から軟骨細胞への誘導 (妻木 範行)

治療と副作用
 運動器慢性疼痛とオピオイド (三木 健司/行岡 正雄)
 ワクチン接種によるリウマチ性疾患の治療 (村田 紀和)
 関節リウマチ患者におけるハーブ足浴の効果 (岩崎百合子)
 骨髄腫の治療 (前田 裕弘)
 OAに対する新しい分子標的治療薬 (坪井 秀規)
 関節リウマチに対する新しい分子標的治療薬 (佐伯 行彦)
 ビタミンD3 の免疫調節作用 (谷口 敦夫
 トファシチニブによるRA治療戦略 (田中 良哉/山岡 邦宏)
 抗IL-17抗体によるRAおよびSpAの治療 (井川  宣)

手   術
 外反母趾の手術 (児玉 成人/松末 吉隆)
 腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起間スペーサー (福田 眞輔)
 軟骨移植の進歩 (松末 吉隆)

索   引(XXIII)
総 索 引(I〜XXIII)
人 名 索 引(I〜XXIII)
Drug Information 巻末


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