低出生体重児の外科

超・極低出生体重児外科の治療成績向上を目指して



著 者
編著 窪田 昭男(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科主任部長)
発行年
2013年 5月
分 類
小児外科
仕 様
B5判・294頁
定 価
(本体 7,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1909-2
特 色 
 本書は,第27回日本小児外科学会秋季シンポジウム「低出生体重児の外科」より,消化管穿孔を中心に厳選された項目をとりあげ,さらに詳しくかつ奥深く詳解した,現時点におけるわが国の低出生体重児外科レベルの高さを示す集大成である.
 新生児外科疾患における,未だ最も重要な課題は消化管穿孔における予後不良であり,低出生体重児の出生数の増加と,救命率の上昇に伴って低出生体重児の絶対数が増加しているため今後もこの傾向はかわらないと思われる.
 本書では,とくに超・極低出生体重児に対する安全,確実で,かつ長期的に高いQOLが得られる外科的治療法確立を目指すための教科書として,消化管穿孔治療を中心に食道閉鎖,先天性横隔膜ヘルニアなど頻度の高い外科疾患から,周囲術期管理,手術を受けたあとの予後成績,諸問題まで低出生体重児外科を幅広く解説する.
 さらなる治療成績の向上のためにぜひ座右の書としていただきたい.

■ 序 文 ■

 「わが国における新生児外科の現況」をご覧になってもお分かり戴けるように、最近の15年間で最も予後不良な新生児外科疾患は、先天性横隔膜ヘルニア、臍帯ヘルニアと並んで消化管穿孔です。消化管穿孔の予後が不良なのは、言うまでもなく低出生体重児の出生数の増加と救命率の上昇に伴って低出生体重児の絶対数が増加しているために、低出生体重児に特有の消化管穿孔症例数も増加し、かつこれらに対する治療成績がいまだ不良であるためと考えられます。この傾向は今後も続くと推測されることから、低出生体重児に対して外科的治療をする機会は今後ますます増えるものと考えられます。したがって、低出生体重児に対して安全、確実で、かつ長期的に高い QOL が得られる外科的治療法を確立することは、新生児外科のみならず小児外科全体の治療成績を上げることにもなり、小児外科医にとって緊要の課題だと考えられます。
 第27回日本小児外科学会秋季シンポジウムの主題が「低出生体重児の外科」と決まり、担当を仰せつかった時には低出生体重児の手術をしている施設はまだ少なく、応募演題数も余り多くないと予想しておりましたが、予想に反して過去最高の演題数を記録しました。消化管穿孔以外に小腸閉鎖症、先天性横隔膜ヘルニア、腹壁形成異常、鼠径ヘルニアに関する演題も少数ありましたが、やはり消化管穿孔に関する演題が圧倒的に多く、低出生体重児の消化管穿孔は未だ最も重要な新生児外科疾患であることを再認識致しました。一方で、精神知的発達を含めた長期的予後についての演題も多く寄せられ、シンポジウムとして検討できたことは、わが国の低出生体重児の外科のレベルの高さを示すものと思い、誇りをもって本書を上梓させて戴くものです。
 本書は単なる抄録集ではなく、現在のわが国における低出生体重児外科の最先端を示す教科書にすることを念頭に編集致しました。本書が極・超低出生体重児外科の更なる治療成績向上にお役に立てれば編者としてこれに勝る幸せはありません。

 平成25年3月吉日
窪 田 昭 男

■ 主要目次


第1章 本邦における超・極低出生体重児の外科治療の現状
    −第27回日本小児外科学会秋季シンポジウム
   「低出生体重児の外科」に関するアンケート結果報告−
   (川原 央好)

第2章 超低出生体重児の消化管穿孔の病因と病態   (窪田 昭男)

第3章 低出生体重児の消化管穿孔の病型・術式と予後   (中村 哲郎 外)

第4章 頻度の高い外科疾患に対する治療戦略
 1.極・超低出生体重児のC型食道閉鎖の治療の変遷と予後   (三宅  啓 外)
 2.超低出生体重児,極低出生体重児の先天性食道閉鎖症に
    対する一期的根治術   (匂坂 正孝 外)
 3.極・超低出生体重児の先天性横隔膜ヘルニア   (岡崎 任晴)
 4.極低出生体重児における鼠径ヘルニア   (高安  肇 外)
 5.当院で経験した極・超低出生体重児の
    十二指腸閉鎖・小腸閉鎖   (三宅  啓 外)
 6.極低出生体重児における腸閉塞発症の予測因子   (久松千恵子 外)
 7.回腸瘻造設後にmilk curd obstructionを呈した
    超低出生体重児の2例   (中原さおり 外)
 8.低出生体重児の外科疾患に対する治療戦略   (越永 従道 外)

第5章 合併症・術前術後管理
 1.超・極低出生体重児の腹部手術における合併症   (遠藤 尚文 外)
 2.NICU 内外における低出生体重児の栄養介入の実際   (尾花 和子 外)
 3.NICUにおける低出生体重児の術後に群発した
    遅発性創感染   (小林久美子 外)
 4.低出生体重児における喉頭声門部の荒廃   (平井みさ子)
 5.低出生体重児の術後合併症と術前術後管理   (窪田 正幸)

第6章 消化管穿孔
 1.当科における極・超低出生体重児の消化管穿孔に
    対する治療戦略   (武  浩志 外)
 2.超低出生体重児における消化管穿孔例   (平松 友雅 外)
 3.超低出生体重児の消化管穿孔の成績と予後因子   (大野 耕一 外)
 4.超低出生体重児における限局性消化管穿孔症例   (伊勢 一哉)
 5.低出生体重児における壊死性腸炎,限局性消化管穿孔   (天江新太郎 外)
 6.当科における極・超低出生体重児の消化管穿孔・腹膜炎例   (内山 昌則 外)
 7.消化管穿孔に対する治療戦略   (韮澤 融司 外)

第7章 壊死性腸炎
 1.Laparoscopic surgery in low birth weight,
    very low birth weight and extremely low birth
    weight neonates   (Hock Lim Tan 外)
 2.The experience of peritoneal drainage in
    extremely low birth weight infants   (So Hyun Nam 外)
 3.Exploratory laparotomy for low birth weight infants with
    surgical NEC:A single center experience   (Soo-Min Jung 外)
 4.門脈血流測定による壊死性腸炎の早期診断法
    −予防こそ最善の治療−   (小林めぐみ 外)
 5.壊死性腸炎の保存的加療後に腸閉塞症状をきたした
    低出生体重児症例   (畠山  理)
 6.壊死性腸炎の腸瘻造設法
    −sutureless enterostomy の有用性−   (大橋 研介 外)

第8章 胎便関連性腸閉塞症
 1.胎便関連性腸閉塞症例の検討   (林田 良啓 外)
 2.低出生体重児の胎便関連性腸閉塞症に対する
    予防的造影剤投与   (新井 真理 外)
 3.極・超低出生体重児における胎便関連性腸閉塞症の
    手術時期   (深見絵里子 外)
 4.超低出生体重児の胎便関連性腸閉塞症に対する
    外科的治療戦略   (春本  研 外)
 5.当院における胎便関連性腸閉塞症   (吉井 大貴 外)

第9章 低出生体重児の手術成績
 1.極・超低出生体重児に対する外科治療と手術成績   (前田 貢作 外)
 2.外科的治療を要した低出生体重児の検討と当県における
    低出生体重児外科治療   (井上 幹大 外)
 3.外科的治療を施行した超・極低出生体重児の治療成績   (山本 英輝 外)
 4.低出生体重児の手術成績   (岩中  督)

第10章 外科治療を受けた低出生体重児の予後
 1.新生児期に外科手術を受けた超低出生体重児の長期予後   (加藤 純爾 外)
 2.外科疾患を伴う極低出生体重児と外科疾患を伴わない
    極低出生体重児の神経学的予後   (永田 公二 外)
 3.超・極低出生体重児の新生児期手術症例の
    短期・長期予後   (尾藤 祐子 外)
 4.極・超低出生体重児の外科的治療後の予後   (谷  岳人 外)
 5.外科治療を受けた低出生体重児の予後   (西島 栄治)

第11章 低出生体重児の麻酔   (木内 恵子)

第12章 低出生体重児の周術期の栄養管理   (白石  淳))

第13章 低出生体重児の外科手術が抱える諸問題   (窪田 昭男 外)

索   引


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