医師・医療クラークのための
医療文書の書き方 改訂第2版

医師・医療クラークのための医療文書の書き方 改訂第2版
著 者
著 中村 雅彦(松本市立波田総合病院 副院長)
発行年
2019年3月
分 類
臨床医学一般
仕 様
B5判・226頁・6図・32表
定 価
(本体 3,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1920-7
特 色 
医師や医療クラークが記載をすることが多い36の医療書類について,
 1.記載の意義
 2.作成時の留意点
 3.記載事項および方法
について症例を提示して概論し,診療録の作製については問題志向型診療記録(Problem Oriented Medical Record;POMR)で解説する.
 また,書類作成に必要な医学知識についても,がんの病理診断・病期については「生命保険診断書(がん)」,意識状態の評価については「自動車損害賠償責任保険診断書」, 褥瘡の深達度分類については「訪問看護指示書」の中で解説するなど,書類作成を通じて学べるように配慮もされている.
 本書の基本的な診療録作成事項を習得すれば,応用可能な文書・書類作成能力が身につくようになっており,質の高い医療文書を作成するための格好のテキストである.

■ 本書の利用にあたって ■

患者と医療者がよりよい信頼関係を築き、患者の自己決定権を尊重したインフォームド・コンセントの理念に基づいた医療を行っていくためには、医療者には積極的な診療情報の提供が求められている。また、円滑なチーム医療を展開していくためは、医療者間での正確かつ迅速な情報の流通が不可欠である。診療録をはじめ、診断書、指示書、診療情報提供書などの医療文書は、この情報伝達のためのコミュニケーションツールといえる。
平成20年の診療報酬改定により、病院勤務医師の負担の軽減を図り、診察に専念できる環境を整備することを目的に、医師事務作業補助体制加算が新設された。さらに、平成22年の改定では、医師事務作業補助者(以下、医療クラーク)を増員した場合の評価、施設基準の要件の緩和、加算点数の引き上げが行われるなど、医療クラークに対する期待は大きい。医師が行う文書作成などの事務作業を、事務職員が代行できることを認める法的な根拠は、平成19年に出された「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(医政発第1228001号)に基づく。このいわゆる「役割分担」通知の中で、書類作成などにかかわる事務については、「一定の条件の下で、医師に代わって事務職員が代行することも可能である」ことが記されており、具体的な例として、I.診断書、診療録および処方せんの作成、II.主治医意見書の作成、III.診察や検査の予約、が挙げられている。通知は、診療録管理の点からみると、代行(仮作成)とはいえ、医師以外の者が医師の診療録を作成することを認めた画期的なものといえる。「役割分担」通知の発出と、その後の医師事務作業補助体制加算の新設の背景には、近年の勤務医師の業務負担増があるのは明らかである。しかし、単にそればかりではなく、根底には、長年にわたり改善が叫ばれている診療録作成・管理の問題、診療情報開示を求める社会的要請があると考えられる。特に、整備が遅れている「開示に値する」診療録の作成など、医療文書の質向上に対する医療クラークへの期待は大きい。
本書では、診療録に書かれた内容を診断書、指示書、診療情報提供書など所定の書式にまとめたものを医療書類とし、診療録と合わせて医療文書と定義した。日常診療の中で、医師や医療クラークが記載をすることが多い36の書類について、1.記載の意義、2.作成時の留意点、3.記載事項および方法について概論し、症例を提示した。診療録の作成は、問題志向型診療記録(Problem Oriented Medical Record;POMR)について解説した。診療で扱う医療書類は多岐にわたり、作成の難易度もさまざまである。すべてを網羅することは困難で、本書で提示した基本的な事項を習得することで、応用可能な文書作成能力が身につくと考えている。また、書類作成に必要な医学知識については、例えば、がんの病理診断・病期については「生命保険診断書(がん)」、意識状態の評価については「自動車損害賠償責任保険診断書」、褥瘡の深達度分類については「訪問看護指示書」の中で解説するなど、書類作成を通じて学べるように配慮した。これから臨床に携わる若い医師や、医師の事務作業を補助する医療クラークにとって、本書が質の高い医療文書を作成するための一助となれば幸いである。
平成24年3月
中村 雅彦

■ 主要目次

第1章 医療文書

1 医療文書とは
2 医療書類の分類
 1.利用目的による分類 2.法令による分類 3.文書料による分類
3 作成時の留意点
4 医学用語の分類
5 開示に値する医療文書

第2章 医療書類

1 入院時必要書類
DOC 1 I.初診時問診票
 1.記載の意義 2.カルテへの転記
DOC 2 II.入院予約票
DOC 3 III.入院診療計画書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC 4 IV.褥瘡診療計画書
 1.記載の意義 2.褥瘡対策加算
2 退院時必要書類
DOC 5 I.退院時要約
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC 6 II.退院療養計画書
DOC 7 III.退院証明書
 1記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
3 診療情報提供書
DOC 8 診療情報提供書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
 4.返書の扱い
4 診断書類
DOC 9 I.生命保険診断書(一般)
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法 
 4.診療報酬点数
DOC10 II.生命保険診断書(がん)
 1.悪性腫瘍の分類 2.病理・画像診断 3.診断名
 4.進行度(病期)  5.症例 1)大腸癌 2)乳癌 3)前立腺癌
DOC11 III.自動車損害賠償責任(自賠責)保険診断書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC12 IV.病院診断書
DOC13 V.健康診断書
DOC14 VI.死亡診断書(死体検案書)
 1.記載の意義 2.死亡診断書と死体検案書の使い分け
 3.記載にあたっての留意事項
DOC15 VII.施設入所診断書
 1.記載の意義 2.記載事項および方法
DOC16 VIII.鉄砲申請者診断書
DOC17 IX.おむつ使用証明書
5 指示書類
DOC18 I.訪問看護指示書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法 
 4.褥瘡の深達度分類
DOC19 II.リハビリテーション実施計画書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC20 III.栄養指導指示書
DOC21 IV.重症者等療養環境特別加算指示書
DOC22 V.「鍼灸・マッサージ・あん摩」施術同意書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点
DOC23 VI.在宅酸素療法指示書
DOC24 VII.弾性着衣等装着指示書
6 意見書類
DOC25 I.介護保険主治医意見書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC26 II.労働者災害補償(労災)保険意見書
 1.労働者災害補償保険とは 2.給付の種類
 3.記載が必要な診断書および意見書
DOC27 III.身体障害者診断書・意見書
DOC28 IV.傷病手当金意見書
DOC29 V.治療用装具意見書
DOC30 VI.特定疾患(難病)意見書
DOC31 VII.養育医療意見書
DOC32 VIII.自立支援(育成)医療意見書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
DOC33 IX.小児慢性特定疾患医療意見書
DOC34 X.医療要否意見書
 1.記載の意義 2.作成時の留意点 3.記載事項および方法
7 説明同意書類
DOC35 説明同意書
 1)大腸内視鏡検査
 2)中心静脈カテーテル挿入術
 3)髄液検査(腰椎穿刺術)
 4)輸血療法
 5)脳動脈瘤クリッピング術
8 がん登録
DOC36 地域がん登録(悪性新生物患者届出票)
 1.記載の意義 2.届け出基準 3.記載事項および方法
 4.UICCによるTNM分類
9 医療書類一覧

第3章 診療録

1 診療録とは
I.理想的な診療録
II.診療録の価値
 1.患者にとっての価値 2.病院にとっての価値 
 3.医師にとっての価値 4.法的防衛上の価値 
 5.公衆衛生上の価値  6.医学研究上の価値 
 7.医療保険上の価値
III.診療録の歴史
 1.アメリカにおける診療録 2.日本における診療録
IV.診療録と関連法規
 1.法的位置づけ 2.記載事項 3.保存期間
2 診療録の書き方
I.記載の原則
 1.紙カルテの場合 2.電子カルテの場合
V.記載時の留意事項
3 POMRとは
I.POMRの作成方法
 1.基礎データ 2.問題(プロブレム)リスト 3.初期計画 
 4.経過記録  5.退院時要約(サマリー)
II.POMRによる診療録作成の流れ(まとめ)
 1.初診時記録 2.経過記録 3.退院時要約
III.診療録の監査
IV.POMRの問題点と課題

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