脳波Fmθ
Fmθ研究の40年を振り返って

医師・医療クラークのための医療文書の書き方 改訂第2版
著 者
石原 務 著
発行年
2020年2月
分 類
脳神経生理学
仕 様
A4横判 2分冊箱入り 総132頁 70図
定 価
(本体 5,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1921-4
特 色 
Bergerの夢の実現:精神活動を反映する脳波活動Fmθ
Fmθは著者によって1960年に発見された前頭正中部に数秒程度出現するθ波(徐波の一種)である。神経生理学を志し脳波計を自作していた青年(著者)が、幾多の出会いとセレンディピティに導かれ、真実を追求した研究の歴史と物語がまとめられている。
図譜編と解説編の2分冊構成で、Fmθの正確な特徴に加え、乳児での出現、フィードバック効果、多彩なトピックまで美しい脳波記録で紹介する。
「脳波学の父」Hans Bergerによって脳波が記録されて以来95年を経て、脳波は新しい領域へ向けて発展している。さらなる研究成果と出会い、Fmθが精神活動の謎の解明に役立つであろうことに大きな期待が寄せられている。

■ 序 文 ■

Berger の夢の実現:精神活動を反映する脳波活動 Fmθ
Fmθという特異な脳波活動をご存知だろうか。前頭正中部 Frontal midline に数秒程度連続するθ波(徐波の一種)である。特異なのは、徐波なのに正常脳波であることと、注意集中で誘発されることである。
覚醒時に出現するθ波は異常と考えるのが脳波学の一般的理解である。Fmθは1960年代にこの本の著者である石原先生によって発見された。石原先生は、検討を重ねたのち「正常脳波」との結論に至った。しかし、この結論は指導教授だけでなく、W.G. Walter ら当時の内外の大家の反論に直面することになった。神経生理学を志し脳波計を自作していた青年が、幾多の出会いとセレンディティピーに導かれ、大家にも怯まず真実を追究する姿勢は研究者の物語としても楽しめる。
もう一つの特異性は、高次の精神活動で誘発され、しかも視察で明瞭に分かる高振幅の脳波は Fmθをおいてほかにないことである。注意集中との関連で心理学者が、前頭正中部に出現するので神経生理学者が、θ波なので工学系の研究者が興味を持ってきた。この脳波名を冠した研究会が40年以上にわたって開催され、石原先生は欠かさず出席され発表をリードされ楽しんでこられた。「脳波学の父」 Hans Berger は精神活動の科学的計測を目指して脳波を開発したが、Fmθは Berger の夢の結実の一つである。
Berger によって脳波が初めて記録されて以来95年になる。脳波は新しい領域へ向けて発展している。数理統計学的手法による精神・神経疾患の脳機能解析や、身体機能の代替を目指した運動・コミュニケーション(Brain‐machine interface)などである。Fmθがこれらの新しい出会いによって精神活動の謎を解明することに役立ってほしい。この本は Fmθの正確な特徴に加え、乳児での出現、フィードバック効果など、多彩なトピックを美しい脳波記録で紹介している。「Fmθ、永遠たれ」と Fmθの父である石原先生の願いが聞こえてくる。
令和元年 秋 篠崎 和弘
Fmθ研究会代表 / 和歌山県立医科大学名誉教授
大阪河崎リハビリテーション大学客員教授 / 公益財団法人浅香山病院臨床研究研修センター長

■ 目 次

図譜編:省略

解説編

Fmθとの出会い
1.前頭シータ波を正常脳波と判定するまで
2.前頭シータ波の起源 - Fmθ命名まで -
3.1960年以前の文献に見られる前頭シータ波と精神活動
4.Fmθの誘発媒体について
5.Fmθ誘発機序について
6.Fmθ出現率について
7.Fmθ誘発率は被験者と誘発媒体によって激変する
8.媒体の誘発率の差から考えられる Fmθ発現機序について
9.内田・クレペリン検査で長時間連続シータ波を記録した1例
10.Fmθ非出現者
11.自発性 Fmθについて - 無課題状態で記録される Fmθ -
12.自発性 Fmθ - 睡眠と Fmθ -
13.脳波コントロールに有効な強化学習 - Paradoxical alpha blocking の強化学習 -
14.Fmθのフィードバック学習
15.特異な数操作で Fmθのフィードバック学習を行った1例
16.Fmθのフィードバック学習1年後の再現
17.Fmθの発達について
18.発達障害と Fmθ
あとがき / 引用文献

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