序 文  

 大腸の三次元画像構築の始まりは1990年代の初め,日本消化器集団検診学会におけるDigital Ragiorraphy関係の発表直前,順番を待っているときの丸山雅一先生との雑談からでした.その雑談は「CTを使って大腸の中を観察する画像を作成できるか?」という当時の丸山先生との共同研究の内容からはかなりかけ離れたものでした.そのさらに数年前からCTの三次元画像作成に取り組み,胃の三次元構築を行っていたため自信をもって「できます」と答え,私は興奮気味で自分の発表の順番が来て名前を呼ばれても話を続けようとして,「発表の順番だよ」と先生に促された思い出が残っています.丸山先生は常に将来を見,ワールドワイドな視野をもち,何カ国もの言語を使いこなし,癌研に就職した頃からの私が憧憬していた先生でした.先生の姿を見,進歩し続ける人間になりたいと切望し,今現在,学生にも学科で教える知識以上に仕事をしていくうえでの姿勢の大切さを伝えています.  
  また本書は海老根精二先生の御支援によって誕生したということを記しておかなければなりません.本書を生み出すために,さまざまなアドバイスを頂戴し,数多くの先生の著書や文献をお送り頂きました.高度な医療技術を習得しながら,他の医療従事者とのかかわりの中で診療放射線技師はどのような姿勢で将来に向かって挑んでいかなければならないか,この非常に重要で基本的なことを海老根先生からお教え頂き授業の中に反映させてもらっています.本書もその姿勢をベースに診療放射線技師ができる新しいこと,1人でも多くの患者さんが苦しまないよう,安全で楽な検査ができる方法を広く知ってもらおうと書いたつもりです.  
  御執筆願いました癌研究会附属病院内科副部長 猪狩功遺先生,同内科 浅原新吾先生と都立駒込病院内科医長 小泉浩一先生(元癌研究会附属病院内視鏡部長代理)には本当に忙しい診療業務の中で時間を割いて原稿を執筆頂き深く感謝しております.患者さんの“がんの病から解放されたい”という本当の願い,心の声を受け止め,子細に目を配って最善の治療をされている日々の先生方の姿をみると傍にいる技術者として尊敬をするのが当たり前と思うほどです.その猛烈に忙しい診療業務という,歴然とした事実の中で原稿を頂いたということは私にとって大きな喜びです.  
  一方,画像を作成するにあたり,三次元画像の構築において,最新のVirtual placeを利用させて下さいました(株)AZE畦元将吾社長に御礼申し上げます.また,東芝メディカルシステムズ(株)の方々にはXtensionをお借りし,さまざまな技術的支援を頂きました.GE横河メディカルシステム(株)の方々,第一製薬(株)の一條均様からもさまざまなアドバイスを頂き御礼申し上げます.  
  群馬県立大学移籍後も癌研究会附属病院で研究をさせて頂けたのは癌研究会附属病院院長 武藤徹一郎先生,放射線診断科部長 河野敦先生,共著者である小泉浩一先生,放射線部診断チーム井上信夫技師長はじめ多くの放射線部,内科,内視鏡部門の方々のお陰で,診断部へお伺いしても笑顔で迎えて頂き,秒単位で仕事をこなしていく忙しい検査現場の中で多くの御協力を頂きました.本当に深く御礼を申し上げたいと思います.特にCT室の高津一朗氏,根岸亮一氏にはいつも原稿の校閲をお願いし,たくさんの貴重な御指摘を頂き,感謝の念に堪えません.    
  本書は内視鏡医師,放射線科医師,診療放射線技師の方々などが病院の内視鏡検査室,CT室,医局,技術室で即時参照できる参考書として活用して頂けたら幸いです.  困難な内視鏡検査に悩んでおられる方々の一助となれば大きな喜びですし,1人でも多くの患者さんが苦しまずに安全で正確な検査ができることを願います.

2005年3月吉日  小倉敏裕