平成6年4月に,妹尾亘明先生,泉雄勝先生,弥生先生を中心に良性乳腺疾患研究会の設立世話人会が開かれた.その席上,日本乳癌学会の創立によって乳癌の診断・治療には益々の発展が期待されるが,乳腺疾患の過半数を占める良性疾患についても勉強の場が必要であるという趣旨で,研究会の設立が決まった.平成6年11月,第1回の研究会が開かれ,その後,乳腺症,繊維腺腫,乳管内乳頭腫,異常乳頭分泌,乳房痛,葉状腫瘍,乳腺異型過形成(ADH)などをテーマとして討論が続けられ,これまでに研究会の開催は11回を数えている.  
  研究会を重ねる中で,平成14年7月“良性乳腺疾患の入門書”を出版する案がもちあがり,臨床と病理が連携した形を重視して,乳腺の生理的・経年的変化の解説,症候別の診断方法,良性疾患として注目すべき乳腺病変の画像診断・病理・治療等をアトラスとしてまとめることが話し合われた.その後,本研究会を中心とした企画の検討が種々の点から重ねられ,約2年を経てその構想がまとまった.  
  内容は,総論的な生理・症候・診断法については,その面に造詣の深い先生方に執筆をお願いし,各論としては,日常遭遇する良性疾患をとりあげて,各疾患についてご経験の深い先生方にまとめていただいた.加えて,症例編として,過去の良性乳腺疾患研究会で発表された演題の中で興味ある例について提示いただき,今後の診療や研究の糎となることをめざした.  
  本書が,乳腺疾患の診療・研究に携わる方々の入門書として,幅広く利用されることを期待してやまない.

平成17年5月